へたれSS_第19回 へっぽこVSシリーズ第19弾「DTA VS PTA」(前編)

※イキナリですが今回のタイトルが変更になりました。(笑)
※ティアリングサーガ出演メンバー総覧

リュナン,ホームズ,メーヴェ(エンテ),カトリ,シゲン,シエラ
バーツ,リチャード,ティーエ,サーシャ,エストファーネ

詳しい設定はキャラ紹介にて

-ユトナの戦士たち- ここは、『アカネイア大陸』へと向かう船の中。 サイゾーは、見慣れぬ容姿の面々と共に食事を取っていた。 「ふむ、そちらの男の里帰りというわけか。」 「おうよ。アカネイア大陸に帰るのは久しぶりだぜ。」 「しかし、何だってそんな大人数なんだ?」 「うーん、まぁ・・・バーツ以外は一種の暇つぶしみたいなものかな。」 「おいおい、リュナン。それを言っちゃあミもフタもないぜ。」 「でも、ユトナ大陸が退屈になったから出てきたのは本当よね。」 「そうだぜ。どうせ当分は平和なんだから、楽しまなきゃそんさ。お前もそう思うだろ、シエラ?」 「あら、私はシゲンと一緒ならどこでもいいわよ。」 「シエラ、シゲン! おまえらところ構わずノロケてるんじゃねぇ!」 ・・・なんとも賑やかな集団である。 さて、なぜサイゾーが彼らと食事をとっているのかというと・・・。 -回想モード開始- サイゾーがアカネイア大陸行きの船に乗ってから1週間ほど経った時のことである。 日課として瞑想していたサイゾーは、不意に船内が騒がしくなるのを感じた。 「・・・客の一人を人質に・・・」 「・・・犯人は金を要求・・・」 「・・・とりあえず警備兵を・・・」 そんな声が聞こえてきた。 どうやら、誰かが船の中で人質を取り、身代金を要求しているらしい。 無視するのも何なので、サイゾーは声のする方へと向かっていった。 「だから言ってんだよ! 10万G用意しろってな!」 「いくらなんでも、そんな大金がすぐに用意できるわけがない。」 「ケッ、乗客の持ち合わせを集めりゃ、その程度すぐに集められるはずだ。」 人質を取って叫んでいるのは、中年の男性だった。 警備兵の隊長らしき人物と言い争っている。 だが、むしろサイゾーは人質となっている女性にこそ興味を惹かれた。 回りは犯人に注目しているので気づかないようだが、人質の女性はこんな状況にもかかわらず まったく取り乱した様子がない。 しかも、その風格や容姿からは、彼女が単なる一般人ではないことが容易に読み取れた。 「あの・・・一つ忠告してあげますけど。」 不意に人質の女性が口を開いた。 「あん? お前、自分の立場わかってんのか!?」 「あなた・・・このままだと、リチャードに殺されますよ。」 「黙れって言ってんだッ!」 男が手にした刃物を人質の女性に向けて振り下ろそうとした。 (!! 危ない!) サイゾーは犯人の男に向かって駆け出す。 だが、自分が駆け出すとほぼ同時に、別の人影が2人、人ごみから飛び出すのが見えた。 (!?) しかし、今更止まるわけにはいかない。 素早く犯人の男に詰め寄り、手にした刃物を奪う。 ところが、刃物を奪った途端に、自分に対して剣を振り下ろされる気配を感じた。 とっさに奪った刃物で受け止めようとするサイゾー。 キィーン 激しい金属音が鳴る。 だが、サイゾーは全く手応えを感じなかった。 よく見ると、振り降ろされた剣を受け止めたのは、もうひとりの見知らぬ男の剣だった。 「あぶねえー。リチャード! てめぇ何やってんだよ。」 「ふん、知ったことか。いきなり割り込んできた方が悪い。」 「お前なぁ・・・。」 どうやら、このリチャードと呼ばれた男が犯人に切りかかろうとしたところ、 サイゾーが間に入ってしまったということらしい。 しかし、いきなり切りかかろうとするあたり、ずいぶんと物騒な人物ではあるが・・・。 「あの・・・大丈夫でしたか?」 見れば、いつのまにか人質だった女性は開放されていた。 さらに犯人の男は後ろ手に縄で縛られている。 (この女性の仕業だろうか? だとしたら大した早業だ・・・。) 「ああ。大丈夫だ。」 「助けていただいてありがとうございました。」 「ふん、余計なことをしてくれたな。」 「リチャード! ・・・ごめんなさい。彼はああいう人だから。」 「別にいいさ。世の中いろんな人間がいるものだ。」 「へぇー、言うねぇ。気に入ったぜ。」 ここで、新たな人物が乱入した。 「・・・ホームズ、ちょっといいかい?」 「うん? どうした、リュナン。」 「あの・・・この場所で話を続けるのはどうかと思うんだけど。」 よく見れば、周囲にはあふれんばかりのヤジ馬が集まっていた。 女性客の中には「キャー、こっち向いてー!」と叫んでいる者もいる。 これでは一種のアイドルだ。 「・・・そうだな。ちょうどメシ時だし、続きは食堂でやるか。」 「じゃ、決まりだね。」 そのまま食堂に向かうと思われた一行だったが、不意にホームズがサイゾーを向いた。 「なぁ、おめぇも一緒に来るか?」 「えっ?」 「ホームズ、この男も誘うというのか?」 「うるせえ。てめぇの意見は聞いてねえよ。」 「どうだい?」 サイゾーとしてはこの一行が何者なのかが気になった。 それに、そろそろ船旅にも飽きてきた頃だったので、良い気分転換にもなるだろう。 「かたじけない。ご一緒させてもらおう。」 そして、話は冒頭にもどる。 -回想おしまい- そんな訳で、サイゾーは『シーライオン』の一行と一緒に食事を取っていた。 彼らの話を簡単にまとめるとこんな感じになる。 彼らの住む大陸の名は『ユトナ大陸』という。 ユトナ大陸ではつい最近まで『ユトナ英雄戦記』と言われる戦乱があった。 表向きには、教皇グエンカオスの暗躍による戦乱となっているが、実際には複雑な事情があるらしい。 様々な思惑が交錯する中、教皇グエンカオスはついに暗黒神ガーゼルを復活させる。 しかし復活が不完全であったため、ユトナの聖剣を持つ4人の勇者に倒されたということだ。 ちなみに、4人の勇者のうち、3人はサイゾーの目の前に居たりする。 そして『ユトナ英雄戦記』が終結し、大陸にも平和が戻ったので、信頼のおける部下に国を任せて 自由気ままな旅に出てきた、といったところだそうだ。 「セネト様とネイファ様も来れば良かったのにね。」 「ま、セネトは根がマジメ過ぎるからな。こういうのは苦手だろうぜ。」 「それに、セネトが残っているから安心して旅ができるってのもあるしね。」 「確かに。」 そんなこんなで食事も終わったところで、ホームズが切り出した。 「さて、食後の運動といくか。」 「ふっ、きょうこそ貴様を地面に叩きつけてやろう。」 「けっ、よく言うぜ。オレに勝てたことが無いくせに。」 「私は馬がないと本気を出せないのでな。」 「あー、そうかい。そりゃよかった。」 ・・・やっぱり仲の悪いホームズとリチャードだった。 「サイゾーさんも一緒にどうですか?」 「こちらこそ願ってもない。ご一緒させて頂こう。」 「お前さんも来るのかい? 面白そうだな。」 「・・・カッコつけてドジらないようにね。」 そんなこんなで、一行は船内の訓練場へ。 -訓練場にて- 訓練場とはいっても船内なので、それほど広くはない。 しかし、適度に障害物を置いてあったりして意外に実戦向けである。 また、訓練場には結界が張ってあり、魔法の使用もOKになっている。 ちなみに、使用する武器は木製であり、真剣は不可だ。 「で、誰からやるんだ?」 「無論、貴様と私だ。」 まずはホームズとリチャードが打ち合うことになった。 2人とも障害物を利用したりはせずに、真っ向から打ち合う。 木のぶつかり合う音が訓練場に響き渡った。 (・・・なるほど。2人ともかなりの腕前だな。) (しかし・・・) カキーン 勝負は意外にあっさりついた。 ホームズの一撃がリチャードの剣(木製)を吹き飛ばしたのだ。 「結局口だけだな。」 「くそっ・・・。」 「あきらめな。馬がなけりゃお前に勝ち目は無えよ。」 「・・・船から下りたら覚えていろよ。」 