へっぽこVSシリーズその1『サイゾーVSシルク』(改訂版)
バレンシアと呼ばれる大陸がある。
かつてこの大陸では、2人の兄妹神・・・邪神ドーマと大地母神ミラの争いがあった。
人の可能性を信じる妹のミラが、力こそ全てと言う兄ドーマに反発したことが原因と伝えられる。
2人の戦いは平行線をたどり、お互いに疲弊を重ねた。
そして、ついに2人の間に一つの「盟約」が生まれる。
大陸を南北に分け、北をドーマが、南をミラが支配するとお互いに誓ったのだ。
時は流れ、それぞれの地に2つの王国が生まれる。
たくましきが故に優しさを忘れた北の国リゲル。
豊かであるが故に堕落した南の国ソフィア。
いつしか2つの王国は長い対立の時代へと入ることになる。
大陸は荒れ、民衆はこの戦乱を終結してくれる英雄を望んだ。
そして、この大陸の命運を左右する2つの命が誕生する。
リゲルの王子アルムと、ソフィアの王女セリカ。
後世に「バレンシア戦記」と呼ばれた戦乱の英雄である。
2人の英雄は、数多くの仲間と共に困難を乗り越え、戦乱を終結されたと言われている。
それは、どんな世界にもあるであろう英雄の記録だ。
だがしかし!
記録に残るものが全てではない。
人知れず戦い、誰も知らない英雄であり続けた者もまた存在するのだ。
例えば、面白い話がある。
バレンシア戦記より数百年の後、一つの古い書物が発見された。
これにより、その名を大陸全土に知らしめることになった人物がいる。
後の世に「伝説の忍」と伝えられる人物。
その名をサイゾーといった。
忍
ここはリゲルの森。
その森で、闇にまぎれて動く影がある・・・。
・・・彼の名はサイゾー。
闇に隠れて生きる忍(シノビ)だ。
現在、サイゾーはリゲル軍の命を受け、リゲルの森の警備に当たっている。
アルム軍をヌイババ館に行かせてはならぬ、というのがその内容だ。
既にアルム率いる同盟軍は国境のシーザス将軍を撃破。
斥候の情報では、既にこの森に向かっている。
「ふん・・・最近はロクな相手が居なかったからな。暇つぶしには丁度いい。」
両軍の戦力差は圧倒的だったが、サイゾーは余裕の構えを見せていた。
森での戦いは単純な兵力で決まるほど甘くはない。
地の利を生かせば、むしろ少数精鋭の方が有利な場合も多いのだ。
そんなことを考えていると、斥候が姿を現した。
「隊長! アルム軍が森に侵入しました。」
「来たな。」
「しかし、気になることが・・・。」
「何だ? 言ってみろ。」
「進入した兵力が明らかに少なすぎます。何か企んでいるのかもしれませぬ。」
「・・・なるほど。奴らも馬鹿ではない、ということか。」
少なくとも、森で大軍を進行させることの愚かさは解っているということだ。
おそらく、侵入者は同盟軍の精鋭揃いだろう。
「いかがいたしましょう?」
「予定通り、各々の判断で動けと伝えろ。」
「森を出ない限り、我が軍に負けはない。」
「了解しました。」
斥候は素早く姿を消す。
そしてサイゾーもアルム軍を殲滅すべく動き始めた。
3人の戦士
サイゾーが見る限り、戦いは互角だった。
お互いに精鋭揃いの両軍は一歩も引かず、ある場所では勝利しても、別の場所では敗北していた。
地の利を得ているはずのリゲル軍にとっては、予想外の苦戦だったとも言える。
そんな中で、サイゾーは1人の剣士を目撃する。
その剣士は、部下の1人と戦っている最中だった。
「ぐっ! なんというパワーだ・・・。」
「もう終わりか? リゲル軍も大した事ねえな。」
その剣士は凄まじいまでの剛剣の使い手であった。
既に部下の獲物は破壊され、防戦一方になっている。
(面白い。久しぶりに手応えのある相手になりそうだ。)
部下が地面に脚を取られ、そこに剣士の一撃が襲う。
だが、その一撃が届くことはなかった。
