へたれSS_第20回
へっぽこVSシリーズ第20弾「DTA VS PTA」(中編)
--ガルダの港で--
ここは、アカネイア大陸の東に位置する『ガルダの港』と呼ばれる場所。
そこに、一隻の大型船が止まった。
「ふぅ、久しぶりの地面だな。」
「さすがに2週間も船の上ではこたえますね。」
サイゾーは、ホームズ達と一緒に船から降りた。
この数日ですっかり打ち溶け合った両面は、すっかり行動を共にするようになっていたのだ。
(まぁ、明確な目的があるわけではないし、こういうのも悪くない)
それに、一人になると先日のミロアの言葉が気になってしまうので、サイゾーは逆にありがたかった。
「で、どうするんだ、バーツ。こっからはお前の管轄だ。」
「こっから船で半日くらいのところに『タリス島』ってところがある。まずはそこだな。」
「・・・また船に乗るんですか。」
船には弱いらしいティーエとエストファーネがちょっとうめいた。
「どっちにしろ今日はこの街で休息だ。そうだろ、バーツ?」
「ああ。もちろんだ。」
『タリス島』に向かうのが明日以降ということになり、シーライオンの面々は町へと繰り出していく。
そして、サイゾーもまた街へと足を運んだ。
一人になるのが苦痛だったのだ。
大陸が違えば文化も違う。
サイゾーにとって、自分の知らない文化に触れることは嫌いではなかった。
が、やはり今の状況では楽しめそうに無い。
「おっと、失礼。」
考え事をしながら歩いていたせいか、誰かにぶつかってしまう。
「いや、こちらこそ。」
と言って歩き出そうとしたが、2歩進んだところで異変に気づいた。
(!! 財布が・・・ない!)
振り向けば、先程ぶつかった男が早足にこの場を去ろうとしている。
(不覚!)
素早くその男を追いかける。
だが、相手もこちらに気がついたようだ。走る速度が上がった。
とは言え、サイゾーにとって盗っ人の足などたかが知れている。
見る見るうちに2人の間隔は狭まっていった。
「くそっ!」
男は逃げられないと悟ったのか、懐から1本の刃物を出した。
そして、男の走る先には仲の良い男女の姿が・・・。
(!! 人質を取るつもりか!?)
自分の不注意が招いた事態で、関係の無い他人を巻き込みたくなかった。
しかし、どうやら間に合いそうに無い。
と思ったのも束の間。予想外の出来事がサイゾーの目前に広がった。
一見すると普通の恋人にしか見えない二人は、走ってくる男に気づいた時、同時に動いた。
まず左右に別れて同時に男を避ける。
そして、男が混乱しているところに、青年が剣の鞘で急所に一撃。
たまらず気を失い倒れそうになる男を、女性が受け止める。
もちろん、手に持っていた刃物を奪うことも忘れない。
「やれやれ。最近は治安も悪くなったね。」
「外の大陸と交流が活発になりましたからね。良いことばかりではないのでしょう。」
そう言いながら、女性は男の懐を探り、一つの袋を取り出した。
「貴方の盗られたものはこれですか?」
「あ、ああ・・・。かたじけない。」
「最近はこの辺りも物騒になったからね。気をつけたほうがいいよ。」
まさに電光石火の早業だった。
普通なら、相手が刃物を持っている時点で萎縮してしまうだろう。
どうらやこの2人、見た目とは裏腹にかなりの修羅場を乗り越えてきているらしい。
「・・・マルス様、そろそろ戻られた方が。」
「もうそんな時間かい? わかった。」
そして、2人の男女は盗っ人の男を引き連れつつその場を後にする。
最後の言葉は、お互いに囁くような声だった。
おそらく他人に聞かれたくなかったのだろう。が、あいにくサイゾーにはハッキリと聞こえてしまった。
(マルス? ・・・はて、どこかで聞いたような?)