「ふっ、楽しみにしてるぜ。」 そんなこんなでまずは終了。 「次はどうする?」 「リュナン、俺が行こう。」 そう言ったのはシゲンだ。 シゲンはサイゾーに近づき一言いった。 「どうだい、俺とひとつやってみないか?」 「お主と? ・・・いいだろう。面白そうだ。」 「決まりだな。」 ということで、今度はシゲンとサイゾーの打ち合いと決まった。 -サイゾーVSシゲン- 2人の男が静かに対峙する。 先に動いたのはシゲンだった。 「まずは、小手調べだ。」 素早くサイゾーに近づき、連撃を打ち込む。 サイゾーもこれを難なく交わす。 シゲンは頭上,左右,足元と様々な角度から仕掛けていくものの、全てサイゾーに交わされていく。 一見するとサイゾーが優勢に見えた。 しかし・・・ いつのまにか、サイゾーは自分が障害物を背にしていることに気がついた。 (!! しまった!) おそらくシゲンはこれを狙っていたのだろう。 その隙を見逃さずに渾身の一撃を放つ。 たとえ避けたとしても、背後に障害物があれば次の行動を読まれやすい。 勝負はついたかに見えたが・・・。 「なにっ?」 サイゾーはシゲンの予想を裏切り、後ろに跳んだ。 そして障害物を踏み台として、反動でシゲンに斬りかかる。 予想外の事態にひるむシゲン。 今度はサイゾーが攻勢に出る番だった。 シゲンさながらに素早い連撃を繰り出すサイゾーと受け流すシゲン。 不意にシゲンが後ろに大きく跳び、間合いを取る。 「こうなったら奥の手だぜ。」 シゲンは剣の握りを逆に持ちかえ、腰を低くする態勢を取った。 いわゆる『居合』の構えである。 横で見ていたシエラがポツリともらした。 「まさかシゲンが本気になるなんてね・・・。久しぶりに見たわ。」 ところがサイゾーはまたもやシゲンの予測を超える行動に出た。 シゲンと全く同じ『居合』の構えを取ったのだ。 「・・・あんた、何者だ?」 「ただの忍さ。それ以上でも、それ以下でもない。」 「シゲン殿、ひとつ忠告をやろう。」 「ん?」 「貴公は確かに速さに秀でてはいるが・・・少し力のほうが足りないようだ。」 「!!」 「速さにばかり頼っていては、いつか痛い目に会うかもしれんぞ。」 「・・・言わせておけば!」 そして2人は動いた。 より速かったのはサイゾーだった。 普通ならサイゾーの一撃がシゲンに勝って勝負あり、というところだ。 しかし、勝負はそれでは終わらなかった。 サイゾーの方が速かったことで、シゲンは焦りを感じた。 さらに、武器が使いなれていない木刀であることが追い討ちをかけた。 シゲンは、誤って手を滑らせてしまったのだ。 しかも最悪なことに、木刀は訓練場の片隅に座っていた子供に向かっていった・・・。 「!!」 「や、やべえっ!」 いくら木刀といっても、剣の達人であるシゲンが本気で抜いている。 そのスピードと回転には凄まじいものがあった。 そう。子供であればその命を奪えるほどに・・・。 サイゾーもシゲンも悩むことなくその木刀を止めようとする。 だが、助走もついていない状態では、その木刀に追いつくことなど出来ない。 「くっ!」 「ダメだ、間に合わん!」 ところが、木刀が子供に到達する寸前、一つの影が間に現れた。 割って入ったのではなく、文字通り『その場に現れた』のだ。 そして、影は瞬時に右手で木刀を払い落とした。 子供は何が起こったのか解らず、ただ立ちすくすだけだ。 「・・・やれやれ。シゲンらしからぬミスね。」 「・・・すまねぇ、シエラ。」 割って入った影はシエラだった。 現れた状況を考えると、どうやら『転移』の魔法を使ったらしい。 まさに間一髪というところだろう。 「ま、それだけあの人が強いってことなんでしょうね。」 「そうだな。・・・認めたくは無いが、完敗だ。」 「だが、次は負けねぇ!」 「フフッ。シゲンらしい台詞ね。」 -サイゾーVSバーツ- 「おうっ! 次はオレとやってくれねぇか?」 サイゾーとシゲンの対決が終わってすぐ、バーツが切り出した。 