へたれSS_第13回 へっぽこVSシリーズ第13弾「サイゾーVSシャナン」(中編)
--道中にて--

サイゾー達はすでにリボー城の近くまで来ていた。
目指すイザーク城はもう目と鼻の先だ。

途中、山賊に襲われるというアクシデントがあった。
意外なことにそこで活躍したのはマナである。
おとなしいプリーストと思っていたのだが、山賊に教われたときの対応は電光石火だった。
どこに隠し持っていたのか、『サンダー』の魔道書であっという間に山賊を倒してしまった。
しかも、
「大丈夫ですよ。この程度で死ぬようでは山賊など務まりません。」
と真顔で怖いことを言っているあたり、只者ではない。

(なぜ私の知っているシスターは皆こんな感じなのだろう・・・。)

また、イード砂漠の集落で心温まる光景があった。
ロプト信者の子供が他の子供と一緒に、外で元気に遊んでいたのだ。
かつてはロプト信者というだけで火あぶりだったと聞いていたので、正直なところサイゾーは驚いた。
セリス王が盟主となってから少しずつ何かが変わり始めているように感じた。

(いつか、どこでもこんな光景が見られるようになるといいな。)


そして、イザーク城近郊の村に差し掛かったとき・・・。
そこでは数人の若者が畑を耕しているという実にのどかな光景があった。
「・・・平和ですね。」
「ふふ。彼らはああ見えても、聖戦を共に戦った仲間なんだよ。」
「えっ?」
「彼らは私と違って聖戦士の血は引いていないが、実力は決して劣らない。」
「普段はああやって畑仕事に精を出しているが、甘く見ていると痛い目にあうだろう。」
「・・・見た目で判断するなということですね。」
「そうそう。マナがいい例だね。」

「おーい、マナ!」
「あっ、ディムナお兄ちゃん。」
「やっと帰ってきたんだな。」
「何言ってるの。たった1ヶ月だよ。」
「以外と長いもんだよ。1ヶ月ってのは。」
「そうかなぁ・・・。」
「あっ、そうそう。セリス王がイザークに来てるぜ。」
「えっ!?」
「早くお前に会いたかったんじゃないのか? 城にいるから行ってみな。」
「うん。ありがとう。」

「おい、ディムナ! 妹に会えて嬉しいだろうけど、仕事もしろよ。」
「やば。ロドルバンとアサエロがお怒りだ。じゃ、後でな。」
「うん。またね。」


--イザーク城--

ここは、イザーク城秘密の抜け道。
サイゾー達はそこを歩いていた。

「・・・なぜこんなところから入るんです?」
「私が城にいないことは一部を除いて秘密なんだ。」
「だから、正面から堂々と帰ることはできないんだよ。」
「なるほど。それで、ここは場内のどこに続いているんです。」
「私の部屋に直通さ。」
「それはまた・・・大胆な。」
「ほら、もう出口だ。」

そう言ってシャナンの自室に現れたサイゾーたち。
しかし、そこでは予想をはるかに越えた面々が待っていた。

「・・・よくもまぁ。これだけ揃ったものだ。」
シャナンが唸ったのも無理はない。そこにいた人物とは・・・、

グランベルの盟主、セリス。
アグストリア王、アレス。
トラキアの公女、アルテナ。
シレジア王、スカサハ。
ドズル王妃、ラクチェ。
ウェルダン王、レスター。

この6人だったのである。
はっきり言えば、大陸の北から南まであらゆる場所の王族が揃っていたわけだ。

「まったく・・・一体何の用だ?」

「いやー、どうしてもマナの顔が見たくなって・・・つい。」
「久しぶりにお前と手合わせをしたくなってな。」
「近くを通ったから寄ってみたんです。」
「父上を追って捜索中。」
「ヨハルヴァと大ゲンカしたからしばらく家出。」
「修道院の母上に会いに来たついでに。」

「・・・もっとマシな理由はないのか?」
「ま、硬いこと言わなくてもいいじゃないの。」
「そうそう。久しぶりの再開を喜ぶべきさ。」

「ところで、そちらに見なれない人がいますが?」
「・・・私のことかな?」
「ええ。あなたは?」
「彼はサイゾー。バレンシア大陸の忍だそうだ。かなりの腕前だよ。」
「へぇ。そんな風には見えないけどね。」
「レスター。見かけで判断しては行けない。彼は私と接近戦でいい勝負ができるんだよ。」
「そうそう。シャナン様と互角に斬りあってた人は久しぶりよね。」

