へたれSS_第14回
へっぽこVSシリーズ第14弾「サイゾーVSシャナン」(後編)
--イザークでの日々--
シャナンの稽古相手としてイザーク城に在住することになったサイゾー。
まず問題になったのはサイゾーの待遇だった。
シャナンはサイゾーを客人として扱うつもりだったのだが、これはサイゾーが納得しなかった。
普段から身体を動かしていないと落ち着かないタイプなのだから、これは当然だろう。
いろいろとすったもんだの挙句、結局サイゾーがシャナンの警護をするということで落ち着いた。
これならサイゾーの身なりも問題無いし、稽古の時にいちいち呼ぶ必要もないので便利ということもあった。
もっとも、シャナンに用心棒が必要なのかという意見もあったが・・・。
こんなわけでシャナンの用心棒を引き受けることになったサイゾー。
しかし、実際に警護を始めてみて驚いた。
間者の数が非常に少ない・・・言ってしまえばヒマなのである。
しかし、これも考えてみれば当然のことと言えた。
今のユグドラル大陸にいる王たちは、皆『聖戦』を共に戦ってきた仲間なのだから。
おそらくシャナンに対する間者はイザークの心もとない貴族の仕業なのだろう。
(平和なのは良いが、平和過ぎるのも問題かも知れぬな・・・。)
(おっと、こんなことを思ってはダメだ。やはり平和が一番。)
そして、サイゾーの目的である剣の稽古は、1日に2回あった。
日によって若干の変化はあったが、基本的には朝食前と昼食後だった。
シャナンもサイゾーもスピードを信条とするタイプだったため、短時間の中でもその内容は壮絶と言えた。
武器も練習用の木刀だったが、時には一方が怪我をして医務室に運ばれることもあった。
と言っても、ほとんどはサイゾーが運ばれていたのだが・・・。
しかし、2人が本気で稽古をしていたからこそサイゾーの上達も早かった。
時にはイザークを訪れた他の人物と剣を交えることもあった。
その中にアレスやセリスがいたことは言うまでも無いだろう。
そして、瞬く間に半年の月日が流れて・・・。
--予兆--
「隙あり!」
「まだまだっ!」
「これならどうだっ!」
「甘い!」
「ならばこっちだ!」
「なんのっ!」
イザーク城の片隅では、すでに名物となりつつある剣の音が響いていた。
この半年でサイゾーの腕は見違えるほど伸び、またシャナンも腕を上げていた。
イザークでもサイゾーの名は有名となり、城内ではいつも話題に上っていたほどだ。
「・・・今日はここまでかな。」
「・・・ハアハア。もうそんな時間ですか。」
「しかしどんどん腕を上げていくものだ。私が地面に倒れる日もそう遠くないかも知れんな。」
「感謝してますよ、シャナン殿。私がここまで伸びたのはあなたのおかげだ。」
「いや、伸びたのはサイゾー殿自身の結果だよ。私はきっかけを与えているに過ぎない。」
「では、また明日に。」
「ああ。」
そして、シャナンは仕事に戻っていく。
サイゾーも少し休んだあとでシャナンの警護だ。
だが、休んでいる時に不意に話し掛ける声があった。
「サイゾーさん、よろしいですか?」
「ミロア殿? 久しぶりですね・・・どうかなされたのか?」
「いえ・・・一つ話しておきたいことがあるのです。」
「何でしょう?」
「旅立ちの予感がするのです。おそらく、あなたは近いうちにイザークを出ることになるでしょう。」
「何故、そう感じるのですか?」
「あなたには話していませんでしたね。・・・私は魔道士であると同時に占い士としても有名だったのです。」
「つまり、占いの結果ということですか?」
「ええ。私の占いは道具を必要としないので久しぶりに占ってみたのです。その結果が・・・」
「私の旅立ちを示した、と。」
「その通りです。」
「占いが示したものは『訪問者』と『決闘』そして『別れ』でした。まず、近いうちに『訪問者』が現れるはずです。」
「次に『決闘』ですか。」
「『決闘』とはおそらくシャナン殿とサイゾーさんのことを言っているのでしょう。」
「そうでしょうね。そして『別れ』・・・つまり私がイザークを去ると。」
「本当はあなたに言うべきか迷いましたが・・・。」
「いや、気にしないで欲しい。事前に心構えを持っておいたほうが良いだろう。」
「・・・それに、少々イザークに長居をしすぎたのかもしれぬ。」
(そうだ・・・バレンシアにいた頃に比べると、この国は居心地が良すぎる・・・。)
(もう、潮時なのだろう・・・。)
そして3日後、その時は来た。
--訪問者--
その日はいつもと何も変わらない日のはずだった。
