へっぽこVSシリーズ第9弾「サイゾーVSヌイババ」(完結編)
ヌイババ軍との戦闘から1日経った夜・・・。
夜もすっかり更けた頃、アルムたち4人は行動を開始した。
「ティータさん、昨日はよく眠れましたか?」
「ええ、おかげさまで。この軍は居心地が良いですね。」
「何かあったら遠慮なく言ってくださいね。あなたはもう私たちの仲間ですから。」
「ありがとうございます。」
「じゃ、行こうか。」
「おいおいアルム、オレには一言も無しかよ。」
「あんたは昨日デカいイビキで爆睡してたでしょーが!」
「オレだって疲れてたんだぜ。なにか労いの言葉があってもいいってモンだろ。」
「あんたのタフさは有名だから、誰も心配しちゃいないわよ。・・・ほら、さっさと行く!」
「チェッ、わかったよ・・・。」
「とりあえず、何処に行けばいいの?」
「先ずは『恐山のほこら』の入口ですね。そこに1つ目の仕掛けがあります。」
「OK。シルク、頼むよ。」
「了解!」
てなわけでシルクの『ワープ』で『恐山のほこら』入口へ。
--ほこらの入口--
「到着ー。」
「お見事! 狙い通りって感じだね。」
「ティータさん、最初の仕掛けは何処ですか?」
「ここです。」
そう言って、ティータは入口付近の壁を調べ始めた。
程なくして何かを見つけたようだ。
「これを・・・こうして・・・。」
すると、少し離れた場所からかすかに物音がした。
「はい。1つ目の仕掛けはOKです。」
「へぇ、そんな仕掛けがあったんですか。」
「前に来たときは全く解りませんでしたね。」
「そう簡単に見つかっても困りますから。では、次に行きましょう。」
「次は?」
「もう少し先に行った所に2個目の仕掛けがあります。私が案内しますわ。」
そして、4人は次の場所へと向かう。
その途中、不意にアルムが小声でティータに話し掛けてきた。
「あの・・・ティータさん。」
「? 何です、アルムさん。」
「ティータさんは『復活の泉』のことを最初から知ってたんですよね?」
「ええ。」
「じゃあ、なんでもっと早く言ってくれなかったんです?」
「・・・正直なところ、まだ『復活の泉』が存在するか解らないんです。」
「えっ?」
「私が『ヌイババの館』に囚われていた間、誰も泉を管理していません。」
「ですから、最悪の場合『復活の泉』が枯れてしまっている可能性もあるんです。」
「リュートさんはかなりのショックを受けていましたから、ぬか喜びになると可哀想だと思って・・・。」
「それで、リュートが部屋を出るまで待っていたんだね。」
「はい。」
「そうか・・・ティータさんは優しいんですね。」
シルクとグレイは2人で別のやりとりをしていたらしく、この会話には気付かなかったようだ。
--第2の仕掛け--
「皆さん、ここが2つ目の仕掛けです。」
ティータがそう言って他の3人を止めた。
だが、そこはただの岩肌であり、他の部分に比べて変わった点があるわけでもない。・・・ように見えた。
「ここも見事にわからねぇな。」
「ここまで徹底的に隠されるとむしろ感心するわね。」
ティータは先程と同じように岩肌を調べていく。
目的のものはすぐに見つかったようだ。
「ここを・・・こうやって・・・今度はこうやって・・・。」
最初の仕掛けに比べるとかなり複雑らしく、少し時間がかかった。
仕掛けを解除すると、今度は壁の向こうからガラスの割れるような音が聞こえた。
「はい。これでOKです。」
「ティータ、ごくろうさま。で、次は何処へ行くの?」
「次は『ワープ』で直接移動します。皆さん、私につかまってください。」
「わかった。」
「・・・ワープ!」
そして、4人はその場から姿を消した・・・。
--ワープした先は・・・--
そこは、小さい部屋のような場所だった。
不思議なことに、その部屋には入口はおろか窓一つない。
完全な密閉空間だったのだ。
そして、部屋には場違いなほど見事な彫像があった。
その部屋のすみに目的のもの・・・『復活の泉』はあったのだ。
「よかった・・・。まだ枯れていなかったわ。」
「と言ってもこりゃ・・・かなりヤバイぜ。」
グレイの言った通り、泉の水はお情け程度の量しか残っていなかったのだ。
「大丈夫ですよ。サイゾーさんの分だけならこれで十分ですから。」
「じゃ、さっそく貰っていこうか。」
そう言ってグレイは泉の水を汲もうとした。
しかし、ティータの手がそれを阻む。
「? どういうつもりだ?」
「この水は資格を有する者しか取ることはできません。」
「ですから、あなたがた3人には、今から試練を受けてもらいます。」
「試練?」