すこし引っかかるものを覚えながら、サイゾーは帰路へと着いた。
--再会--
結局、出発は早い方が良いということで翌日になった。
エストファーネが少しゴネていたが、サーシャがたしなめて大人しくなった。
そして現在、シーライオンの一行はタリス城の正門前に集まっていた。
タリス島では、港がタリス城の直轄になっており、街よりも城の方が近いのである。
だが・・・。
「ホームズ、ちょっと変だと思わないか?」
「ああ。いくらなんでも警備が厳重過ぎる。」
その日のタリス城は明らかに警備兵の数が多く見うけられた。
警備兵もどこかピリピリした表情を見せている。
「ま、中に入れば解るだろう。ちょっくら行ってくるぜ。」
「油断するなよ、バーツ。」
バーツは正門にいた警備兵に話しかけた。
「おう。ちょっとタリス王に取り次いでくれ。「バーツが会いに来た」って言えば解るからよ。」
警備兵はすこし警戒した目でバーツを見た。
が、「訪問者を無下に追い返すな」というのがタリス王の教えである。
ほどなく、警備兵の1人が中へと走っていった。
そして、バーツは残った警備兵に聞いてみた。
「・・・今日はえらく厳重だな。いったい何があるってんだい?」
「お前達に教える必要はなかろう。」
「そんなこと言うなよ。俺たちゃこれからタリス王に挨拶に行くんだからさ。」
「悪いが、言うわけにはいかん。」
「頼むぜ。な!? ヒントだけでも。」
「仕方ないな・・・今日は、客人が来ているのだ。」
その『客人』という単語と警備の厳重さを照らし合わせた時、バーツには一つの答えが閃いた。
「ははぁ、なるほどね。今日は姫様が帰ってきてるのか。」
「!! なぜ解った!?」
「やっぱり。」
「あ。」
バーツのハッタリに自分で墓穴を掘る警備兵だった。
そして、程なくして中へ入っていった兵が戻ってきた。
「タリス王がお会いになると言っています。こちらへどうぞ。」
・・・城の中を歩くこと数分。
一行は、謁見の間とおぼしき広い空間に出た。
その奥に、人当たりの良さそうな初老の男性。
恐らく彼がタリス王その人なのだろう。
そして、その横には若い青年と女性の姿もあった。
「タリス王、客人をお連れしました。」
「ご苦労。下がってよいぞ。」
「では、これにて。」
すでにシーライオンの一行は全員が膝をつき、深々と頭を下げた状態になっている。
さすがにこういう時の対応は文化が違っても同じらしい。
「皆、面をあげよ。わしゃ堅苦しいのはキライなのでな。」
↑『面』は(おもて)と読みましょう。決して(つら)と読んではいけません。(笑)
その言葉を聞き、全員が一斉に顔を上げる。
最初に切り出したのは、やはりバーツだった。
「お久しぶりです、タリス王。」
「ほっほっほ。暗黒戦争の後行方不明だったが、やはり生きておったな。」
「そう簡単にはくたばりませんよ。」
「して、後ろの者達は?」
「皆、私の戦友です。」
ここで、バーツはタリス王の横にいる2人に少し視線を移した。
「話すと長いので、説明は後に・・・。」
「おお。そうじゃな。今日は別の客人も来ておるしのう。」
そして、その一言で視線が一斉に2人に向けられる。
全員が落ちついて見る中、ただ1人・・・サイゾーだけが驚いた表情を見せた。
さらに、サイゾーの驚きに対して、その2人は軽く笑った・・・・ようにサイゾーには見えた。
「そろそろ自己紹介した方がよさそうだね。」
「私の名はマルス。アリティアの王で、この大陸を統治するアカネイア連合の盟主でもあります。」
アリティアの名を聞いた時、サイゾーの頭に記憶が蘇った。
(そうか! 以前ユグドラル大陸で聞いた暗黒戦争の話だ。)
(確かにマルス殿の名も出ていた。)
つまり、今目の前にいる青年はアカネイア大陸の英雄であり、
現在はアカネイア最大の権力者でもあるということになる。
警備が厳重になるのも当然のことと言えよう。
