へっぽこVSシリーズ第12弾「サイゾーVSシャナン」(前編)
--前日の出来事--
いよいよ明日、サイゾーはシャナンと会うことになっていた。
この日は、先の出来事で壊れてしまった鎧の新調のために街を見回っていた。
だが、サイゾーの目に見合うだけのものはなかなか見つからなかった。
やはり大陸が違うことで鎧の質も大きく違うのだ。
以前サイゾーが愛用していたものは非常に軽く動きやすいもので、
いざという時の致命傷を避けるためのものだった。
しかし、この大陸では基本的に防御を重視しているため、サイゾーにとっては重過ぎるのである。
結局、午前中いっぱい回っても目的の鎧は見つからなかった。
(で、結局ココに来るのか・・・。)
最後にダメ元で訪れたのは、例の街外れにある鍛冶屋だった。
「たのもーっ!」
「・・・」
「たのもぉーーーっ!」
「・・・その声は例の兄さんじゃな。」
「はて? 約束の日は明日ではなかったかの?」
「いや、今日は別の用事で来た。」
「何かな?」
「単刀直入に聞こう。鎧を探している。」
「ほう。どんな鎧じゃ?」
「こんな鎧だ。」
そう言って、壊れてしまった鎧を差し出す。
「・・・なるほど。確かにこれは見つからんじゃろうな。」
「じいさんでもダメか?」
「悪いがワシは武器が専門なんじゃ。鎧は無理じゃの。」
「そうか・・・。」
「ふふふ・・・安心せい。ワシには無理じゃが、弟には出来る。」
「弟?」
「うむ、この街のちょうど逆の方角にも一軒だけ外れた鍛冶屋があるんじゃ。」
「そこにワシの弟がいるんじゃよ。弟はワシと逆で鎧が専門じゃ。」
「腕は?」
「大丈夫。ワシの折り紙つきじゃ。」
「待っておれ、ちと地図と紹介状を書いてやろう。」
「じいさん、ありがとう。恩に着る。」
「なに、ワシは兄さんを気に入っとるんじゃよ。気にするでない。」
そして、サイゾーはその鍛冶屋を目指した。
街の逆方向に位置していたためかなりの距離があったが、サイゾーにはそれほど苦にならなかった。
そして、鍛冶屋の近くに差し掛かり、人通りがほとんど無くなったころ・・・。
「そこにいる奴・・・そろそろ出てきたらどうだ?」
サイゾーは一見何も無い場所に向かって話し掛けた。
すると、1人の少女が姿を現す。それは、例のシャナンの恋人であった
「ほえぇ〜。見つかっちゃってたの?」
「なかなかの腕だが、私の目は誤魔化せなかったようだな。」
「3日前から私の周りをうろついていたようだが・・・。」
「何の用だ? シャナン王の恋人さん・・・確かパティと言ったか?」
「ちょっとした偵察よ。あなたのことを調べたかったの。」
「何故?」
「例の店でシャナンさまが、「彼は凄いよ」なんて言ってたから。その強さを確かめようと思ってね。」
「それに、あなたが言ったことが本当かどうかも確かめたかったし。」
「・・・で、結果は?」
「シロね。あなたが嘘を言ったとは思えないわ。」
「ただ、マーフィーにやられちゃったところを見ると強いかどうかは微妙よね。」
「あ、あれは・・・油断しただけだ。」
「どうだか・・・。」
「だったら、お前が自分で確かめてみるか?」
そう言ってサイゾーは剣に手を掛けた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。軽いジョークだってば〜。」
「まぁ、いいだろう。確かにマーフィーに負けているようでは強いとは言い難いからな。」
「ふぅ・・・。じゃ、レッツゴ〜。」
「・・・ちょっと待て。お前も鍛冶屋に来るのか?」
「いいじゃないの。細かいことは気にしない、気にしない。」
「あのなぁ・・・。」
という訳で、何故かパティを伴って鍛冶屋へ。
「悪いが他を当たってくれんか。」
「何故だ? この紹介状は間違い無くあんたの兄のものだが。」
「確かに本物じゃ。だが、ワシは人殺しの手助けはしとうない。」
「!?」
「あんたの持ってきた鎧には血が染み付いておった。」
「普通に使っていてもここまで酷いことはまず無い。おそらくあんたは、人殺しを生業としておるのじゃろう。」
「!!」
「そんな人間の為に鎧を作りたくはない、そういうことじゃ。」
「ちょっと! そりゃあんまりじゃないの?」
パティが口をはさんだが、サイゾーが手で止めた。
「・・・解った。迷惑をかけたな。」
そして、そのまま黙って店を出る
「ちょっと〜! なんで何も言わないのよ。」
「私が人殺しを生業にしていたのは事実だ。じいさんがああ言ってる以上、私には何も言えない。」
「でも、今は別にそうじゃないんでしょ? だったら!」
「過去を消すことは出来ない。そういうことだ。」
「もう・・・。」
「!! そうだ!」
パティが何か閃いたらしい。
「ん?」
「ふふ〜ん。ちょっと待ってて。」
そして、店の中に戻っていった。
(何をするつもりだ?)