ここでアレスが口をはさんだ。
「ほう、面白い。よければ私とお手合わせ願えぬか?」
「アレス。彼はいま長旅で疲れている。少し休ませてあげてくれ。」
「では、明日の午後でどうだ?」
「まぁ、そんなところか。サイゾー殿、よろしいかな?」
「ええ。かまいませんよ。」
「ただし、かれは黒騎士ヘズルの直系だ。甘く見ると死ぬことになるよ。」
「大丈夫。相手の実力も解らないほど愚かではありません。」

そして、さらにセリスの提案があった。
「ねぇ、シャナン。せっかくこれだけのメンバーが揃ったんだから、みんなで戦ってみない?」
「と、言うと?」
「8人でトーナメントをするんだ。で、優勝したら10000G進呈。」
「また唐突だな。だが、面白そうだ。」
「他のみんなは?」
「OK。」
「じゃ、決まりってことで。」

という訳で、「聖戦」の猛者たち+1が集まってのトーナメントが開催されることになった。
どうなることやら・・・。


--トーナメント報告--

メンバーはサイゾー,シャナン,セリス,アレス,アルテナ,スカサハ,ラクチェ,レスターの8人。
審判はなぜかパティとマナ。

<1回戦第1試合:サイゾーVSレスター>
レスターが馬を巧みに操って弓で攻撃するが、サイゾーが素早さを活かし、あっという間に間合いを詰めて勝利。
「ちくしょー。オレはもともと接近戦だと無力だからなぁ。」

<1回戦第2試合:セリスVSシャナン>
シャナンの『流星剣』が見切られているため互角の勝負となった。
結局、馬に乗って機動力の勝るセリスの勝利。
「シャナン、『神剣バルムンク』は使わなかったの?」
「お前が『聖剣ティルフィング』を使わない以上、こちらが使うのは反則だろう。」

<1回戦第3試合:アレスVSアルテナ>
『魔剣ミストルティン』と『地槍ゲイボルグ』の神器対決。
しかし、素早さで勝るアレスがいきなり『必殺』を出して終了。
「やはり素早さが足りないですね・・・。」

<1回戦第4試合:スカサハVSラクチェ>
FE聖戦における最強の兄妹対決。
ともに『見切り』を持つため、『勇者の剣』を有するラクチェが有利と思われたが、
間合いを取って『雷の剣』を巧みに使ったスカサハが辛勝。
「あーあ、負けちゃったか。ま、スカサハだからしょうがないかな。」
「へへ。もう『スカ男』なんて呼ばせないぜ。」

<準決勝第1試合:サイゾーVSセリス>
明らかにサイゾーの不利な試合。
しかし、『見切り』を持つセリスが油断していたためサイゾーが『必殺』を出して辛勝。
「そんな・・・。この僕が『必殺』を食らうなんて・・・。」
「ゲームシステムの違いだ。悪いな。」

<準決勝第2試合:アレスVSスカサハ>
『見切り』を持つスカサハ有利と思われたが、思うように『流星剣』が出せず、
結局『魔剣ミストルティン』を2回食らってアレスの勝利。
「『雷の剣』がほとんど効かないのは痛いよなー。」
「さすがだな。『魔剣ミストルティン』でなければ負けていただろう。」


--そして決勝戦--

以外にもサイゾーとアレスの決戦となった。
なお、『魔剣ミストルティン』ではハンデがありすぎるため、アレスの武器は『鋼の槍』ということになった。
サイゾーの武器はもちろん鍛冶屋で鍛えてもらった『刀』だ。

「黒騎士アレス・・・あなたとも一度手合わせしてみたかったんですよ。」
「それは光栄だ。だが、手加減するつもりは無いぞ。」
「もちろん。」

「じゃあ、はっじめー!」
パティの掛け声で勝負開始となった。

最初はにらみ合いから始まった。
お互いにこれまでの試合から相手の実力を解っているからだ。
両者とも相手の様子を見ながら隙をうかがう。

(アレス殿は槍だ。懐に飛び込まれれば弱い。まずは間合いを詰めなければ・・・。)
(だが、そう簡単には飛び込ませてもらえまい。機動力も相手が上だ。)
(しかし、リーチの差がある以上、懐に飛びこまなければ圧倒的に不利だ・・・。)

(!! そうだ!)

