へっぽこVSシリーズ第10弾「サイゾーVSマーフィー」(前編)
--船の中にて--

ここは、『ユグドラル大陸』へと向かう船の中。
大陸まではあと2日程度というところである。
サイゾーはその船で1人瞑想をしていた。

もちろんいつも瞑想しているというわけではない。
他の客に話し掛けて新しい大陸の情報を収集したり、時には船内の訓練場で汗を流すこともある。
一度、異次元に迷い込んで酷い目に会ったというエピソードもあるのだが、それは別の機会に語ることにしよう。
(番外編をお楽しみに)

サイゾーが入手した情報を整理するとこんな感じになる。

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ユグドラル大陸は、かつてロプト帝国と呼ばれる国に支配されていた。
ロプト帝国は暗黒神を崇拝する国であり、その支配は極めて過酷なものだったと伝えられる。

しかし、約150年前に『聖戦』と呼ばれる戦いがあり、ロプト帝国は滅んだ。
その『聖戦』とは、12人の聖なる戦士を中心とした戦いであり、
12人の戦士は各々がその手に聖なる武器を携えていたと言う。

ロプト帝国の滅亡により、ユグドラル大陸には12人の聖戦士を王とする12の国が誕生する。
そして、ユグドラル大陸は平穏な時代を迎えた。

しかし、平穏な時代はいつしか人間のおごりを生む。
そして20年ほど前、第2の『聖戦』が始まった。
その『聖戦』は光と闇の戦いであると同時に、かつて仲間であった聖戦士の子孫同士が争う悲惨なものであった。

第2の『聖戦』は、光の公子と呼ばれるセリス王とその仲間たちによって終止符が打たれる。
現在はそのセリス王がグランベル王国の盟主として統治している。
セリスやその仲間たちの努力により、少しづつ各地の情勢も安定しているという。
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↑攻略本の年号を見て書いてます。もし間違ってたらスイマセン。

1人瞑想していたサイゾーに、不意に頭に響く声が聞こえてきた。
「どうです、行くあては見つかりましたか?」

初めて話し掛けられたときは驚いたサイゾーだが、すでにその正体が解っているので普通に返事をする。
「ミロア殿か・・・。一つ、有力な情報が手に入った。」
「どのような?」
「大陸の北東にイザークと呼ばれる国がある。」
「その国の王がシャナンと言うのだが、大陸で知らぬ者がいないほどの剣豪らしい。」
「では、そのシャナンという方に会うのが当面の目的ですね。」
「だが、この船が着く街からはかなりの距離がある。長旅になるぞ?」
「ふふふ・・・大丈夫ですよ。そのくらいは覚悟の上でついて来ていますから。」

実は、サイゾーには行くあてがなかった。
「自分を鍛える」という目標はあったが、具体的にどうするのかは全く考えていなかったのだ。
意外に大雑把な男である・・・。


--宿屋にて--

船が到着した街は、サイゾーの予想以上に活気にあふれた街だった。
通行人に尋ねてみたところ、ここ『ルテキアの街』は、大陸でも1、2を争うほどの大きさらしい。
バレンシア大陸への船もここからしか出ていないという。
この大陸の情報を集めたいサイゾーにとっては実に好都合な街と言えた。

サイゾーは、まず今夜の宿を探すことにした。
船の長旅で疲れていることと、今後は宿で寝る機会があまりないということを見越しての行動だ。
幸いにも宿はすぐに見つかった。
看板を見ると「うらりょん亭」と書いてある。

(この名前・・・なんだかイヤな予感がするな。)

しかし、宿が取れないと困るので、とりあえず店主に開き部屋があるかを聞いてみる。
店主はすぐにOKと言ってくれた。
宿の値段も手頃だったので、深く考えずにこの宿に決めることにする。
宿は1階が酒場、2階が寝室という構造で、情報収集にうってつけだったことも即決の一因となった。

サイゾーはとりあえず部屋の確認をして、さっそく酒場で情報を集めることにした。
まずは店長と話してみることにする。

「お客さん、この大陸の人じゃないね。どっちの大陸から来たんだい?」
「バレンシアだ。」
「この大陸には初めて?」
「ああ。」
「じゃあ、この大陸のオススメは知らないよね。一つ、試してみるかい?」
「いただこうか。」