「私も自己紹介させていただきますね。」
「私はシーダ。ここにおられるタリス王の娘で、現在はマルス様の妻です。」
「今回は、私がお父様に会いに来たのです。」
「へぇ。シーダ姫、無事結婚できたんだな。おめでとう。」
大方の事情を知っているバーツが祝福した。
が、シーダはその言葉には反応せず、サイゾーに向きをあわせた。
「うふふ。まさか貴方もご一緒だったとは。財布の中身は無事でしたか?」
今度は、サイゾーに全ての視線が集中する番だった。
--天馬騎士--
「やれやれ、えらい目にあった。」
「お疲れ様でした。」
結局、サイゾーは事情を説明するハメになった。
財布を盗まれた話など情けなくて言いたくなかったのだが、
さすがに10人以上の視線に絶えることはできず、降参した。
その後、タリス王の提案でサイゾー達は一晩この城に泊まることになった。
バーツがユトナ大陸で経験した話をタリス王が聞きたがったからだ。
サイゾーはお役目御免となったので、先に退散させてもらった。
逆にシーライオンの面々は、バーツと共にタリス王に話をしている。
まだ夕食には少し早い。
サイゾーは城の中を歩いてみることにした。
まもなく日が沈むであろう夕刻のことだ。
とりとめもなく歩いていると、かすかに動物の鳴き声が聞こえてきた。
儚いようで力強い、不思議な声だった。
サイゾーは、吸い寄せられるようにその声の方向へと向かった。
声の主は、美しいペガサスだった。
ペガサスをほとんど知らないサイゾーですら、一目で惹かれるほどの。
力強い翼、しなやかな脚、整った顔。
すでに、それは芸術であった。
「ペガサスがお好きなのですか?」
不意に語りかける声。振り向けば、マルスとシーダがすぐ側にいた。
サイゾーは素直に驚いた。2人に気づかないほどペガサスに惹かれた自分自身に。
「・・・シーダ殿か。これは、貴方の?」
「ええ。私のパートナーですわ。」
「見事なペガサスだ。まさに生きる芸術だな。」
「うふふ。意外にロマンチストな人なんですね。」
「ちょっと、僕を無視して盛り上がるのはどうかなぁ。」
「あっ、ごめんなさい、マルス様。つい・・・。」
「いいけどね。僕も、このペガサスは芸術という表現に負けないと思ってるし。」
「そう言えば・・・確かシーダ殿は大陸有数の天馬騎士として有名だとか。」
「やはり、このペガサスがパートナーだったのかな?」
「ええ。私のパートナーはこの子だけ。他は考えられません。・・・いいえ、考えたくありません。」
(なるほど。・・・さて、そろそろ頃合かな?)
「もう出てきても良いのではないか、エストファーネ殿。」
「!!」
物陰に隠れていた少女はしばらく動かなかったが、やがて観念して出てきた。
マルスもシーダも全く驚いていないところを見ると、すでに気づいていたらしい。
「盗み聞きは感心しないわね。」
「どうしてあんなところにいたのかな?」
「そ、それは・・・。」
「まあ、2人とも待ってくれ。そんな責め方をしては怯えてしまう。」
「それに、ここに居たのはおそらく私と同じ理由だ。・・・そうだろう?」
「・・・はい。」
しかし、このままではマルスとシーダにとって情報が少なすぎるので、
サイゾーが大まかな事情説明をした。
「なるほど。私も同じ経験があるから、気持ちが解るわ。」
「・・・ねえ、エストファーネ。あなたは、何故ペガサスに乗りたいの?」
「サーシャ様のような、優れた天馬騎士になりたい、では駄目ですか?」
「ふぅん。やっぱりそうか。」
すると、シーダは自分のペガサスに近づき、その耳元でささやいた。
「ちょっとだけ、協力してね。」
再びエストファーネに向き直る。
「じゃあ、実際に乗ってみようか。」
「えっ!? いいんですか?」
「私が一緒だから大丈夫。さ、乗ってみて。」
エストファーネが実際にペガサスに乗るのはコレが初めてだった。