しかし、昼食後にシャナンと剣を交えてきた時、それはやってきたのだ。
そこに現れたのは、単独で空を飛ぶ一匹の竜だった。
「!? シャナン殿、あれは?」
「・・・竜騎士? まさか、アルテナ殿か?」
そして、その竜はゆっくりと降りてくる。
竜に乗っていたのはシャナンの予想通り、トラキアの公女ことアルテナだった。
「・・・お久しぶりです。シャナン殿。」
「こちらこそ久しぶりだ。しかし、アルテナ殿自らここに来られたということは、トラキアで何かあったのかな?」
「うむ。『剣王』シャナン殿の力を借りたくてな。」
「それは穏やかではないな。・・・いったい何が?」
「弟が・・・リーフ王が失踪したのだ。」
「それは、どういうことだ?」
「・・・シャナン殿は『呪われた姫君』をご存知だろう。」
「ああ。サラ姫のことだね。たしか、リーフ王は彼女に想いを寄せていたはずだ。」
「そのサラ姫がいなくなったのだ。しかも、誘拐の類ではなく、自分の意思でいなくなったらしい。」
「・・・それで、リーフ王もその後を追っていなくなったと?」
「そういうことだ。今、国の信頼できる者たちが秘密裏で捜索している。」
「しかし、それだけなら私の力は必要ないだろう。もう一つ何かあるはずだ。」
「さすがシャナン殿・・・実は、今回の件は裏で『雷神』が関与している。」
「なっ!? 彼女は、死んだはずでは・・・。」
「無論私もそう思っていた。しかし、私自ら調べたところ、確かに『雷神』は生きていた。」
「つまり、本人を見たと?」
「そうだ。私では彼女に勝てないことは解っているからそのまま逃げてきたがね。」
「それで、私の力を借りたいわけか・・・。」
「どうだろう、力を貸していただけるか?」
「だが、最近はイザークの情勢が不安定で、私も下手に動けないのだ・・・。」
「そうか・・・。」
「すまない・・・。」
ここで、傍観していたサイゾーが口を開いた。
「シャナン殿、アルテナ殿。その役、私にさせてくれぬか?」
「サイゾー殿が?」
「正直に言おう・・・私は、近いうちにイザークを去るつもりだ。」
「!?」
「ちょうど良い機会だと思うのだ。イザークを去る上でも、また自分の実力を試す意味でも。」
「そうか・・・もう半年にもなるからな。確かにサイゾー殿はイザークに長く居すぎたのかも知れん・・・。」
「アルテナ殿、どうだ? サイゾー殿を連れていっては。」
「ふむ・・・だが相手はあの『雷神』だ。彼は『雷神』を知らないだろう。大丈夫か?」
「アルテナ殿が不安なのも無理はないか・・・よし、こうしよう。」
「明日、私とサイゾー殿で真剣勝負をする。そこでアルテナ殿に判断してもらおう。」
「なるほど。いいでしょう。」
「・・・やはり『決闘』をすることになりましたね。」
「ふっ、手加減は無用だぞ。今日は早く休んでおくことだな。」
「望むところですよ。」
そして、サイゾーとシャナンが雌雄を決するの時は来た。
--決闘--
翌日は気持ちの良い晴天となった。
その日の午後、イザークの訓練場には城内のほとんどの人間があつまっていた。
もちろん、シャナンとサイゾーの試合を見物に来ているのである。
「まず、ルールの確認をしておこうか。」
「時間無制限、どちらかがギブアップか戦闘不能になるまで、武器は共に『鉄の剣』。これ以外は何でもあり。」
「うむ。」
「それと、今回の試合の審判はアルテナ殿に頼もうと思う。」
「私が? ・・・わかった、引き受けよう。」
「すまないな。」
「しかし、2人ともいいのか?」
「何がだ?」
「いくら『鉄の剣』といっても立派な真剣だ。下手をすれば怪我では済まんぞ。」
「ふふ・・・『聖戦』を戦ってきたアルテナ殿のセリフとも思えないな。」
「そう。ここで死ぬようでは所詮それまでの人物ということだ。」
「ふっ・・・なるほどな。」
「では、位置についてもらおうか。」
「よし。」
「OK。」
「いくぞ・・・真剣勝負、始め!」
そして、試合が始まった。
しかし、観客の期待に反して2人は動く気配がない・・・。
それもそのはずである。
2人ともこれまでの稽古で相手の手の内がほとんど解っているのだ。
下手に動けばあっさり勝負がついてしまうだろう。
「ほう・・・あのシャナン殿が全く動けないとは。サイゾー殿も只者ではないな。」
(ダメだ・・・動かなければ負けることはないが勝つことも出来ない。)
(だが、どうする? 私の動きは全て知られている・・・。)
(裏をかく程度ではダメだ。・・・裏の裏をかかなくては。)
(・・・よし! いくぞっ!)