そう言うと店長は奥の方から一升ビンを取り出してきた。
そのビンには「銘酒うらりょん」という文字があった。どうやらこれがこの酒の名前らしい。
しかも、何故かその酒はストロー付であった。ご丁寧にストローが一回転しているという徹底ぶりである。

「・・・店長、これは何かの冗談か?」
「ふふふ、わかってないね。この「銘酒うらりょん」はストローで飲むのが決まりなんだよ。」
「何故?」
「おっと、そいつは聞かないのが男ってもんさ。」
「・・・まぁ、いいだろう。ここの風習にのっとるのも悪くないしな。」

というわけで「銘酒うらりょん」を飲んでみる。
「ほう・・・これはなかなか。」
「だてに「銘酒」の名を冠しちゃいないよ。」
つまりけっこう美味しかったのである。
しかし、なにぶんストローで飲んでいるため、なかなか減ってくれない。
しかも酒は一升あるので、当分は無くなりそうにない。

(この分では他の酒を追加する必要もなさそうだ。・・・まぁ、安上がりでいいか。)

「ところでお客さん。」
「ん?」
「バレンシア大陸出身でその格好・・・ひょっとして忍者ってやつなのかい?」
「ほう・・・よく知っているな。確かに私は忍者だ。正確には「忍」というのだがな。」
「まぁ、この街は本当にいろんな人がいるからね。情報量もすごいのさ。」
「で、なんだってこの大陸に来たんだ? ひょっとして『仕事』かい?」
「いや、『仕事』とは関係無い。ただの修行の旅だ。」
「へぇ。修行しなきゃいけないほど弱いとは思えないけどねぇ。」
「さっきからあんたの行動をみてるけど、全然スキがない。きっと、相当な修羅場を潜り抜けてきたんだろう。」
「それでも上には上がいるものだ・・・。だから、私は修行の旅をしている。」

「ふうん・・・で、行くあてはあるのかい?」
「それなんだが・・・シャナンという人物に会おうと思っている。」
「!? あの『剣王シャナン』様にかい? そりゃ、いくらなんでも無謀だよ。」
「だからこそ会うのだ。自分より強いものと会わなければ修行にならん。」
「なるほど・・・あんた、運がいいよ。」
「ん?」
「実は、この『ルテキアの街』にシャナン王がお忍びで来てるっていう話があるんだ。」
「なに! それは本当か?」
「ああ、けっこう信憑性のある話だ。そこで飲んでる夫婦がいるだろ? あの2人に話してみな。」

そう言って店長が指を指した先には、行商人風の格好をした2人がいた。
1人は少し間の抜けたようみにえる男。
その横には、男には不釣合いとも思われる赤い髪の美女。
サイゾーはゆっくりとその2人がいる場所に動いた。

「・・・隣に座っていいか?」
「ん? ああ、いいぜ。どうぞ。」
「では、座らせてもらおう。」
「それで、私たちにどんな話を聞きたいのかしら?」
「話が早くて助かる。・・・シャナン王がこの街にいるという噂についてだ。」
「その前に聞いていいか? シャナン王に会ってどうするつもりだ?」
「シャナン王と一戦交えてみたいのだ。」
「へ? あんた本気かい?」
「冗談でこういう台詞が言えるか。」
「ふぅん、なにか訳ありみたいね。いいわ、教えてあげましょ。」

「まず、シャナン王がこの街にいるのは、ほぼ間違いない。」
「根拠は?」
「『神剣バルムンク』の話は知っているか?」
「イザーク国に伝わる聖12武器の一つだな。シャナン王の愛剣という話を聞いた。」
「そいつの修理にこの街に来てるんだ。」
「だが、何故そこまで解る?」
「オレは2年ほど前に本物の『神剣バルムンク』を見たことがある。そして、この街の鍛冶屋で同じ物を見たんだ。」
「なるほど・・・だが、何故この街に来ているんだ? イザークからはかなりの距離があるのに。」
「おそらくイザークの鍛冶屋では修理できなかったんだと思う。でも、いつまでも王家の神剣が壊れてちゃマズイだろう。」
「だから、大陸でも随一の技術士たちが集まるこの街に来た。こんなところじゃないかしら?」
「なるほど。確かに信頼できる話だ。・・・もっとも、あんた達がウソをついていなければ、だが。」
「・・・ウソをついてると思うかい?」

