へっぽこVSシリーズ第11弾「サイゾーVSマーフィー」(後編)
--情報収集--

サイゾーはまず、宿から一番近い店を訪問した。
そこは道具屋で、偽者の被害に初めて逢った店でもあった。

「確かにおかしいと思ったよ。言動が王族らしくなかったし、態度も堂々としてなかったしな。」
「でも、オレはシャナン王の顔や性格を知ってるわけじゃなかったし、本物だったら失礼だと思ったんだよ。」
「偽者だと気付いたのは?」
「被害に逢った店の一つに、本物のシャナン王が来たのさ。・・・もちろんお忍びでな。」
「で、あっという間に店の関係者に話が広がって、それを聞いたときに偽者だと解ったんだ。」
「本物が来たのは、いつ頃だ?」
「ついこの前だよ。まだ1週間も経っていない。」
(なるほど。どうやら本物のシャナン王がまだこの街にいることはほぼ確実だな。)

「おそらく、偽者は本物がこの街に来たことを知らないんじゃないかと思う。」
「ということは、まだ本物を語る可能性があると言うことか?」
「ああ、近いうちにどっかに現れる可能性は高いぜ。」
「なるほど。いろいろとありがとう。」
「いや、頑張って捕まえてくれよ。期待してるぜ!」


次にサイゾーが訪問したのは、本物のシャナン王が訪問したという武器屋だった。

「ワシも人を見る目が無いと思ったよ。それほど2人の差は歴然としていたさ。」
「本物と偽者の差は?」
「似てるのは見た目と声色だけだね。態度や風格が全然違うよ。」
「やっぱり本物は威風堂々って感じさ。この目で見れて本当に幸運だったと思うよ。」
「何か、はっきりと見分けられる特徴は無いか?」
「うーん、見た目だけだとちょっと難しいな・・・。あっ、そうそう。」
「本物のシャナン王はいつも恋人と一緒に行動してるみたいだから、それで見分けられるかも。」
「恋人?」
「ああ、金髪でかわいい、凄く活発な女の小だよ。間延びした喋り方が印象的だったな。」

(活発な女の小か・・・。デューテは元気かな・・・。)

「ん、兄さんどうしたね? なにか考え込んじゃって。」
「いや、大した事じゃないさ。」
「いろいろとありがとう。これで偽者を捕らえるメドが立ちそうだ。」
「おっ! 言うねぇ。頑張れよ!」


サイゾーはその後も、被害に逢った店を訪問して、いろいろな情報を集めていった。
全ての店を訪問した時には、あたりはもう薄暗い状態だった。
そして、サイゾーは偽者を捕らえるための作戦を考えるために宿に戻った・・・。


--宿屋にて:作戦会議--

サイゾーは自分の部屋でミロアと会話をしていた。
その内容は、もちろんシャナン王の偽者を捉えるための作戦である。

「それで、どういう作戦でいくつもり?」
「被害に逢った店の情報を整理すると、偽者の出現には一定の法則があるのがわかった。」
「どういうもの?」
「まず出現時期が、若干のバラツキはあるが、ほぼ1週間毎で安定している。」
「ふんふん。」
「それと、出現する店の特定だが・・・これはもっと簡単だった。」
「どうして?」
「まだ被害に逢っていない店が一軒しかないんだ。」
「それに、偽者は同じ店に2回現れたことが無い。」

「要するに、1週間以内にその被害に逢っていない店に現れる可能性が一番高いわけね。」
「そうだ。だから、明日からその店で張り込みをやることになるな。」
「がんばってね。」
「ああ。」

そして、明日からの張り込みに備えてサイゾーは早めに寝ることにした。


--張り込み開始!--

翌日の朝から、早速サイゾーは被害に逢っていない店で張り込みを開始した。
ちなみにその店はいわゆる雑貨屋である。
その店はすでに話を了解していて、張り込みについては快くOKを出してくれた。

張り込みの方法も問題無かった。
その店の奥・・・店の休憩室からは、店の側が見えるようになっていた。
ところが、店の側からはその休憩室の中は見えないようになっていたのだ。
(いわゆるマジックミラーですな)
なんでも1年ほど前、銀髪の女魔道士を助けたらお礼に魔法を掛けてくれたそうだ。