そして、程無くしてパティが店から出てきた。
「OK! 了解だってさ。2日後に来てくれって。」
「な? お前・・・どんな手を使った?」
すると、パティは右手の人差し指を唇にあてるというどこかで見たようなポーズを取って、
「それは、秘密です。」
「・・・。」
「ふふ・・・。また、明日会いましょ。」
「あ、ああ・・・。」
そして、日は暮れる・・・。
--そして、対決の日--
その日は驚くほどの晴天・・・では面白くないので、豪雨ということになった。(ヲイ!)
そんな雨の中をサイゾーは鍛冶屋に向かって疾走していた。
普通の人間には歩くのも辛いような豪雨だったが、サイゾーにとってはそれほど苦にならなかった。
そして、それはシャナンとパティも同じだったようだ。
「やぁ、来たね。」
「4日ぶりですね。シャナン王。」
「そうだね。でも、この4日間のことはパティから大体聞いてるよ。」
「もちろん、君に気づかれていたこともね。」
「そうですか。では、あまり説明する必要はありませんね。」
「ああ、君は純粋に私と戦いたいだけみたいだね。・・・その理由、聞かせてもらえるかい?」
「自分の大切な人を守るための「強さ」が欲しい。それだけですよ。」
「ふふふ・・・良い理由だ。気に入ったよ。」
「では、手合わせ願えますか?」
「いいだろう。一つ戦ってみようか。」
そう言ってシャナンはサイゾーに木刀を手渡した。
「それは練習用のものだ。まだ2日前の傷が直っていないだろうから、真剣は辛いだろう?」
「・・・いいでしょう。これでいきましょう。」
「外は豪雨だけど、構わないね?」
「ええ、もちろん。」
そして、2人は豪雨の中に木刀で手合わせをすることになった。
背後で鍛冶屋のじいさんが「物好きな奴らじゃ・・・。」とぼやいていたが、2人には聞こえなかったようだ。
「じゃ、はっじめ〜。」
パティの掛け声で試合開始となった。
(・・・流石だ、スキが全く無い。これではどこから攻めたものやら・・・。)
逆にシャナンもサイゾーのスキが見つからなかったのだろう。
しばらくにらみ合いが続いた。
そのにらみ合いはいつまで続くかと思われたが、不意にシャナンが構えを崩す。
(!?)
サイゾーは罠の匂いを感じ取ったが、このままでは事態が進展しないため、あえて乗ってみることにした。
まっすぐにサイゾーは斬り込む。
もちろん罠ということが解っているので、全力で打ち込むようなことはしない。
案の定、シャナンはサイゾーの勢いを利用して背後を取ろうとする。
だが、その動作を予測していたサイゾーは素早く振り向きざまに斬り返す。
そして、2人はそのまま接近戦となり、斬り合いが始まった・・・。
2人はスピードでは互角だった。
ともに相手の斬り込みに遅れることなく反応し、隙を見ては一撃を繰り出そうとする。
しかし、2人には決定的に違う点があった。
サイゾーはシャナンに比べ、明らかに力で劣っていたのだ。
最初はそれほど違いが現れなかった。
しかし、それは次第に明確な差となって現れ出す。木刀を持つサイゾーの手が痺れはじめたのだ。
そして・・・。
「ぐあっ!」
痺れた手に力の乗った一撃を食らい、木刀を飛ばされてしまった。
不運なことに、天候が豪雨だったことも一つの要因となった。
「これまで、だね。」
「参りました。完敗ですよ。」
「ふふ・・・正直驚いたよ。ここまで私と斬り合いを出来た人物は久しぶりだ。」
「そう言っていただけると嬉しいですね。でも、負けたことに変わりはありません。」
「・・・サイゾー殿、一つ提案があるのだか。」
「何ですか?」
「私の剣術相手になるつもりはないかい?」
「それはまた・・・どういうことです?」
「私は気分転換によく剣術の稽古をするのだよ。」
「しかし、今のイザークには私の相手をできる者はいない。・・・まぁ、当然といえば当然だが。」
「だが、君なら私といい勝負ができそうだ。君にとっても良い話だと思うが、どうかな?」