恐る恐るペガサスに乗り込むエストファーネ。
シーダは対照的に軽々と自分のペガサスに乗る。
「行くわよ。しっかり捕まって。」
そう言って手綱を一振り。
しかし、その後に待っていた光景は、サイゾーの予測を裏切るものとなった。
「きゃあーっ!」
二人の乗るペガサスは四方八方に猛スピードで飛び回る。
それは、もはや『飛ぶ』という生易しいものではなく、『暴れる』と言った方が正しい。
見れば、エストファーネはシーダにしがみつき、顔も青ざめている。
「・・・少し手段が荒っぽいのではないか?」
「うーん。まぁ、こういう方法もアリかな。」
そう言いつつ、マルスはこの状況を楽しんでいるようにも見える。
それは、ペガサスに乗っているシーダも同じらしい。
程無くして、2人は降りてきた。
すでにエストファーネは声を出すことも出来ない状態だ。
「・・・ごめんなさい。ちょっと刺激が強すぎたかしら。」
「でも、私が協力できるのはここまでよ。あとは、自分で考えてみて。」
エストファーネはシーダの言葉が聞こえているのかどうか怪しい足取りで歩き出す。
一人になれる場所を探しに行ったのだろう。
そして、その場所には3人が残った。
「大丈夫なのか? かなり衰弱していたが・・・。」
「彼女なら大丈夫。明日の朝には全部が上手くまとまるはずよ。・・・多分。」
「だと良いけどね。・・・まったく、相変わらずムチャするんだから。」
どうやら、一見するとおしとやかなイメージのあるシーダ姫は、
むしろ行動的なタイプであるらしい。
結局、エストファーネ次第ということでその場は解散となった。
そして次の日・・・
--ペガサスを呼ぶ笛--
翌日の早朝、城の片隅にひとつの人影があった。
まだ日が昇る前で、城の中でも起きているのはごく少数という時間だ。
「・・・本当に、音が出ると良いけど。」
「ううん、悪い方向に考えちゃダメよね。実践あるのみ!」
その人影は、誰に言うでもなくつぶやく。
そして、手にした笛を口元に当てた。
澄んだ音色が、静かな城に響き渡る。
静かな、そして深い音色。
紛れのない音とはこういうものを言うのだろう。
どのくらい経っただろうか。
日の昇る方角から、ひとつの影が飛んでくるのが見えた。
言うまでもなく、それはペガサスだった。
そのペガサスは、静かに、力強く降り立った。
ここに来て、ようやく笛の主・・・エストファーネは吹くことを止めた。
しかし、ペガサスに近づくことはしない。
いや、近づく必要などなかったのだ。
エストファーネには解っていた。
目の前のペガサスが、幼い頃に一緒に過ごしたペガサスであると。
そして、自分の声を聞いてここまで来てくれたのだと。
お互いに言葉を発する必要はなかった。
そして、ひとつの契(ちぎり)は交わされたのだ。
また、その光景を見守る別の影もあった。
「・・・良かったわね、エスト。」
サーシャだけが知っていた。
エストファーネの元に飛んできたペガサスが、実はユトナ大陸を出発した時からずっと共にあったことを。
その背中にエストファーネを乗せる日を待ちつづけていたことを。
朝日が昇り、城の中も慌ただしくなり始めた。
--再会 その2--
その日の昼前、食事を済ませた一行はタリス城を後にした。
「そうか、もう出発するか。」
「ええ。サジとマジにも早く顔を見せたいので。」
「うむ。また何かあったら来るが良い。歓迎しよう。」
「それでは、お元気で。」
一行が歩き出したところで、エストファーネが振り向いた。
「シーダ様、本当に感謝します。」
「私はきっかけを作っただけ。それに、これからの方がもっと大変よ。」
「はいっ! 頑張ります。」
一行はたわいのない会話をしながら町を目指した。
エストファーネにわざわざ事情を聞いたりはしていない。
過程がどうであろうと、結果が良ければそれでいいと思ったからだ。