「バーツ、やめときな。お前じゃ1分と持たないぜ。」 「そんなのやってみなきゃ解らんぜ! おめぇもそう思うだろ?」 「そうだな。別に断る理由もあるまい。」 今度はバーツとサイゾーが対決することに。 ちなみに、この訓練場にはどこで作ったのか『木製の斧』というある意味貴重なモノまで置いてあったりする。 「じゃ、いくぜ!」 「うむ。」 ガキーン ギィーン ともに木製の武器を使用しているにも関わらず、激しい音が響き渡る。 そして、押しているのは意外にもバーツの方であった。 別段バーツの攻撃が素早いというわけではない。むしろその攻撃は遅いだろう。 しかしバーツとシゲンには大きな違いがあった。その攻撃の『重さ』である。 サイゾーはバーツの最初の一撃を正面から受け止めたが、予想以上の威力に手が痺れてしまったのだ。 痺れた手では剣を振るどころか持つこともままならず、防戦一方になっていた。 しかし、いくら破壊力があっても当たらなければ意味が無い。 バーツの攻撃を交わしているうちに手の痺れも消えたサイゾーは反撃に出た。 バーツとは対照的に素早い動きで打ちつける。 防戦一方になってしまったバーツは、たまらず間合いを大きく取った。 「くそっ、奥の手だ!」 バーツは突然、手に持った斧をサイゾーに向けて投げた。 もちろんサイゾーは難なく交わす。 「・・・奥の手とはこれだけか?」 「へっ、まだ終わりじゃないぜ。」 「!?」 突然、サイゾーの後ろから何かが飛んでくる気配がした。 サイゾーはしゃがんで交わす。今度は間一髪だ。 「・・・なるほど。『手斧』か。」 「ご名答。もともとオレの得意技はこっちなのさ。」 バーツの投げた斧はブーメランのごとき軌道を描き、またバーツの手に戻る。 その状態は長く続くかに思われたが・・・。 「ぐへっ!」 意外にあっさりと勝負はついてしまった。 確かに『手斧』の攻撃範囲は広いのだが、戻ってくるまでの時間が長すぎた。 サイゾーにあっさりとその隙を突かれてしまったのだ。 「これまでだね。」 「バーツにしちゃ健闘した方だな。」 サイゾーがバーツに手を貸した時、バーツがぼやいた。 「・・・ちぇっ、やっぱりスピードが足りなさ過ぎってか。」 「いや、そうでもないな。」 「えっ!?」 「確かに今のバーツ殿には速さが足りない。だが、決して筋は悪くないと思う。」 「斧を振る速さは決して悪くなかったし、『手斧』を扱う器用さも見事なものだ。」 「バーツ殿のパワーは素晴らしいものがある。あとはそれを補うだけの速さが必要だ。」 「ちゃんとした修練をすれば、もっともっと強くなれるだろう。」 「・・・ありがとうよ! もっと頑張ってみるぜ。」 -話題緩急- とりあえず、ここでサイゾーは一度休息することにした。 ちなみにホームズは「次はオレとだ!」と言わんばかりの態度だったが、 リュナンにたしなめられてしぶしぶ引き下がった。 というわけで、今はサーシャがエストファーネに剣の手ほどきをしている。 その傍らで、サイゾーとホームズはこんな会話をしていた。 「ホームズ殿。」 「うん? どうした。」 「あの少女・・・たしかエストファーネ殿か。彼女は何故貴公達に着いて来ているのだ?」 「なんだってそんなのことを聞く?」 「貴公達の中で、彼女だけはどう見ても実戦の経験が無いからだ。」 「なるほど。・・・ま、確かにエストは元々はお姫さんだからな。」 「では、何故?」 「ま、簡単に言っちまえばエストはペガサスを呼びたいんだよ。」 「??? ・・・それが、貴公らに付いて来ることとどういう関係がある?」 「まぁ待ちな。順に話をしてやるよ。」 「他の大陸じゃどうかは知らねぇが、ユトナ大陸では『天馬の笛』っていうモノでペガサスを呼ぶんだ。」 「『天馬の笛』で呼ばれたペガサスは笛の吹き手と相性がいいから、最高のパートナーになれる。」 「ふむふむ。」 「ところがこの『天馬の笛』ってのが厄介な代物でな、ペガサスに乗る資格が無ければ音が出ないんだと。」 