サイゾーは不意に構えを崩した。
両腕を下げたその構えは、構えを崩したというよりは無防備になったと言った方がいいだろう。

「なるほど。私が攻撃する隙を利用して懐を取ろうというわけか。」
「面白い。その賭け、乗ってやろうではないか。」

アレスは一直線にサイゾー目掛けて走る。
『黒騎士』の名に恥じない凄まじいスピードだ。
目にも止まらぬ速さで繰り出した一撃・・・しかし、それがサイゾーを捉えることはなかった。

「なっ!? 消えた?」
その攻撃が当たるかに見えた寸前、サイゾーの姿が消えてしまったのだ。

「・・・上かっ!」
「遅い! もらった!」

サイゾーはアレスの攻撃を食らう寸前にジャンプしていたのだ。
そして、そのまま落下速度に乗った重い一撃を繰り出す。

「くっ!」
アレスはとっさに槍で防ごうとした・・・が、サイゾーの一撃は槍を真っ二つに斬り、さらにアレスの肩に襲いかかる。

「ぐあっ!」
「くそっ、浅いか。」
アレスの槍を斬ったことで威力が減少してしたようだ。

「槍が折れては勝負になるまい。これまでだ、アレス殿。」
「・・・ふふふ。何を甘いことを。戦場では武器がなくとも戦わねばならぬときがあるというのに。」
「あくまで続けると?」
「無論!」

そして再び戦闘が始まった。
だが、槍が折れてしまったアレスは剣と同程度のリーチしかない。
リーチが同じであれば速さの点で明らかに剣の方が有利である。
流石のアレスもサイゾーに押されていた。
だが、不思議なことにアレスは常に余裕の表情を崩さない。
それは何かを狙っているようにも見えた・・・。

サイゾーはトドメの一撃を狙っていた。
今度は外すわけにはいかない。
そして、そのチャンスは程無くして訪れた。
アレスがサイゾーの連続攻撃に耐えられずバランスを崩したのだ。

「もらった!」
「・・・フッ、かかったな!」

アレスはそう言うと左腕を前面に出した。

「なにっ?」

しかしサイゾーはトドメの一撃を繰り出していたため止まることが出来ず、そのまま腕に斬りこんだ。
そして、サイゾーの『刀』はアレスの腕に深々とめり込んだ・・・。

「し、しまった! これでは『刀』が抜けない。」
「肉を斬らせて骨を絶つ・・・これで終わりだ!」

アレス渾身の一撃がサイゾーを襲う。

「ぐはぁっ!」
そして、サイゾーは気を失ってしまった。

「勝負あり! 勝者、アレス。」
マナの一言と共に2人の周囲に皆が集まる。

「マナ、すぐに手当ての準備を!」
「はいっ。」

「まったく・・・アレスも無茶をするよ。」
「ふふ、『聖戦』の時はもっと深い傷も負った。この程度では大丈夫だ。」
「でも、凄い試合だったよ。アレスがそこまでするなんて。」
「さすがにここまで苦戦するとは思わなかったぞ。大した男だ。」

「セリス、サイゾーもかなりの傷だ。早く医務室へ行こう。」
「わかった。」

こうして決勝戦はサイゾーが善戦するも、アレスの勝利となった。
そして・・・。

--医務室にて--

サイゾーが気付いたのは翌日の昼のことだった。

「う、うう・・・。」
「あっ、気がつきましたね。」
目の前にいたのはマナだ。

「・・・ここは?」
「ここは王宮の医務室です。あなたはほぼ丸一日眠っていたんですよ。」
「そうか・・・アレス殿の一撃を食らって・・・。」
「ところで、他の皆は?」
「シャナン様は仕事で走り回ってます。」
「それと、セリス様とアレス様以外の方はもう出発されました。」
「残念だ。見送り出来なかったか。」
「大丈夫ですよ。皆さん、あなたの事を誉めてましたから。」