結局、真相はサイゾーとサーシャだけが半分ずつ知ることとなった。
そして、一行はタリスの街に到着する。
今は日差しが弱まり、少し涼しくなり始めた頃だ。
「・・・おい、バーツ。ここは本当に街なのか?」
「失礼な。ほら、通行人だっているじゃねえか。」
「いや、俺が言っているのはそうじゃなくてな・・・。」
ホームズがうなったのも無理はない。
そこは、『街』というよりは『村』という表現が似合う場所だったのだ。
ミもフタも無い表現をするなら、田舎と言えば解りやすい。
「まあいいか・・・。さて、先ずは宿を探さないとな。」
「それなら心配するな。俺の家に泊まればいい。」
「おいおい、男女共同か?」
「大丈夫。サジとマジに頼めば解決するさ。」
そう言って、バーツはさっさと村に入っていった。
といっても、別に入り口に警備兵が立っているわけではない。
一行はこれといった障害も無く、街の中に歩き出した。
街に入ってから少し歩いたところで、バーツは立ち止まった。
目の前には、ひとつの古びた家がある。
「こいつが俺の実家さ。もっとも、今は誰も住んじゃいないが。」
「つまり、今日の宿はここってわけか。・・・やれやれ。」
「じゃ、とりあえず荷物を置いてこよう。」
そして全員がバーツの家に入ろうとした時・・・
「バーツ!? おい、バーツじゃねえか!」
後ろから声が聞こえた。
振り向けば、2人の屈強な男が斧を持って走ってくる。
「おっ! サジとマジじゃねえか。元気だったか?」
「おいおい、そいつは俺たちのセリフだぜ。」
「そうそう。ま、事情はあとでゆっくり聞いてやるよ。」
「ああ。お互いに積もる話もあるだろうしな。」
そして、バーツはホームズ達の方に振り向いた。
「この2人がサジとマジだ。」
「なるほどな。類は友を呼ぶとはよく言ったもんだぜ。」
「おいホームズ、そりゃどういう意味だ!?」
「そりゃあ、そのまんまの意味だろ。」
「まあまあ、こんなところで騒ぐのはやめましょう。ほら、お2人が困ってますから。」
ティーエの一言でこの場は収まり、簡単な自己紹介をすることになった。
と言っても、サジとマジについてはある程度バーツが一行に話していたので、
ホームズ達が2人に自己紹介をするのが主だったが。
そして、自己紹介と荷物の整理が終わってから、
バーツはサジとマジを連れて街を一周することになった。
「この街には知り合いが多いからな。今日のうちにある程度周っとこうと思うんだ。」
「というわけで、適当に時間を潰してくれ。家にあるものは自由に使っていいからよ。」
言いながら、早足にその場を立ち去る3人だった。
--悪魔の斧--
さて、家の主が去った家では手持ち無沙汰の面々が悩んでいた。
「適当に時間を潰せって言ってもなぁ・・・何も無いのにどうしろってんだ?」
「確かにね・・・まだ夕食には早いから、食事を作るってのも無しか。」
修行をするという案もあったが、最近は修行続きだったのでちょっと遠慮したいところだ。
各々が色々話しているうちに、ティーエがこんな事を切り出した。
「あの・・・この家の掃除をすると言うのはどうでしょう?」
「今日はこの家に泊まるわけですから、さすがにこのままというのは。」
「・・・そういやそうだな。そいつが一番理に合ってそうだ。」
「じゃ、皆でこの家の清掃をするということでいいかい?」
「OK。」
「わかりました。」
「俺はやらんぞ。わざわざ他人の家を掃除する義理はない。」
「安心しな。誰もお前にゃ期待してねえから。」
そして、リチャードを除く面々はバーツの家を一斉に清掃し始めた。
清掃といっても埃を拭き取るだけの簡単なものだが、その埃の量が半端ではない。
バーツが戻ってくるまでの時間潰しには十分な効果がありそうだ。
サイゾーもその中に加わり、黙々と埃を拭き取っていた。
ふと、家のすぐ側に小さな建物があることに気が付く。
物置か何かだろうか?