そういうわけで、サイゾーは店の休憩室で張り込みをすることになった。

最初の2日は何事も無く過ぎ去った。
ガラの悪い客に店員が文句を言われ、それを助けるという場面はあったが、偽者は現れなかった。

--そして3日目の昼・・・--

2人の男女が店に入ってきた。
その時、休憩室でのんびりしていた店長が急に反応した。
「!! ・・・サイゾーさん、来ました。」
「わかった。」

そして、注意深くその客の様子を伺っていたのだが、2人のうちの女性・・・まだ少女という感じだったが・・・が、
昨日聞いていた『本物のシャナン王の恋人』の特徴にそっくりだった事に気がついた。
男の客も威風堂々という感じで、少しも不審な点は見られない。
(・・・もしやあれは。)

「店長、あれはもしや本物のシャナン王ではないのか?」
「えっ? でもウチみたいな雑貨屋に王族が来ますかね?」
「・・・ちょっと確かめてこよう。」
そう言ってサイゾーは店の売り場に歩いていく。

その2人は極めて小さい声で会話をしていた。
普通の人間ではまず聞き取ることが出来なかっただろう。
だが、忍として生きてきたサイゾーにはそれほど聞き取りにくい声でもなかったのだ。
「なぁ、パティ。やはり私は・・・こういうところは苦手だ。」
「シャナンさまぁ〜、せっかくお忍びで来てるんだから、もっと楽しもうよ〜。」
「しかし・・・。」
「もう〜。『バルムンク』が修理できるまであと4日しかないんだよ。」
「いつも王宮で窮屈な生活をしてるんだからさぁ〜。ちゃんとリフレッシュしないと〜。」
「いや、私は別に窮屈ではないが・・・。」
「むー。」

(ふむ、やはり本物か。ならば・・・。)
サイゾーは、素早く背後を取って話掛けようとした・・・が、出来なかった。
サイゾーが背後に回ろうとした瞬間、シャナン王がそれを上回る速さで逆にサイゾーの背後を取ったからだ。
(!! なんというスピードだ・・・。)

「私に何か用かい? お兄さん。」
「・・・流石ですね。・・・シャナン王。」
「そこまで知ってるのか・・・。誰かに頼まれたのか?」
「いや、私は単にあなたと手合わせをしてみたかっただけだ。」
「なかなか面白いことを言うね。・・・4日後の昼、街外れの鍛冶屋に来るといい。」
「・・・わかった。」

そして、シャナンはパティの横に戻っていった。
「シャナンさま、大丈夫?」
「ああ、別になにもしてないからね。」
「・・・彼は凄いよ。あと少し反応が遅れていたら背後を取られていたかも。」
「また、4日後だね。」
「そうだな。」

この日はこれ以外には何事も無く過ぎた。
次の4日目も特に問題無く過ぎていった。
そして・・・。


--勝負の5日目--

その日も何事も無く終わるかに見えた。
しかし閉店間際の時間、その男はやってきたのだ。

その時は店長が店番だったので、サイゾーは1人で張り込みをしていた。
(!! ・・・とうとう来たな。)
(・・・しかし本当に似ているな。これでは間違えてしまうのもうなずける。)
素早く休憩室から店のほうへ移動していく。

店では偽シャナンと店長が交渉をしていた。
しかし、店長は2日前の一件で男が偽者と解っているので反応は冷ややかだ。
偽者はいろいろと口先八寸で喋るが、さっぱり効果が無い。
偽シャナンはあきらめて店を出ようとした。が・・・、

「何処へ行くんだい? 偽者さん。」
サイゾーの放ったその一言に、男は一瞬ではあるが明らかに動揺した。
「何を言う? 私はイザークのシャナン王だぞ。」
「ま、確かに見た目はそっくりだが、肝心の風格が全然たりないな。」
「な、何を言い出すんだ?」
「あいにくと、私は本物のシャナン王を知っている。何を言ってもムダだ。」
「で、この街の被害者から捕まえてくれとの以来を受けているんでな。・・・おとなしく来てもらおうか!」
「くそっ! もうバレてたのかよ。」

そして、偽シャナンはサイゾーの横をすり抜ける。
サイゾーは妨害しようとしたが、すでにすり抜けられたあとだった。
(なにっ? 速い・・・。)