サイゾーは一瞬だけ構えを崩した。
シャナンも動くきっかけが欲しかったのだろう。その隙を見逃さずに動く。
シャナンはサイゾーに向かって一直線に走る。
そのまま真っ直ぐに斬り込むかに見えたが、直前でサイゾーの視界から消える。
(そうだ。シャナン殿は正面から斬り込んだりしない。)
(必ず側面・・・それもほとんどが右から来る!)
そして、サイゾーは素早く反応し、身体を右に向ける。
予想通り右から斬りこんできたシャナンの一撃を受け流す。
(次は・・・跳んで背後に回ろうとするか・・・あるいは下がって間合いを取るはず。)
(だが、ここで間合いを取るはずが無い。跳んで背後に回るはずだ!)
サイゾーの予測通りシャナンは跳んだ。そして振り向きざまに一撃を繰り出す。
だが、サイゾーも素早く反応して受け止める。
(よしっ! ここでしばらく接近戦を挑んでくるはずだ。)
ここでもサイゾーの予測に違わない行動をシャナンは取った。
以前の接近戦ではシャナンのパワーに押されていたサイゾーだが、この半年でサイゾーのパワーも上がっている。
シャナンのパワーとスピードに負けることなくサイゾーも応戦していた。
(問題はこの次・・・これまでこの状態からシャナン殿が取った行動は3つある。)
(1つ目は、後ろに跳んで間合いを取る。)
(2つ目は、姿勢を低くして繰り出す昇り切り。)
(そして3つ目は、オードに伝わる必殺剣・・・『流星剣』だ。)
(間合いを開けても振り出しに戻るだけだ。恐らくこれは無い。)
(とすると・・・どっちだ?)
しかし、シャナンはサイゾーに考える時間を与えなかった。
シャナンが不意に姿勢を低く取ったのだ。
(!! 昇り切りかっ!?)
だが、シャナンはサイゾーの予測を超える行動に出た。
姿勢を低くした状態から跳んだのである。
そう、シャナンは姿勢を低く取ったことにより、より大きい跳躍力を生み出したのだ。
そして、その状態から落下速度を利用しての重い一撃を繰り出す。
サイゾーは予想外の行動に反応が遅れ、その一撃をかわせなかった。
「ぐっ!」
想像以上の衝撃に吹き飛ばされるサイゾー。
さらに、体制を立て直す間を与えずシャナンの攻撃が来る。
「正しき心を剣に乗せる時、必殺の刃は完成する」
「速きこと流星のごとく、その剣は緑の輝きを成す」
「オード家究極奥義・・・『流星剣』!」
(まずい・・・この体制ではかわしきれない。)
(・・・まてよ。『例の技』ならあるいは・・・。)
(だが、出来るのか? ・・・いや、やるしかないっ!)