サイゾーは、気になって入ってみた。
中は、どうと言うことの無い普通の物置だった。
木を切るための斧や、余った木材が整理して置かれているだけだ。
ここは無理に掃除する必要も無いだろうと、外に出ようとしたその時。
「これは・・・」
斧が並べられている棚に、一つだけ異彩を放つ斧があった。
真紅の刃をもつそれは、不気味な気配を放つ悪意を持っている。
この斧に近づいてはいけない。直感でそう感じた。
しかし、その直感とは裏腹に、まるで吸い寄せられるようにサイゾーは斧を持ってしまった!
斧を持ってからのことはよく覚えていない。
持った途端に破壊欲が増幅して、力任せに斧を振り回したような気がする。
破壊が快感に変わり、その感情に流されそうになったようにも思う。
確実に言えることは一つだけ。
暴走した自分を助けてくれたのが、ミロアの声だったということだ。
気がつけば、自分はまだ物置の中にいた。
真紅の斧は目の前に転がっている。
油断するとまた斧に引き寄せられるかもしれない。
そう思ったサイゾーは、早足にその場を退散することにした。
しかし、結果的にその行動は大きな間違いとなった。
これが、翌日にひとつの大事件を引き起こすことを、サイゾーは知る由も無い・・・。
--返らない言葉--
「静かだ・・・。」
草木も眠る丑三つ時。
ここは、サジとマジの家の庭である。
そこで、サイゾーは一人独白していた。
いや、正確にはミロアに話しかけていた。
「・・・そう言えば、礼を言っていなかったな。」
「ありがとう、ミロア殿。」
もちろん、物置での一件のことだ。
しかし、返事は無い。最初から返事など期待していない。
サラの予言について話したあの時以来、ミロアは一度もサイゾーに話しかけていない。
サイゾーは何度かそれとなく話しかけてみたが、返ってきたことはなかった。
今回も、少し待ってはみたが同じだった。
「やはり返事はなしか・・・。まあいい、聞いてくれ。」
返事は無くとも、ミロアは自分の言葉を間違い無く聞いている。
そう確信していたサイゾーは、静かに話し始めた。
「以前言っていたな。真実を知ることが怖くないのか、と。」
「・・・正直、怖くないと言えば嘘になるだろう。」
「だが、それでも私は真実を知りたい。」
「現実から目を背けるよりも、真っ直ぐぶつかりたい、そう思うのだ。」
「だから、ミロア殿が気にすることなど何も無いのだよ。」
「以前のように、私の良きパートナーとしてあってくれ。・・・それが、私の希望だ。」
月明かりが静かにサイゾーを照らす。
不意に寒さを感じ、家の中に入ろうと歩き出した。
その時、
「・・・ありがとう。」
消え入りそうな声が、サイゾーの頭に響く。
返事は必要なかった。
きっと、今日からは以前と同じ関係に戻ることが出来るだろう。
確信に近いものを感じながら、サイゾーは家の中に入った。
今日はいい夢が見れそうだった。
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バーツの自宅で、妖しい斧を発見したサイゾー。
しかし、このことが街全体を巻き込んだ一大事件に発展してしまう。
翌日に待ちうける事件とは!?
次回、いよいよ大詰め!
「DTA」と「PTA」の意味も明らかに!?
『DTA VS PTA(後編)』に・・・『ムラサマブレード!』(ネタが古いうえにマニアックだ・・・)
<製作後記>
一応書いておくと、女性陣がバーツの家、男性陣がサジ&マジの家に宿泊となってます。
本編中に書けなかったので参考までに。
実は、「DTA VS PTA」は『2周年リクエスト企画』のキャラ埋めがメインなので、
サイゾー自身のストーリーはほとんど進んでません。(^^;
次回の対決も恐らく同じでしょう。
ちなみに今回のメインキャラはエストファーネです。
って本編見れば解るか。
ではでは。次でお会いしましょう。