「そこにある彫像から3つの質問があります。」
「3つの質問に、自分が正しいと思う通りに答えてください。」
「質問の答えによって、資格があるかどうかを私が判断いたします。」
「んなこと言わずに汲ませてくれよ。仲間だろ。」
「そうはいきません。私はあなたがたの仲間であると同時に、この泉の管理者でもあるのです。」
「これを曲げるわけにはいきません。」
「グレイ、ティータさんの言う通りだよ。試練を受けるべきだ。」
「チェッ。」
--試練の時--
というわけで、アルム,シルク,グレイの3人は試練を受けることになった。
「先に言っておきますが、仲間だからといって評価を甘くしたりはしませんので、そのつもりで。」
「わかりました。」
「では、1つ目の質問です。」
シルクがそう告げると、彫像の口が動き出し、言葉を紡ぎはじめた。
「汝に問う。汝にとって戦いとは何だ?」
この質問にはまずグレイが答えた。
「平和のための手段だ!」
ところが、アルムとシルクはこう答えた。
「出来れば避けたいものですね。」
「なるほど・・・。では、2つ目です。」
「次に汝に問う。汝の好む言葉は?」
「平和。」
「ドラドラで」
「3900点!」
「ゴルァ!(*゚Д゚*) 」
「いや、今回笑いが全然ないから、一つここらでボケとこうかと・・・。」
「やっぱザンクが基本ですよね。」
「ってゆーか、マージャン知らない人にはわかんないってば・・・。」
しかしティータにはこっそり受けが良かったらしい。
ちょっぴり笑い声が聞こえた・・・。
「・・・気を取り直していきましょう。最後の質問です。」
「最後に問う。汝の助けたい者は、汝にとって何だ?」
この質問には3人とも迷わず、しかも同じ言葉で答えた。
「サイゾーは大切な仲間だ!」
パチパチパチ。
ティータが拍手をするのが聞こえた。
「皆さん、お見事です。」
「あなたがたにこの泉の水を汲む資格を与えましょう。」
「では、どうぞ持っていって下さい。」
「よっしゃ! あとは水を持って戻るだけだな。」
「シルク、ここから直接ワープできる?」
「大丈夫です。」
「では、行きましょうか。」
そうして、『復活の泉』の水を手に入れた一行は再びアルム軍本陣へ向かう。
--???--
サイゾーは、1人見知らぬ場所に立っていた。
目の前には大きい川が一つあるだけで、他は全てが霧のように曇った場所だった。
不思議なことに、この場所では自分が存在していることを明確に感じ取れない。
そこでは全ての存在が希薄なものに思えた。
サイゾーは川の向こうに懐かしい顔を見つけた。
それは、既に死を決別した父や母、自分の部下たちであった。
だが、サイゾーは彼らがそこにいることになんの疑問も持たなかった。
それが当然のことであると感じていたのだ。
彼らは、サイゾーを手招きしていた。
サイゾーを川の向こう側に来るように誘っているだ。
サイゾーもまた、川の向こう側に行きたいと感じていた。
そうして、サイゾーは川を渡ろうと最初の一歩を踏み出した・・・
だが、歩き出した時に、背後に今までとは全く違う気配を感じた。
その気配は全てが希薄であるはずの空間でしっかりとした存在を持っていた。
サイゾーは足を止め、その気配を確認しようと思った。
その気配の正体は1人の少女だった。
少女は泣いていた。
泣きながら、サイゾーに何かを訴えているように見えた。
サイゾーはその少女に見覚えがあった。
だが、それが誰なのか思い出せない。
そうしている間も父や母の手招きは続いていた。
この川の先には平穏な世界がある。サイゾーにはそれがわかった。
だからサイゾーはまた川を渡ろうとした。
すると、少女がサイゾーを掴もうとした。
しかし、何故か少女の手はサイゾーをすりぬけ、サイゾーに触ることができない。
それでも少女はサイゾーを掴もうとする。
必死にサイゾーを掴もうとする。
それでもサイゾーを掴むことができない。
サイゾーは、自分がこの少女にとって大切な存在であることを感じた。
川の先には平穏な世界がある。川のこちら側には不安と戦いの世界がある。
しかし、サイゾーは川を渡ることを放棄した。
少女の涙と必死な行動に負けたのだ。
サイゾーは対岸の父や母、自分の部下に首を振った。
それは、自分は川を渡らないのだという固い意思の現れだった。
そして、サイゾーは川に背を向けて歩き出す。
最後に一瞬だけ振り向いたとき、父と母が笑ってうなずいているのが見えた。
それは、全てを理解し、了承している笑顔だった。
サイゾーは、その笑顔を見て勇気が沸いてきた。
まだ自分は頑張れる、まだ自分に出来る事がある、そんな気持ちになれた。