ここで医務室に来訪者があった。セリスとアレスだ。
アレスは左腕に包帯をしており、サイゾーと戦った傷が痛々しい。

「あっ、目が覚めたんだね。良かった。」
「傷の方は大丈夫か?」
「ああ。こっちの傷はそれほど深くない。アレス殿の方こそ大丈夫か?」
「フッ、この程度の傷で倒れては『黒騎士』の名は務まらぬ。心配するな。」
「僕らももうすぐここを出発するんだ。残念だけど、お別れだね。」
「ああ。少しの間だったが楽しかった。また、会えると良いな。」
「そうだね。その時まで、元気で。」
「そちらもな。」

「ところでサイゾー殿、これを受け取ってくれ。」
そういってアレスが出したのは、トーナメント賞金の10000Gだった。

「!? しかし、これはアレス殿が貰うべきでは?」
「どのみち国へ帰ればはした金しにからならん。それならば、サイゾー殿に使ってもらった方が有意義だ。」
「ですが・・・。」
「しばらくこの国に留まるのであろう? 仕度金と思ってもらえればいい。」
「・・・わかりました。受け取りましょう。」
「うむ。またいつか、貴公と手合わせしたいものだな。」
「ええ。楽しみにしていますよ。」

「じゃあ、出発するよ。・・・マナ、仕度は出来てる?」
「ええ。もちろん。」
「うん? マナ殿もセリス殿について行くのか?」
「あれっ? マナ、サイゾーさんに言ってないの?」
「あ。そういえば言ってないかも・・・。」
「どういうことだ?」
「うん。マナは僕の・・・恋人なんだ。」
「セリス殿の恋人? それは・・・つまり・・・。」
「マナはグランベルの王妃だよ。」
「・・・なんとまぁ。」

(と言うか、いいのか? グランベル王妃がイザークの救護室で余所者の手当てをしていて・・・。)
(・・・どうもこの大陸の者は皆オープンな性格をしているなぁ。)

「じゃあ、これで。」
「うむ。また会えるといいな。」
「では、元気で。」

そして、セリス,アレス,マナの3人は城を出発した。
部屋にはサイゾーだけが残る。

「・・・サイゾーさん。」
「ミロア殿か。何か?」
「いえ・・・。先程は残念でしたね。」
「そうだな。まだまだ詰めが甘いようだ・・・。」
「・・・デューテ達の方は大丈夫でしょうか。」
「心配性だな。もうデューテは大丈夫だから私に付いて来たのではないのか?」
「ええ。でも、いざとなるとやはり心配になってしまうものです。」
「順当に行けば今頃は『リゲル城』辺りだ。もう、バレンシアの長い戦争も終わるだろう。」
「なに、心配はいらない。私達が帰る頃には、すっかり落ち着いているさ。」
「そうですね。そう願いましょう。」

ここで新たな訪問者が現れた。シャナンだ。

「サイゾー殿、目が覚めたようですね。」
「ああ。だがしばらくは安静だそうだ。これでは稽古相手が務まらぬな。」
「黒騎士アレスと戦ったのだ。その程度で済めばまだマシな方だろう。」
「心配するな。どのみち焦る必要もないのだから。」
「かたじけない・・・。」
「まずは傷を治すことだ。その後のことはまた考えればいい。」
「おっと、今から会議だったんだ。ではサイゾー殿、また後日。」
「ええ。頑張ってください。」

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ひょんなことからトーナメントに参加したサイゾー。
しかし、善戦空しく黒騎士アレスの前に敗れ去った。

そして、これからはシャナンの剣術相手としての日々が始まる・・・。

イザークでの日々は彼に何をもたらすのか?
次回、『サイゾーVSシャナン』(後編)に「花穂はドジだけど、見捨てないでね。」(ぉ


<製作後記>この色の文は作者ツッコミです。 TSの影響で遅筆になっています。ゴメンナサイ。(^^; ていうか今回は『サイゾーVSアレス』ですね。(爆) テキトーに進めるとダメという一つの例ですな。 あと、今回は登場キャラが多いこと多いこと。 平民も多いですねぇ。(笑) 10人以上新登場で出てるし・・・。 でも、今回限りの一発キャラも多いのであしからず。 実は、『デイジーVSカレン 女の戦いU』という企画もあったんですが、 サイゾーの出番がなくなるのでやめにしました。 多分もう書くこともないでしょう。(笑)

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