「なるほど。それで、エストファーネ殿はまだ音が出せないと?」 「ご名答。」 「それと貴公らとは、どうつながるのだ?」 「エストの持っている『天馬の笛』は、サーシャが持ってたモンなんだよ。」 「だから、サーシャにペガサスを呼ぶコツを学ぶために俺達に付いて来てるんだな。」 「了解した。・・・ところで、経過は?」 「ま、ぼちぼちだな。サーシャは「言葉で言って解ることじゃないから、時間が掛かるかもね。」と言っていたし。」 ところで、この会話の最中にサイゾーはエストファーネを観察していたのだが・・・ (・・・確かに経験不足が厳しいが、筋は悪くないな。) (ちゃんとした修練を積めば、優れた天馬騎士になれるだろう。) ということである。 -サイゾーVSホームズ- サーシャとエストファーネの稽古が終わり、再びサイゾーが前に出た。 もちろん次の相手はホームズである。 「手加減はいらないぜ。」 「確かにホームズ殿なら手加減の必要もないな。」 まずはお互いにけん制し合いながら間合いを詰めていく。 お互いに剣の間合いに入ったところでホームズが仕掛けた。 キィーン カーン ホームズの剣は小細工無の無い、相手を真っ向から叩き伏せるタイプの太刀筋だ。 本人の性格がよく反映されていると言えるだろう。 対してサイゾーの太刀筋は四方八方から斬りかかる、いわば小細工の効いたものだ。 サイゾーはもともと忍としての修行を積んでいるので、これは職業柄と言える。 しばらく打ち合っていた2人だが、突然サイゾーがこう言った。 「・・・なるほど。やはりな。」 「・・・なんだよ? 何か言いたいことがあるのか?」 「ホームズ殿、貴公・・・実は剣が嫌いではないのか?」 「!! ・・・何故、そう思う。」 「簡単だ。貴公の太刀筋には微妙な迷いがある。その迷いは、どう見ても精神的なものだ。」 「・・・チッ、当たりだよ。今まで気づいたのはリュナンだけだったってのにな。」 「しゃあねえ。俺の本気ってヤツを見せてやる。」 (ほう・・・これまでが本気ではないと言うのか) ホームズは大きく後ろに跳んだ。 その場所には訓練場の武器置き場ある。 その中からホームズは一つの武器を取った。 「なるほど。『弓』というわけか。」 「もともと俺の本職はこっちなんでね。・・・さぁて、覚悟しな!」 言いざまにホームズは矢を1本放った。 (!! 速いっ!) 迷うことなく身を低くして交わすサイゾー。 だが、そこに間を置かず次の矢が襲いかかる。 (!!) 今度は横に跳んで交わす。 しかし、さらにそこには次の矢が・・・。 ホームズの弓の腕には凄まじいものがあった。 矢の速さもさることながら、何と言っても特筆すべきは矢を射る間隔である。 流石のサイゾーも避けるだけで精一杯の状況になっていた。 「ハァッ、ハァッ。」 「ったく、すばしっこい男だな。だが、これで終わりだ!」 ホームズは一度に3本の矢を同時に引いた。 サイゾーの正面と左右にそれぞれの矢が飛ぶ。 横に逃げられないサイゾーは迷わずに上に跳んだのだが・・・。 ホームズが不敵に笑った。 「待ってたぜ! お前が上に跳ぶのをな。」 「なにっ!?」 (!! そうか! これでは矢を避けることができん) ホームズはサイゾーにトドメとなる矢を放つ・・・はずだった。 が、実際にその矢が放たれることは無かった。 (???) サイゾーが着地する。 「残念だがここまでだ。・・・矢が切れちまった。」 「・・・そうか。」 一応は引き分けと言う形で決着したが、サイゾーは自分の敗北であることを痛感していた。 はっきり言ってしまえば相手が悪いのだが、サイゾーはそう思わないだろう。 そしてホームズとサイゾーは矢の回収作業を始めた。 矢は木製であるにも関わらず、そのうちの何本かが壁に突き刺さっていた。 今更ではあるが凄まじい破壊力である。 全ての矢を回収し終わった時に、後ろから肩を叩かれた。 「おいおい、そんな辛気臭い顔すんなよ。」 