--そして・・・--
「痛っ!」
次に気がついたとき、サイゾーは激しい痛みを感じた。
そして、自分の回りにいつもの顔があることに気がついた。
だが、サイゾーの口から出た言葉は、少し間の抜けたものだった。
「・・・私はゾンビになったのか?」
「・・・」
サイゾーを囲んでいた顔はすこし面食らったように沈黙した。
その沈黙を破ったのは、やはりこの男の一言であった。
「なんだ、一度死んでボケちまったのかよ? サイゾー。」
とグレイの一言。
「まぁ、普通は死んでから復活したりしませんから。ちょっと混乱してるんでしょう。」
これはティータ。
「ていうかやっぱりサイゾーってしぶといわね。」
これはシルク。
「ちょっとまってよ、みんな。このままじゃサイゾーがよけいに混乱しちゃうよ。」
というアルムの一言で、まずはサイゾーに事情を説明することになった。
--説明中・・・--
「つまり、やはり私は一度死んだのだな?」
「そうだよ。そして、ティータさんのおかげで助かったという訳。」
「ティータ殿・・・あなたにはもう2回も助けてもらっているんですね。感謝の言葉も無い。」
「いいえ、私はただ手助けをしただけ。生きかえったのはあなた自身の意思によるものですわ。」
その言葉を聞いたとき、サイゾーは先程の不思議な風景を思い浮かべていた。
(自分の意思か・・・ひょっとしたら、私が助かったのはデューテのおかげかも知れんな。)
「ところで、デューテとリュートは?」
「リュートは傷が酷くて療養中。デューテはヌイババと戦ったときの精神力の消耗が酷くてまだ寝てるよ。」
「そうか・・・2人とも無事なのだな。よかっ・・・イテテ・・・。」
「ほらほら、まだ無理しちゃダメだよ。」
「あなたもヌイババに受けた傷が治っていませんから、しばらくはリュートさんと同じ療養生活ですね。」
「ま、しばらくはここに留まる事になるから、あせらず傷を治すといいよ。」
「すまないな・・・。」
それからサイゾーの傷が完治するのに1週間の時間を要した。
その間は医務室からほとんど出ることができなかったが、決して退屈ではなかった。
解放軍の皆が、ひっきりなしに見舞いに来ていたからだ。
かつては敵だった者に対してこれほど来てくれるのか、と新鮮な驚きを感じていた。
特にリュートは、自分の傷が完治してからも熱心に見舞いに来ていた。
サイゾーは気にするなと言ったが、やはり自分のせいだという負い目があるのだろう。
また、デューテが目を覚ましたときなどは大変だった。
サイゾーを確認するといきなり
「お兄ちゃん!? ・・・幽霊じゃないよね?」
と言ってきて、本物だとわかるとサイゾーに抱きつき、そのまま泣き出してしまったからだ。
結局、デューテはそのまま1時間以上も泣きつづけた。
それに対してサイゾーは一言
「ありがとう・・・デューテ。」
と優しく答えるだけだった。
--新たなる大陸へ--
まだ陽も上っていない夜明け前、サイゾーは1人静かに立っていた。
そこは、『リゲルの村』に近い草原。
そこにアルム軍は陣を構えていた。
明日、ティータがジークを説得し、ジェロームだけを撃破する手筈になっている。
だが、サイゾーは・・・。
(不思議なものだな・・・。)
(もう振り返らぬと決めていたのに、いざとなると決心が鈍る。)
(私は、これほどに弱い人間だったのか。)
サイゾーは今日、アルム軍から身を引くことにしていた。
自分の部屋にはアルムに当てた手紙を置いてある。
ほとんど脱走のように出てきてしまったが、アルム達ならきっと解ってくれるだろう。
そして、サイゾーは一路『ソフィアの港』を目指す。
今はソフィアの状況が落ち着き、そこから『ユグドラル大陸』への船が出ているという。
サイゾーは、その船に乗るつもりだった。
「もう、行かれるのですか?」
「!? ・・・ティータ殿か。何故、わかったのです?」
「ここ2日ほど、あなたが手紙を書いているのは知っていました。」
「あなたは普段手紙を書かれる方ではありません。何かあると思うのが普通でしょう。」
(なるほど・・・少し迂闊だったかも知れんな。)
「一つだけお聞かせ願えますか・・・。何故、アルム軍を出て行かれるのです?」
「ティータ殿、私は今回の戦いで自分の無力を思い知ったのだ。」
「・・・だから、自分を鍛えるための旅に出ようと思っている。」
「そうですか・・・。」
「私はあなたの行動を止めようとは思いません。ですが、一つだけ言っておきましょう。」
「人は誰でも弱いものです。ですから、人は1人では生きていけません。」