ここで、指輪から小声が聞こえた。
「サイゾーさん、この2人は信用できると思います。」
もちろんこの声は夫婦には聞こえていないが。

「・・・いや、いいだろう。信用しよう。」

「あ、そうそう、これを持って行きなよ。鍛冶屋の位置が書いてある地図だ。」
「かたじけない。」

そして、サイゾーは早速その鍛冶屋に向かってみることにした。
当然ながら「銘酒うらりょん」はかなり残っているので・・・、
「この酒はあんた達で飲んでくれ。情報料だ。」
「おっ、気前がいいねぇ。」
「縁があったらまた会おう。」
「元気でな。」

そして、サイゾーは宿を出た。
これは、その後の夫婦の会話である。
「・・・ねぇ、ジェイク。」
「どうした、アンナ。」
「あの人に、シャナン王の偽者がいるって話、しなくて良かったのかしら?」
「そういえば言ってないな・・・。ま、あの人くらいの実力なら、偽者か本物か解るだろう。」
「あの人、そんなに強いの?」
「ああ、かなりの実力を持ってるよ。オグマさんやナバールさんといい勝負ができるかもね。」
「へぇ、あなたがそこまで言うなんて、かなりの人ね。」
「きっと、もっともっと強くなるよ。」


--鍛冶屋にて--

目的の鍛冶屋は街の角にあった。
そこは街の角と言うよりは街外れと言った方が正しいかもしれない。
なぜなら、そこには鍛冶屋がポツンとあるだけで、周囲に建物がまったくない場所だったのだから。

(これはまた・・・凄い場所だな。)
(とりあえず、入ってみるか。)

「たのもー!」
しかし反応がない。

「たのもぉーっ!」
「・・・誰じゃ、懐かしい掛け声でワシを呼ぶ偏屈人は。」
そういって現れたのは、じつに頑固そうなじいさんだった。
どうやら他に人はいないようである。

「あなたがこの鍛冶屋の主か?」
「なんじゃい、お主・・・この場所に何か用か?」
「・・・。」

(このじいさん・・・かなり手強そうだ。まともに取り合っても無理だな。)
(どうやってシャナン王の情報を聞いたものか・・・。)

「用がないなら出て・・・うん? お主、ちょっと待て。」
「なんだ?」
「腰に下げている剣、ちょっと見せてくれんか?」
「!? あんた・・・よく解ったな。」
確かにサイゾーは腰に件を下げていたが、それは巧妙に隠してあり、普通ではまず見つからないようになっていた。

「ここは剣を専門に扱う鍛冶屋なんじゃ。その程度ではワシの目は誤魔化せんよ。」
「・・・いいだろう。少しだけ見せてやろう。」
そう言ってサイゾーはじいさんに自分の愛剣を渡した。

「・・・ふむ、こりゃ面白い。お主、バレンシア大陸の忍者か。」
「な!? ・・・何故そこまで解る?」
「ふふ、ワシは昔この形の剣・・・たしか「刀」と言うたか・・・を鍛えたことがあるんじゃ。」
「その時の若者に、バレンシア大陸のことをいろいろと教わったのよ。」
「確か、そやつの名前は・・・そう、サスケと言うたかの。」
「!? なんだと!」
「どうした? サスケを知っておるのか?」
「サスケは・・・私の父の名だ。」
「なんと! お主サスケの息子か。こりゃ面白いわい。」

(父が、この大陸に来たことが・・・。)

「ところで、サスケは元気か?」
「父は・・・もういない。」
「ぬな!? そうか・・・ワシよりも早く逝ってしまったか。」
「ところでお主、名はなんと言う?」
「サイゾーだ。」
「サイゾーか。・・・よい名前だ。」
「サイゾー、お主この刀をもっと鍛えたいと思わんか?」
「!? 出来るのか?」
「確かにかなりの業物じゃ。手入れも行き届いておる。だが、ワシからすりゃあまだ甘いの。」
「・・・どのくらい掛かる?」
「元が良いからそれほど掛からんよ。1週間以内には終わるじゃろう。」

(1週間か・・・少しのんびりするのもいいか。)
(しかしシャナン王の件も・・・あっ! 忘れていた!)