サイゾーは体制を立て直さずに剣を構えた。
「・・・剣の刃、赤く輝く時、それは太陽の輝きとなる。」
「その刃を受けし者、汝の生命を我が身へと引き渡さん。」
「『太陽剣』!」
「なにっ!?」
さすがのシャナンも意外な一撃に困惑し、剣が鈍る。
その隙を逃すサイゾーではなかった。
素早く体制を立て直し、その後のシャナンの連続攻撃をなんとか受け流す。
必殺の『流星剣』をかわされてしまい、シャナンはひとまず間合いを取った。
「いつの間にそんな技を? ・・・そうか、パティだな。」
「本当はまだ練習中なんですがね。」
「ふっ、だがそうでなくては面白くない。」
そして、またにらみ合いとなってしまった。
(ここまでの打ち合いでかなり消耗してしまったが、それはシャナン殿も同じはず。)
(・・・次が最後の一撃だな。)
「ふむ、次で決まるな。」
そう言ったアルテナの独白が合図であったかのように2人は動いた。
2人とも小細工はしない、真っ向からの一撃だった。
純粋に速い方が勝つ、そんな剣技だ。
そして・・・
「勝負あり!」
勝ったのはサイゾーだった。
サイゾーの一撃はシャナンの右肩に食い込んでいたのだ。
シャナンの剣は、サイゾーにあとわずかというところで止まっていた。
「シャナン殿、どうして・・・?」
「ふっ、何も言うな。サイゾー殿が勝ったのだ。もっと嬉しそうな顔をしたらどうだ?」
「・・・。」
そして、2人はひとまず医務室に運ばれた。
手当てが一通り終わり、シャナンがサイゾーに話し掛けた。
なお、部屋には2人のほかにパティと医師がいる。
「しかし私に隠れて『太陽剣』を練習していたとはね。」
「シャナン殿の『流星剣』に対抗できる技が欲しかったんですよ。」
「でも、サイゾーって凄く覚えるの早かったわよ〜。さっきの試合を見る限りでは、もう大丈夫よね〜。」
「なるほど。最近パティがあまり構って来ないと思ったら、そういうことだったのか。」
「えへへ〜。」
ここでアルテナが入ってきた。
「シャナン殿、肩は大丈夫か?」
「当分は右腕が満足に動かぬだろうな。だが、一生そのままと言うわけではないそうだ。」
「そうか・・・不幸中の幸いと言うやつだな。」
「ところで、サイゾー殿を連れていく件はどうする?」
「うむ。彼なら大丈夫だ。では、連れて行くことにしよう。」
「ではアルテナ殿、よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。」
「明日の早朝に出発ということにしよう。こちらも一刻を争う事態なのでね。」
「わかりました。では、また明日。」
「ああ。今日はゆっくり休んでおくことだ。明日からは満足に寝るのが難しくなるぞ。」
そして次の日・・・。
--別れ--
その日も良い天気だった。
意外なことに、城に住むほとんどの者がサイゾーとアルテナの見送りに来ていた。
さらに、付近の村に住む者たちもサイゾーの見送りに来てくれていたのだ。
「・・・私の為にこれほどの人たちが・・・。」
「おや、君はイザークでも有名な人気者なんだよ。ひょっとして知らなかったのか?」
「まぁ、好かれていることは知っていましたが、さすがにここまで人気者だとは思ってませんでしたね。」
「よく付近の村で畑仕事を手伝ったりしていただろう。そういう気さくな所がウケたんじゃないかな。」
「ま、サイゾー殿ならどこに言っても人気者になれるさ。私が保証するよ。」
「さて、彼らに別れのあいさつをしてやるんだな。」
(・・・。)
「私はあまり口が上手くない。だから、言うことは一つだ。」
「・・・いつか必ずまたイザークに来る。だから・・・それまで皆、元気で!」
そして、見送りに来ていた人々から一斉に拍手が上がった。
「上出来だ。・・・では、ひとまずお別れだな。」
「せっかく私が『太陽剣』教えたんだから、そうカンタンにくたばっちゃだめよ。」
「ええ。また、いつの日にか会いましょう!」
そして、サイゾーはアルテナと共に飛竜に乗りこむ。
「いくぞ! サイゾー殿。」
「ええ。」
アルテナとサイゾーを乗せた飛竜は空高く舞い上がった。
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こうして、アルテナの訪問によりサイゾーはイザークを去ることとなった。
いつの日にか、再びイザークに訪れることを約束して・・・。
そして、サイゾーはアルテナと共に新たな地へと旅立つ。
アルテナが語った『雷神』の真実とは?
なぜサラ姫は失踪したのか?
そしてサラ姫を追うように失踪したトラキア王リーフは・・・。
さまざまな思いが交錯する中、サイゾーが見たものは?
ユグドラル大陸編も大詰め!
次回、『サイゾーVSイシュタル』(前編)に、「いきなりバイバイはないよね・・・。」(by山田太郎)
<製作後記>
※この色の文は作者ツッコミです。
TSの影響でますます遅筆です。(^^;
今回はけっこう気合入ってたんじゃないですかね。
わりと満足してます。
最後のあたりはダメダメですが。(爆)
次回、やっとサラ&イシュタルの出番。
コレが一番書きたかったんですよー。(喜)
次もお楽しみに。(^^)