そして、夕方の『ルテキアの街』を舞台とした追跡劇が始まった。
偽シャナンは確かに速いのだが、何故か技の方が足りないらしく、何度もつまづいていた。
対してサイゾーは速さこそ劣るものの、的確な道順を選び確実に偽シャナンを追い詰めていく。
街外れの鍛冶屋・・・例の場所である・・・でとうとう偽シャナンは逃げることを放棄した。

「ハアハア・・・ちくしょう。こうなったら直接倒してやる。」
「ふん・・・お前の腕で出来るものか。」
「なめるなよ・・・こっちには『奥の手』があるんだからな。」

そして、サイゾーと偽シャナンは剣と剣の応酬を始めた。
しかし、明らかに技で劣る偽シャナンはあっという間に攻撃を弾かれ、剣を飛ばされてしまった。

「お前では無理だ。おとなしくついて来い。」
「へへん、まだまだ。」
「・・・一度痛い目を見ないと解らないようだな。」
そして、サイゾーは偽シャナンに斬りかかった。
もちろん殺すつもりではない。利き腕を少し痛める程度のつもりだ。

だが、不思議なことに偽シャナンは避けようとしない。
(!? あきらめたのか?)
「いくぜ! 奥義、『バルムンクの盾!』」
そう言って偽シャナンは右手を自分の前面に差し出した。

(!?)
一瞬ためらったサイゾーだったが、そのまま斬りこむ。
しかし、その攻撃は凄まじい反動で弾かれてしまう。
しかも使いなれていない剣だったため、反動で剣を離してしまった。

「なにぃっ!」
「ははは、『値切り男』をなめんなよ!」

そう言う男の右腕には、腕輪が5つ身につけられていた。
しかも全て同じ色である。どうやら同じものを5つ身につけているらしい。
(そう言えば、裏通りの道具屋のオヤジが、『シールドリング』を5つも値切られて大損したとか言ってたな・・・。)
(つまり、そういうことか・・・。)

「よっしゃ! 今がチャンス!」
「!! しまった。」
だが、弾かれた剣の位置は、サイゾーの方が遠い。

「月の光は全てのものを貫く輝き」
「その光は剣に乗り、青き輝きと化す」
「月光剣!」

サイゾーはとっさに鎧で防ごうとした・・・が、青く輝く剣はその鎧をものともせずに貫く。
「ぐあっ!」
「へへん。月光剣の前じゃ鎧なんで役立たずだよ。」

「じゃ、あばよ。」
「ま、待て・・・。」

しかし、サイゾーは傷を負っているため満足に走ることが出来ない。
そのまま逃げられてしまうかに見えたが・・・。

「スリープ!」
「へ? ・・・あ、あれれ・・・。」
いきなり眠ってしまった。

そして、道の向こう側から、1人の魔道士が歩いてくるのが見えた。
「マーフィーが迷惑を掛けちまったな。」
「・・・あんたは?」
「オレ? オレはホメロス。一応、旅の吟遊詩人だ。マーフィーの悪友でもあるけど。」
「ひょっとして、一部始終見ていたのか?」
「ああ、あんただったらオレが手伝うまでも無いと思ったんだけど。」
「油断していたからな・・・。」
「ま、アイツの行動を読むのは難しいけどな。ハハハ・・・。」

「そいつ、しばらく眠ったままだから。オレが連れていってやるよ。」
「ああ、すまない。」
「あ、そういや傷は大丈夫か?」
「まぁ、歩けないこともないだろう。」
「ちょっと応急処置をしてやるよ。・・・ライブ!」
「・・・ありがとう。かなり楽になった。」
「また、ちゃんと手当てしとけよ。じゃぁ、行くか。」

そして、サイゾーと、マーフィーを担いだホメロスは宿に向かった。


--宿にて--

偽シャナンことマーフィーを連れて戻ったサイゾーは、まず店長に傷の消毒をしてもらった。
さらに夕食を振舞ってもらったのだが、その豪勢さに驚いた。
店長曰く、「怪我をさせちまったお詫び」だそうだ。
そして、夕食を食べているうちに今回の事件の被害者である店の店長があつまってきた。

・・・

とりあえずホメロスがマーフィーについて説明することになった。
なんでも口の上手さはかなりのもので、昔からシャナンの名を語って値切りをしていたそうだ。
しかし先の『聖戦』で偽者の名を語って酷い目に会い(笑)、
しかも本物のシャナンに会った為、しばらくは大人しくしていたらしい。
ちなみに、偽者を語るときには「シャナム」という偽名を使っていたとのことだ。