「ま、気を落とすな。俺の矢をあれだけ交わせただけでも十分凄いから。」 「・・・ああ。すまない。」 それでもどこか気落ちしたサイゾーであった。 -話題緩急 その2- ホームズと戦った消耗が激しく、サイゾーは再び休息していた。 現在は、ホームズがエストファーネに矢の講習をしているところである。 「元気が無いな。」 声をかけられてサイゾーは振り向いた。それは、意外にもリチャードであった。 「リチャード殿が声を掛けるとは珍しい。」 「ホームズに負けたことなら気にしないことだ。実際、奴の弓を避けられる者などそうそういない。」 「・・・慰めているのか?」 「そういうわけではない。ただ、強い者に負けて気落ちするのは無意味だということだ。」 「気落ちするくらいなら、その悔しさを次につなげる方がよほど意味がある。」 「リチャード殿が少しうらやましい。貴公はいつも自信に満ちている。」 サイゾーの言葉に対して、リチャードは少し影のある表情を見せた。 「・・・本当にそう思うか?」 「違うと?」 「俺とて人間だ。己の限界にぶつかる事もある。」 「だがな・・・そんな弱さを人に見せる自分は大嫌いなのだ。」 「だから、いつでも自信のある態度を見せる。・・・まぁ、一種の自己暗示のようなものか。」 「驚いたな・・・そんなことを私に話してくれるとは。」 「今のお前は昔の俺に似ている・・・そんな気がしたのだ。」 「そうか。・・・ありがとう、リチャード殿。」 「少しは元気が出たようだな。」 いつも尊厳な態度を見せるリチャードの意外な一面にサイゾーは少なからず驚いた。 だが、確かに人は見た目ほど強い存在ではないのかもしれない。リチャードはその一例だろう。 サイゾーは、少し救われた気がした。 -サイゾーVSティーエ- ホームズの矢の講習が終わり、サイゾーが再び前に出る。 「どうやら僕の番だね。」 リュナンが剣を持って前に出ようとした。が、それを阻む手があった。 「リュナン様、私が行きましょう。」 「ティーエが? 君が戦いたいと言うなんて珍しいね。」 「ええ。彼とは是非全力でぶつかってみたいんです。」 「いいよ。お先にどうぞ。」 「ありがとうございます。」 ということでティーエが剣を手に出てきた。 「ティーエ殿が相手か・・・。」 「先に言っておきますが、私は魔道士でもあります。よろしいですね?」 「構わないさ。命がけの戦いにルールなど無い。」 「では、行きます!」 ティーエの声を合図に2人は動いた。 お互いに間合いを計りながら剣を構える。 どうやらティーエはまず剣のみで相手をするつもりらしい。 「ハアッ!」 ティーエが勢いよく斬りかかる。 (速い!) サイゾーは少なからず驚いた。 ティーエは剣士であると同時に魔道士でもあるため、剣の腕はそれほどでもないと思っていたのだ。 だが実際はどうだろう。その太刀筋はシゲンにも引けを取らないほどの速さがあった。 (だが、やはり力が足りないか・・・) 素早くティーエの弱点を見抜いたサイゾーはその攻撃を受け流し、逆に反撃に出る。 サイゾーの攻撃に押されたティーエはたまらず間合いを取った。 「やはり、剣の腕だけではかないませんね。」 「・・・雷よ!」 ティーエの詠唱とともに小さな雷が発生し、それがティーエの持つ剣にからみつく。 「今度はこれで行きます!」 「魔法剣か・・・だが、ティーエ殿はひとつ肝心なことを忘れているな。」 「えっ?」 「今の武器は木刀だ。電気は通さないぞ。」 「あっ!!」 要するに、ティーエの作った魔法剣はサイゾーに直接触れなければ意味が無いということだ。 もちろんサイゾーがそう簡単に触れさせてくれる訳が無い。 逆にサイゾーに攻勢に回られ、あっさりと剣を弾き飛ばされてしまった。 再びティーエは間合いを大きく取る。 「・・・仕方ありません。本当の雷というものを見せてあげましょう。」 ・・・明光満つるところに我はあり ・・・黄泉の門開くところに汝あり 横で観戦していたホームズがぼやいた。 