キィーン
「!? 新しい仲間か?」
「隊長!?」
「ここは一度引け。あとは引き受ける。」
「了解しました。・・・御武運を!」
部下の姿はあっという間に見えなくなる。
「へえー。あんたがこの軍の隊長って訳だ。」
「力と口だけは一人前だな。だが、その程度で勝てるとは思うな。」
「言ってくれるね・・・行くぜ!」
言いざまに一撃を放つが、サイゾーは難なく交わす。
すると、その一撃は後ろにあった木の幹にめり込んでしまった。
恐るべきパワーの持ち主である。
「いかに威力があっても、当たらなければ意味はあるまい。」
「まだまだ!」
今度は素早い連撃を繰り出す剣士。
しかし、サイゾーは涼しい顔で受け流す。
「今度はパワーが落ちたな。それでは速くても意味がない。」
「く、くそっ!」
剣士は自分の攻撃が全く通じないことに同様を隠せない。
「所詮はこの程度か・・・。期待外れだったな。」
一転して攻勢に転じるサイゾー。
剣士はなす術もなく、あっという間に剣を弾かれてしまった。
「なんて速さだ・・・しかも重い。」
「剣技とは速さと重さが共に高いからこそ意味をなす。冥土の土産に覚えておくんだな。」
「トドメだ・・・死ね!」
「アロー!」
「!?」
不意に、木々の間から無数の矢が飛んできた。
鋼や銀の矢ではない。魔力の矢だ。
「クリフ!?」
「今の内に、早く!」
「すまねぇ。恩にきるぜ。」
「魔道士か・・・。逃がさん!」
ヒュッ
追いかけようとしたサイゾーに、再び矢が襲う。
今度は魔力の矢ではない。本物の鋼だった。
「ロビン!」
「チッ、まだ仲間がいたのか。」
「ここは僕が時間を稼ぐ。グレイを頼んだよ、クリフ。」
「オーケー。・・・無理するなよ。」
「わかってるさ。」
グレイと呼ばれた剣士と、クリフと呼ばれた魔道士は素早く立ち去る。
残ったのはサイゾーと、ロビンと呼ばれた弓使いだ。
「1人だけで私に勝つつもりか?」
「別に勝てなくてもいいんですよ。時間稼ぎが目的ですから。」
「なるほど。さっきの男よりは分をわきまえているようだ。」
そう言いつつ、2人は既に戦闘体制に入っている。
しかし、サイゾーの言葉通り、お互いの実力差は明白だった。
距離を取りながら弓を連射するロビンに対し、サイゾーは矢を交わしながら確実に間合いを詰める。
結局、ロビンの弓をサイゾーが弾くまでに要した時間はわずか1分程度だった。
「うぐっ。」
「なかなかの腕だ。しかし、相手が悪すぎたな。」
ロビンは既に死を覚悟したのか、静かに構えている。
そして、サイゾーの一撃がロビンに振り下ろされようとしたが・・・。
「そこまでよ!」
「!?」
突然、サイゾーの体を強烈な衝撃が襲った。
先程の魔力の矢とは比べ物にならないその衝撃に、サイゾーはひるむ。
「シ、シルクさん!?」
「もう大丈夫よ。あとは私に任せて。」
シルクと呼ばれた女性はシスターだった。
サイゾーがシルクに気を取られている隙に、ロビンは迷わず逃げ出す。
残ったのは忍とシスターの2人。
なんとも珍妙な組み合わせである。
イリュージョン
「・・・お前、本気で私を倒すつもりか?」
「ええ、もちろん。」
「はははは! それは傑作だ。できるものならやってみろ。」
サイゾーは余裕の笑みで応じていた。
それも当然と言えば当然だ。
バレンシア大陸におけるシスターは治癒と浄化の魔法を得意とする反面、攻撃は大の苦手なのだ。
少なくとも、こんな最前線に現れるシスターなど聞いたことがない。
だが、それが己の失態であったことをサイゾーは直後に思い知る。
「あら、その余裕がいつまで持つかしらね。」
そして、シルクは魔法の詠唱を始めた。
数多の影を司る神よ
汝の力もて我が願いを聞き届けたまえ
影は我が力、我が護りとして
絶対の服従と偽りの生を与えん!