「それがなんで今更偽者を語ったんだ?」
「さぁ、それは本人に聞いてみないと・・・。」

という訳で本人を起こすことになった。

「・・・レスト!」
「う、うーん・・・。」
「目が覚めたか?」
「ここは・・・うわっ!」
「ハハハ・・・皆さんお揃いですね・・・。」
「大体の事情はこっちの男から聞いた。聞きたいのはひとつだ。」
「な、何でしょ?」
「何故、今になって偽者を語った?」
「・・・簡単さ。「偽者」でいるのがイヤになっちまったんだよ。」
「どういうことだ?」
「これでも、『聖戦』が終わってしばらくはちゃんと働いてたんだぜ。」
「でも、町の人間には「本物のシャナン」を知ってる奴も多いんだ。」
「そいつらは、オレを見るたびに「偽者」って言いやがる。オレはオレ、ちゃんとマーフィーって名前もあるのに・・・。」
「で、「自分」でいるのがイヤになったってわけか。」
「そうだよ。「本物」を語れるんだったらなんでも良かった。店で値切ったってのはその手段に過ぎない。」
「しかし、店のほうはそれで納得できる訳でもあるまい。」

ここまでサイゾーとマーフィーが2人で話していたのだが、ここで「うらりょん亭」の店長が口をはさんだ。
「まぁ、事情はわかったし、同情が無いわけでもないが・・・やはり責任は取ってもらわんとな。」
「ど、どうなるんで?」
「当分はそれぞれの店でタダ働きになるだろう。」
「げっ!」
「ま、自業自得って奴だ。安心しな。食事と宿くらいは提供してやるよ。」
「とほほ・・・。」

「ところで兄さんよ、一つ忠告してやろう。」
「ん?」
「いくら頑張っても「偽者」は「本物」にはなれない。」
「ほっといてくれ!」
「だから、「偽者」じゃなくて、「自分」になればいい。」
「!?」
「いつも「自分」でありつづければ、いつか「偽者」ではなく「自分」として見てくれる人が現れるさ。」
「そう、ちょうどそこの君・・・ホメロス君のようにね。」

(オヤジさん、いいこと言うねぇ。)
(マーフィーもこれで少しは変われるといいな・・・。)

そして、自分はもう用済みと思ったので足早に退散することにした。

・・・

「ふーん、ちゃんと「自分」を見つけられるといいね。その人。」
「ま、今後どうなるかだな。」
「ところで約束の日まであと2日あるわ。どうするの?」
「宿のオヤジから謝礼が出るから、少し羽を伸ばすのもいいだろう。」
「それに、鎧を壊されてしまったから新調する必要があるしな。」
「ふふっ、あなたはいつも慌ただしいわね。」
「別に好きでやってるわけではないが・・・。」
「困ってる人を見るとほっとけないタイプだからかしら。」
「かもな・・・そろそろ寝るか。」
「おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」

そして、夜は更けていく・・・。

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マーフィー最終奥義『バルムンクの盾』の前に(いつものごとく)無念の敗北をきっしたサイゾー。
だが、2日後にはついにシャナン王との対決がせまる。
はたしてその結末は?

次回、FE界最強の1人と言われる人物との対決だ!
『サイゾーVSシャナン』に、兄チャマ、チェキよ!(爆)
(しかし四葉ネタ多いよな・・・)


<製作後記>この色の文は作者ツッコミです。 『バルムンクの盾』いかがでした? けっこう前からこのネタはあったんで、出せて良かったっす。(^^) なお、このSSではシャナム=マーフィーということで書いてますんでどうかよろしく。 え? マーフィーって誰かって? さてはアナタ、平民でPLAYしたこと無いね。(笑) マーフィーは、9章の北西にある街(SSでは『ルテキアの街』)の一番左下にある街を フェミナ(フィーの代役)かジャンヌ(ナンナの代役)で尋ねると特殊イベントが発生するんですが、 その時に出てくる偽シャナンの名前です。 ちなみに『バルムンクの盾』ネタもここから来てます。 えっ、シャナムも知らない? そういう人はトラキア776をPLAYしてください。(ぉ

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