「見つかるといいですね。あなたにとっての大切な人が。」
「・・・ありがとう、ティータ殿。」
実は、ティータの最後の言葉には続きがあった。あまりにも小さい声だったのでサイゾーは気付かなかったが。
それは、こういうものだった。
「もっとも、あなたはすでに『自分の大切な人』を見つけているみたいですけどね・・・。」
そうして、サイゾーは再び歩き出そうとしたのだが・・・、
「イーさん直伝!」
訳のわからない(ホントは元ネタありますけど)掛け声とともに一撃を食らうサイゾー。
それはちょっと怒った様子で立つシルクだった。
「何、カッコつけてるのよ!」
「今度はシルク殿か・・・。」
(うむむ・・・この分ではすでにアルム軍の大半はこのことを知っているかもしれんな。)
「サイゾー、あなたデューテに何も言わずに行くの?」
「すまぬ。だが、デューテに会うわけにはいかんのだ。」
「その理由、聞かせてもらえる?」
「・・・私は、今まで『死ぬ』ということが怖くはなかった。それが忍の道だと考えていたからだ。」
「だが、あの時・・・デューテの目の前で死んでいく時、初めて『死ぬ』ことが怖いと感じた。」
「それは、何故?」
「あの時気付いたのだ。『死ぬ』ということは終わりなのだと。」
「死んでしまっては、デューテを・・・自分の大切な人を守ることが出来なくなってしまうのだと。」
「だから、デューテを守ることが出来るだけの力を身につけたい訳ね。」
「そうだ。」
「でも、だったらどうしてそれをデューテに言わないの? あの子は別に分からず屋じゃないわよ。」
「・・・今の言葉を、本人に面と向かって言うのは・・・恥ずかしいではないか。」
「ふぅん。」
ここで、シルクが手を叩いた。どうやら何かの合図らしい。
「そういうことだってさ。デューテ。」
「!?」
そして、近くの茂みに隠れていたデューテが姿を現した。
サイゾーはまさか本人がいたとは考えていなかったらしく、顔中が赤面していた。
普段はあまり表情を崩さないだけに、このときの赤面は貴重なものだったと言えよう。
「サイゾーお兄ちゃん・・・。」
「デューテ・・・。」
「ううん、もう何も言わなくていいよ。」
「でも・・・一つだけ約束してくれない?」
「何を?」
「3年・・・3年経ったら、またデューテに会いに来て欲しいの。」
「・・・わかった、約束しよう。」
「ありがとう、サイゾーお兄ちゃん!」
そして、デューテは自分の指に嵌めている指輪・・・『祈りの指輪』を指から外した。
「約束のしるしに、これをあげるね。」
「!? これはデューテの母の形見じゃないか。・・・本当にいいのか?」
「うん。もう、デューテはこれが無くても大丈夫だから。」
「それに、2人の約束のしるしとしては丁度いいでしょ?」
「・・・ありがとう。必ず、また会いに来るから。」
「元気でね! お兄ちゃん!」
「ああ! デューテも!」
そして、サイゾーは今度こそ歩き出す。
新しい、未知の場所を目指して・・・。
3人の姿が小さくなった頃、ふとデューテのことが気になった。
だが、サイゾーは振り向かなかった。
振り向く必要がなかった。
デューテは泣いていたのだ。
その声が、サイゾーの耳にも届いていた。
(デューテ、馬鹿な兄ちゃんを許せ・・・。)
そして、3人の姿は見えなくなる。
もう、戻ることは許されない。
もう、振り向くことは許されない。
彼の旅の道連れは2つ。
一つは、己の持つ剣一振り。
もう一つは、小さな指輪とともにある大切な約束・・・。
ただ、それだけである。
ソフィアの港は目前に迫っていた。
----------
こうして、サイゾーはバレンシア大陸を後にした。
サイゾーの行く先には何が待ちうけるのか。
そして、その先にあるものは何なのか。
様々な思惑が、いつしかサイゾー自身を巻き込むことになる。(かも?)
次回からユグドラル大陸(聖戦)編。
早くもマイナー同士が争う『サイゾーVSマーフィー』を要チェック「や!」。(古っ!)
<製作後記>
※この色の文は作者ツッコミです。
お待たせしちゃってゴメンナサイ。m(_ _)m
ふー。ようやくバレンシア大陸編の第1部が終了です。
全体からするとまだ1/3くらいしか終わってないんですけど。(汗)
今回は最後の方にネタが集中してるのが問題かな?
しかも変なネタ多いし。(^^;
密かにAIRネタも・・・。(わかるかな?)
さて、次回からはユグドラル編が始まります。
基本的に『シャナンに会って剣の腕を磨く』というコンセプトでいく予定。
トラ7のキャラが出るかどうかは解りません。
サラが出せると良いんですか。(爆)