「イリュージョン!」
シルクの声に応えるように、周囲の影が凝縮していく。
その影がある形を成した時、サイゾーは驚きを隠せなかった。
「な!? 魔戦士の幻影だと?」
「幻影は全部で5体。あなた1人で勝てるかしらね。フフ・・・。」
普通、幻影の魔法で呼び出せるのはソルジャーが主で、優れたシスターでもペガサスナイトが関の山だ。
バレンシアにおける最高位の称号のひとつである魔戦士を呼べるなど、聞いたこともなかった。
「くっ・・・。」
己の力を限界まで出しながら、サイゾーは必至に応戦した。
1体でも並の実力なら苦戦するほどの相手だ。
それが5体。しかも、幻影には痛覚がない。
少しでも油断すれば死に繋がることは容易に想像できた。
(ばかな・・・この私がシスターに敗れるとでも言うのか!?)
ところが、サイゾーの体力が限界に達した頃のことだ。
不意に5体の影が不自然に揺れる。
そして、そのまま周囲の影に溶け込むように消えてしまった。
「あちゃー、時間切れか。」
イリュージョンで呼ばれた幻影はそれほど長く持たない。
魔力による個人差はあるが、おおよそ3から5分というところである。
「くそっ! シスターに負けては面子が立たん。・・・死ね!」
予想外の苦戦に逆上して、サイゾーはシルクに突撃する。
だが、当のシルクは涼しい顔だ。
「今度はこれでどうかしら?」
再び、シルクは詠唱に入る。
浄化の力を司る聖の神よ
我が声に応え、その力を解放せよ
聖なる力は5つの天使となり
我が前に立ち塞がる邪悪を打ち払わん!
「エンジェル!」
シルクの呪文が天使を生み出しサイゾーを襲う。
「馬鹿め! この程度の呪文で我が魔法障壁を打ち破れるものか。」
「その台詞、あと3秒で撤回することになるわ。」
「なんだと!?」
かくして、シルクの言葉は正しかった。
5つの天使はサイゾーの魔法障壁をあっさりと貫き、その威力が衰えることすらなかったのだ。
勝負はたった一撃で決着してしまったのである。
「うぐぐ・・・馬鹿な。」
「シスターと思って油断したのが運の尽きね。」
「無、無念・・・。」
そのままサイゾーは動かなくなる。
「あらら。ちょっと魔力が強すぎたかしらね?」
「・・・ま、エンジェルの呪文で死ぬわけもないし、そのうち目を覚ますでしょ。」
「縁があったらまた会いましょう。」
シルクは捨て台詞を残し、静かにその場を後にするのだった。
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こうしてシルクにあっさり負けてしまったサイゾー。
己のプライドを引き裂かれた彼に、はたして再起のチャンスは訪れるのか?
次回「サイゾーVSデューテ(前編)」に続く・・・。
<製作後記>
第1回の改訂版、どうだったでしょう?
基本的な展開は同じですが、ギャクや作者ツッコミは完全に消去されています。
・・・逆に面白くないかも。(^^;
ちなみに、今回の改訂版を作るにあたって、プロローグを作ってみました。
ゲームのOP(タイトルで放っておくと出る文章)が元なので、内容は今更。(^^;
ただ、「バレンシア戦記」という名称は作者の創作です。ゲームでは一切出てきませんので。
ま、本当のところは、第1部で世界観の解説をやってないことに気付いたってだけですが。(爆)
実はエピローグとも関連しているので書くべきか迷いました。・・・結局書きましたが。(ぉ
あとは「イリュージョン」「エンジェル」の詠唱を作ったくらいですね。
下手に展開を変える訳にもいかず、意外と苦戦してしまいました。
まぁ、第1回の文章の酷さが解る程度には文章力が付いたんじゃないかと。
特に終わり方に問題があったみたいですね。書き直しするとよく解りますケド。(^^;
でも、サイゾーSSの原点はやっぱり第1回(改定前)にあるので、
こちらを先に読んだ人も是非読んでみて欲しいですね。
初代はここに置いてあるのでどうぞ。
ではでは。