「おいおい、ありゃちょっとヤバイんじゃねえのか? 特に他の客が。」 「大丈夫だよ。今訓練場にいるのは僕達だけだから。」 「へっ?」 よく見れば、確かに自分達以外の人影が全くなくなっていた。 実は、ホームズとサイゾーの対決の時に矢のとばっちりを恐れた客がさっさと退散したというのが真相である。 その間にもティーエの詠唱は続いた。 ・・・出でよ、神の雷! 「これで終わりです!」 「ゴッドアハンド!!」 一筋の閃光がうなり、サイゾーへと走る。 しかし、サイゾーは不敵に笑った。 懐から『何か』を取り出し、それを空中に投げる。 そして自分は間髪いれず横に大きく跳ぶ。 「無駄ですよ。この雷からは逃れられません。」 確かにティーエの言った通り、閃光はサイゾーの跳んだ方向へ進路を変えた・・・かに見えた。 しかし、実際には閃光はそのまま直進し、サイゾーの投げた『何か』に吸い込まれるように消えたのだ。 「えっ!?」 予想外の事態に、ティーエには大きな隙が生まれた。 そして、結局それが勝敗を決することになったのだ。 ティーエが気づいた時には、サイゾーの持つ剣が自分の喉元を捕えていた。 「終わりだな。」 「そうですね・・・お見事です。」 ティーエは自分の負けを認め、静かに歩き始めた。 自分の魔法を吸収したものの正体を見極めるために。 「これは・・・指輪ですね。」 「ああ。バレンシアで『祈りの指輪』と呼ばれているものだ。」 そう。サイゾーが投げたのは、ミロアがその中に宿るあの『祈りの指輪』だったのだ。 「面白い指輪ですね。・・・非常に強い魔力がこもっています。」 「確かにこれなら、私の魔法を吸収することも可能でしょう。」 実際には吸収したわけではないのだが、サイゾーは敢えて何も言わない。 ミロアと指輪の関係をおいそれと話すわけにもいかないからだ。 ふと、サイゾーはティーエの肩がかすかに上下していることに気がついた。 「・・・ふむ。ティーエ殿は少し体力が足りないらしいな。」 「えっ?」 「貴公の場合、速さは問題ないし、力は魔法で補えるだろう。」 「しかし、魔法を使うものにとって体力不足は致命的になることもある。もう少し鍛えた方がいいぞ。」 「なるほど・・・。ご忠告ありがとうございます。」 -サイゾーVSリュナン- 「さて、ようやく僕の番だね。」 待ってましたと言わんばかりにリュナンが前に出る。 「どうやらリュナン殿で最後だな。」 「そうだよ。だから遠慮なく全力でどうぞ。」 そしてお互いに構えた。 構えた瞬間、リュナンの剣の腕が並外れていることが容易に解った。 (!! ・・・なるほど。全力で挑まなければ、怪我では済まないかもしれんな。) 周囲の期待をよそに、2人は構えたままなかなか動かない。 痺れを切らしたエストファーネがサーシャに聞いた。 「どうして2人とも動かないんでしょう?」 「2人とも強すぎるのね。動けばあっという間に勝負がつくから、下手に動けないのよ。」 (・・・これではラチがあかないな。) (仕方がない。シャナン殿と戦った時の手段でいくか。) サイゾーは自分の構えをわずかに崩した。 リュナンほどの腕であれば、その隙を見逃さず攻撃を仕掛ける・・・はずだった。 しかし、実際にリュナンが取った行動は・・・リュナンも自分の構えを崩したのだ。 (・・・なるほどな。そう来るか。) 「小細工は無用、と。」 「そういうこと。」 その言葉を合図に、2人は同時に動いた。 ガギィーーン ギイィーーン バーツの時以上の音が響き渡る。 「・・・こりゃずげぇ。2人とも攻撃のことしか考えてねえぜ。」 「しかし、これでは大怪我をしてしまうのでは?」 「ま、その時はその時だ。」 ティーエの心配をよそに、2人は楽しそうに打ち合っている。 強い相手と戦うのが楽しくてしょうがないという感じだ。 それは、己の限界の中でしか感じ取れない楽しさなのかもしれない。 キィーン そして、ひとつの決着はついた。 結果は・・・引き分けだった。 