「・・・期間はどのくらいです?」
「それは君に任せるよ。やめたくなったらいつでも言うといい。」
(これは願ってもないチャンスだ。)
(剣の腕を磨くなら、これほど理想的な状況はないかもしれない。)
「サイゾー殿、どうかな?」
「ええ。喜んで引き受けさせてもらいます。」
「そうか。歓迎するよ。」
「シャナンさまぁ〜。速く戻らないとカゼひいちゃいますよ〜。」
「ああ、すく戻るよ。」
そして、2人は鍛冶屋の中へ。
「なかなか見事な試合じゃったな。」
「負けたのに誉められてもな・・・。」
「まぁ、そう言うな。そうそう、お前さんの刀、鍛え終わっとるぞい。」
そしてサイゾーの手には久しぶりに愛剣が戻った。
(これは凄い! 以前の刀とは比べ物にならん。)
「じいさん、あんたの腕は大したもんだよ。こりゃいい仕事だ。」
「なに。『神剣バルムンク』に比べりゃ大したことはなかったわい。」
「ありがとう。大切に使わせてもらう。」
「ま、出来れば使わないのが一番じゃがの。」
「・・・確かに。」
「ではサイゾー殿、明日の昼にこの場所に来てくれ。」
そう言ってシャナンは地図を手渡した。
「明日、ここを発つつもりだ。遅れないように頼むよ。」
「わかった。」
「え〜? シャナンさまぁ〜。コイツも連れていくの?」
「ああ。彼には私の稽古相手になってもらおうと思ってね。」
「ふぅん・・・。」
(なんだか妙に嫌われているような・・・。)
(何か嫌われるようなことをしたか?)
しかし考えても答えは出ず、結局そのままシャナン達と別れた。
--イザークへ--
次の日、サイゾーは先に鍛冶屋(弟)に向かった。
シャナン達に会う前に鎧を貰っておくためだ。
「・・・あんたか。出来とるぞ。」
「すまない。意に添わない仕事をさせてしまって。」
「もういいんじゃよ。それに、今のあんたは人殺しの目じゃない・・・澄んだ目をしておる。」
「お前さんなら、この鎧を正しいことに使ってくれるじゃろう。」
「ありがとう。・・・ところで。」
「うん?」
「一体彼女にどうやって説得された?」
「・・・すまん。それは聞かんでくれ。」
「いや。言いたくなければそれでいい。世話になったな。」
そう言って店を出ようとした時、
「兄さん、一つ忠告しておいてやろう。」
「どうした?」
「あの女は怒らせないことだ。絶対にな。」
(パティの奴・・・一体どういうことをしたんだ?)
「ああ。覚えておくよ。」
そして、集合場所へ向かうサイゾー。
「あっ、来たよ〜。」
「すまない。ちょっと別の用があったから遅れてしまった。」
「なに、こちらも今来たところだよ。気にしなくていい。」
ここで、サイゾーは見なれない顔に気付いた。
「ところで、そちらは?」
「ああ。彼女は私たちの連れだよ。マナって言うんだ。」
「どうも、マナです。シャナン様とパティ様の身の回りの世話をしています。」
「ああ。こちらこそよろしく。」
「じゃ、れっつご〜!」
パティの掛け声で4人は一路イザークへと歩き出した。
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こうして、シャナンの稽古相手としてイザークへ向かうことになったサイゾー。
イザークで彼を待ちうけるものは何なのか?
次回、ユグドラル大陸の猛者たちがイザークに集う!
はたしてサイゾーの運命やイカに?
『サイゾーVSシャナン』(中編)に、「鈴凛、お小遣いをあげるよ。」(意味不明)
<製作後記>
※この色の文は作者ツッコミです。
今回の対決はマジメだなぁ。(爆)
すでにシャナンと対決しちゃいましたが、次回でも対決すると思います。
ひょっとするとセリスとかアレスが出てくるかも・・・。
あと、パティが鍛冶屋のじいさんに何をやったのか・・・それは秘密です。
各自で勝手に作っちゃってOKっすよ。
マナを活躍させたい今日この頃。(ぉ