「じいさん、少し話を変えるが・・・。」
「なんじゃ?」
「ここで今、『神剣バルムンク』を修理しているというのは本当か?」
「!! お主・・・。」
「いや、別に剣そのものに用がある訳じゃない。用があるのは持ち主・・・シャナン王の方だ。」
「ふぅ・・・また神剣を狙う不届きな輩かと思うたわい。」
「つまり、以前に狙ったやつが居た訳だな。」
「そうじゃ。もっとも、あの剣はシャナン王以外の人間には持つことすら難しいがの。」
「・・・シャナン王に会いたければ、今日からちょうど1週間後にまた来るがいい。」
「感謝するぜ、じいさん。」

「ところでこの刀、どうするね?」
(1週間以内に終わるという事は、シャナン王に会える日には終わっているな。)
「ああ、よろしく頼む。」
「商談成立じゃな。」

そう言うと、じいさんは鍛冶屋の奥に行って、剣を一本持ってきた。
「剣がないと不便じゃろう。しばらくこれを貸しておこう。」
「!! これは『銀の剣』ではないか。いいのか?」
「ふふ・・・この鍛冶屋にはなまくらは置いてないんじゃよ。それがウチの一番安い剣じゃ。」
「在庫もあるから気にせず使うといいわい。」
「すまぬ。恩に着るぞ。」

そして、1週間後に来る約束をして、サイゾーは鍛冶屋を後にした。

「・・・あやつ、良い目をしているわい。あの時のサスケにそっくりじゃ。」


--再び宿屋にて--

宿に戻ったサイゾーは、自分の部屋でミロアと会話をしていた。

「・・・それで、1週間どうするつもり?」
「うーむ、実は決めていないのだが・・・。」
「相変わらずアバウトね。」
「まぁ、少しのんびりしながら情報収集をするか。別に焦らなくてもいいだろう。」
「ま、いいわ。・・・そろそろ寝ましょうか。」
「ああ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」

しかし、次の日に事態は急展開する・・・。


翌朝、サイゾーが1階の酒場で朝食を取っていた時のこと。
店長が話し掛けてきた。

「どうだい、シャナン王には会えそうかい?」
「ああ、おかげさまでな。1週間後に会えそうだ。」
「1週間か・・・兄さん、しばらくこの街に留まるのかい?」
「そういうことになるな。」

すると、店長は急に小声になった。
「・・・兄さん、あとで厨房の奥にある私の部屋に来てくれんか?」
「どうした?」
「ちょっと『仕事』を頼みたいんだが・・・。」
「・・・ヤバイのか?」
「いや、別にそういう意味の『仕事』じゃない。」
「まぁ、いいだろう。あとで伺おう。」
「すまないね。」

という訳で、サイゾーは少しだけ街で情報収集をしてから店長の部屋に伺った。
少し情報を集めたのは、最近の噂話を集めるためだ。
しかし、特にヤバい話はなく、何処にでもあるような話しか聞けなかったが。

「で、何を頼みたいんだ?」
「とある人物を捕まえて欲しい。」
「その人物は?」
「シャナン王の偽者については聞いたことがあるか?」
「いや、ないな。街でもそんな噂は全く無かった。」
「だろうな。この街でもごく一部の人間・・・事件の被害者しか知らん。」
「つまり、そいつを捕まえるのが仕事だな?」
「そうだ。」
「ところで、そいつは何をやらかしたんだ?」
「偽者が本物の名を語って、商品を値切りしたということだ。」
「・・・セコいな。」
「まぁ、それほどヤバイ奴じゃなさそうだが、すでに結構な被害が出てるんでな。」
「では、報酬はどれくらいだ?」
「そうだな・・・これくらいでどうだ?」

そう言って店長が示した金額はけっこうなものであった。
「うむ。この仕事、引き受けよう。だたし、期限は1週間だ。」
「ありがとう。」
「店長、この偽者についての手がかりはどのくらいある?」
「とりあえず、被害に遭った店の地図を作ってあげるから、直接聞いてくれ。」
「わかった。」

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こうして、サイゾーはシャナンの偽者探しに東西奔走することになる・・・。
シャナンの名を語る偽者の正体とは?(ま、もうバレてるでしょうが)
そして、本物のシャナン王に会うことは出来るのか?

次回、『サイゾーVSマーフィー』(後編)に「ファイナルアンサー!」(ぉ


<製作後記>この色の文は作者ツッコミです。 えー、今回作者のボケが少ない(ていうかほとんど無い)です・・・。 でも、たまにはこんなことがあっても良いでしょ。(え、ダメ?) 多分、今回のタイトル見て、『マーフィー』って誰? みたいなこと思った人もいるでしょう。 次回をお楽しみに。 いつのまにかオリキャラ『サスケ』(サイゾーの父親)の出番が増えてきている今日この頃。(笑)

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