2人の持つ剣は、お互いの剣を同時に弾き飛ばしたのだ。 「・・・久しぶりに楽しい戦いができたよ。ありがとう。」 「礼を言うのはこちらも同じ。見事な腕前だ。」 「貴公には弱点らしい弱点が全く見うけられなかった。私から言うべきことも無いだろう。」 「うん、誉め言葉として取っておくよ。」 実のところ、リュナンはそれほど極端な実力の持ち主ではない。 例えば、速さではシゲン,パワーではバーツに分があるだろう。 では何故それほどの実力を持つのか? それは『バランス』である。 一つ一つの能力が突出していなくても、全ての能力が高い水準にあることが強さの秘密なのだ。 それは、今のサイゾーにも同じことが言える。 -一日の終わりに- サイゾーにとって慌ただしい一日が終わりを告げた。 今、サイゾーの手元には一枚の紙がある。 帰り際にホームズが手渡したもので、彼らの部屋番号が書いてあった。 「退屈になったらいつでも来な。相手をしてやるからよ。」 実際のところ、ホームズ達と過ごす時間は楽しかった。 アカネイア大陸までの道程もまだ長く、しばらくは彼らと過ごすのも悪くないだろう。 「しばらくは賑やかになりそうですね。」 「そうだな。・・・ところで、ティーエ殿の雷が直撃したが、大丈夫だったのか?」 「ええ。サイゾーさんには魔法を吸収したように見えたと思いますが、実際には受け流しているんですよ。」 「受け流す?」 「うーん、ちょっと説明が難しいですね。私は生身の人間ではありませんし・・・。」 「まぁ、いいだろう。問題がないならそれで十分だ。」 話を打ち切って就寝しようとしたサイゾーだったが、不意にミロアが語りかけた。 「・・・サラの予知を覚えていますか?」 「いきなりどうしたんだ? もちろん覚えているが・・・。」 「サイゾーさん、あなたは・・・真実を知ることが怖くありませんか?」 「??? ミロア殿は何が言いたいのだ?」 「真実とは、時に残酷なものです。」 「人間は己の許容範囲を超える現実に直面した時、その現実を封印してしまうこともある。」 「ますます解らないな。それと、今の私にどう言う関係がある?」 「・・・そうですね。今は言わない方がいいかもしれません。」 「このことは、頭の片隅にとどめておく程度で結構です。」 「あ・・・ああ。」 そして、サイゾーは眠りへと落ちていった。 心の奥に釈然としないものを感じながら・・・。 ---------- ひょんなことからユトナ大陸の勇者達と知り合ったサイゾー。 このことが、後に重大な事件を引き起こすことを、彼は知る由も無い・・・。 そして、ミロアが語った言葉の意味は・・・。 次回、アカネイア大陸で事態は新しい局面を迎える!? 『DTA VS PTA(中編)』に・・・「お兄ちゃんって呼んでくれなきゃ切腹よ!」(謎爆)
<製作後記>この色の文は作者ツッコミです。 長かった・・・。 行数だけで見ると、いつもの倍くらいあります。(^^; えー、のっけから何ですが、今回のSSはほとんど番外編です。(爆) 裏タイトルは『TS特別編 サイゾー5番勝負』ってところでしょう。 ラストに無理矢理ストーリーの伏線を入れてあります。 TSのキャラに関しては説明すると長くなるのでキャラ解説を参照してもらって・・・、 『ゴッドアハンド』の詠唱について一言。 コレ、解る人はすぐに解りますが、ナムコの名作RPG「テイルズオブファンタジア」のOPにある 『インデグネーション』の詠唱そのまんまですね。(笑) 文章の雰囲気がピッタリだと思ったのだそのまま使ってみました。 あと、今回のタイトル「DTA」と「PTA」について。 コレ、よっぽどカンが良くないとわかんないと思います。 とある必殺技名を英語にして、頭文字を取ったものなんですけどね。 決して学校に小言を言う某集団のことではありませんので・・・。(問題発言!?)

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