へたれSS_第23回 へっぽこVSシリーズ第23弾「サイゾーVSミネルバ」(中編)
開幕

「えー、開場のお越しの皆様・・・」
「レディース、アーンド、ジェントル麺達!」

げしっ

「ぐはぁっ!」
「のっけから懐かしいCMネタやってんじゃないわよ。」
「そ、そんなぁ・・・。久しぶりのボケネタだったのに・・・。」


「それでは、気を取り直していきましょう。」
「ただ今より、第○×回大陸一決定戦を開幕しまーす!」

パチパチパチ

拍手と熱気がノルダの闘技場を支配している。
普段はギャンブラーで賑わうこの場所も、今日は街中から観客が足を運んでいた。

そして、サイゾーを始めとする参加者の面々もまた、専用の観戦場に集まっていた。
大会はトーナメント形式で行われ、組み合わせも既に決定している。
皆、事前に相手の分析をしようと必死なわけである。

その観戦場では参加者が様々な面持ちで出番を待っていた。
落ちつかない様子で周囲を見まわす者。
余裕のある表情でどっしりと構えている者。
戦いの前に自分の武器の手入れをする者。
まさにその様子は十人十色という表現が相応しいだろう。

さて、サイゾーもまた、観戦場で出番を待ちながら周囲を観察していた。
ざっと見渡した中には、それほどの凄腕は見当たらない。
と言っても、参加者の全員がこの場にいる訳ではないので、過信は禁物だろう。

「どうだ、骨のある奴は居たか?」

振り向いてみると、例の女性・・・つまりミネルバ王女がいた。

「貴方か。そうだな・・・この場だけではイマイチというところか。」
「なかなか厳しいな。まぁ、安心しろ。少なくとも私以外に2人、骨のある奴が参加している。」
「知り合いか?」
「そうだ。知り合い、というよりは戦友だがな。」
「・・・なるほど。それは確かに骨がありそうだ。」

「で、用はそれだけかな? ミネルバ王女。」
「なんだ、もう知っていたのか。」
「さすがに申込みの一つ上が貴公では、すぐに解ってしまうさ。」
「なるほど。それもそうか。」

「出来ることなら、決勝で戦いたいものだな。」
「ああ、確かに。」
「勝ちあがって来いよ。」
「ミネルバ殿も。」

そして、ミネルバは離れていった。
妹が元気かどうかを聞き忘れていたが、その必要は無かった。

「お姉様〜! 絶対に優勝してね〜!!」

後ろから、思いきり元気な声が闘技場に響き渡ったからだ。


待ち受ける強者たち

そして、大会は始まった。

大会は1日限りで、しかも参加者が多いため、戦いには時間制限が設けられている。
基本的には相手が戦闘不可とみなされるか、ギブアップさせれば勝ちとなり、
もし時間内に勝負がつかない場合、審判による判定で勝負がきまる。
また、武器に関しては自由となっているが、相手を殺したり再起不能にすることは固く禁止されている。
それでも、真剣勝負である以上、毎回のように死亡者や重傷者が出てしまうのが現状だが・・・。


弓の部門では、1人の男が圧倒的な強さを見せていた。

「それまで! 勝者、ジョルジュ。」

弓という武器は、その特性上相手を傷付けずに打ち負かすということが非常に難しい。
だが、その男はほぼ全ての勝負を一矢で片付けるほどの腕前を持っていた。
当てる位置は常に相手の利き腕。しかも急所はちゃんと外してある。
それを実行することが、いかに困難であるかを、サイゾーは経験上知っていたのだ。

ふと見ると、ジョルジュと言われたその男と、ミネルバ王女が親しげに話していた。

(なるほど。どうやら、あの男はミネルバ殿の戦友の1人という訳か。)
(確かに、それならあの腕前も頷ける。)


弓の部門と同様、魔法の部門でも1人の女性の独壇場だった。

「勝者、リンダ。」

魔法は見た目に派手なので、観客には最も人気のある種目である。
しかし、魔法は使い手の実力がそのまま反映されるため、死亡者が出やすい側面ももつ。
そのため、使い手は相手の力量を見極め、魔力を制御する必要があるのだ。

リンダと呼ばれた女性の戦い方はその点をよく理解していた。
自分から仕掛けることは一度も無く、必ず相手の実力を見極めてから攻勢に出ていた。
事実、リンダと対決した相手には、1人の怪我人も出なかったのである。

さらに注意して見ていると、リンダと呼ばれた女性はジョルジュと頻繁に会話していることもわかった。

(ふむ。彼女もミネルバの戦友らしい。)
(どうやら、弓と魔法についてはあの2人で決まりだな。)


槍の部門では、当然ながらミネルバの独壇場となった。

この大会では馬や飛竜に乗ることが認められており、
ミネルバは相棒の飛竜ともども無敵の強さを披露していた。
何度か「飛竜は卑怯だぞ」というクレームもあったが、そういう時は律儀に降りて相手をしていた。
もちろん、飛竜から降りた程度でその腕前が鈍ることなどないのだが。

(うーむ、予想以上の強さだ。)
(これは、ますます戦ってみたくなった。)


そして、サイゾーの参加している剣の部門では・・・

(ほう・・・これはなかなか。)

「勝者、シーザー。」

1人の傭兵とおぼしき男がサイゾーの目に止まる。
一見すると細い体格つきをしているその男は、その体格に似合わぬ剛剣使いだったのだ。
速さもなかなかのもので、決して侮れない実力の持ち主だ。

(こちらも・・・かなりの腕だな。)

「そこまで! 勝者、ラディ。」

その男は、一見しただけでは普通の商人のような容貌で、とても剣士には見えない。
だが、その体から繰り出される剣技は尋常ならざるものがあった。
おそらく、彼もまたひとつの修羅場を超えた人間なのだろう。

サイゾーの目には、この2人が止まった。
しかし、残念なことにサイゾー自身は2人のうちどちらかとしか戦えない。
トーナメントの組み合わせでは、彼ら2人の方が先に当たってしまうのだ。


そして、シーザーとラディ、この2人が対決する時は来た。


シーザーVSラディ

それまでざわついたいた闘技場は、不意に静寂につつまれた。
観客も解っているのだ。この一戦がいままでとは違うことに。

「へっ、急に静かになったぜ。」
「僕たちにとったら、かえって好都合さ。」

「それでは・・・始め!」

審判の合図が上がり、2人が動く。

(さて・・・どう動くかな?)

サイゾーがここまで見た限りでは、シーザーは力、ラディは速さに分がある。
どちらが有利という感じではないが、シーザーの一撃がラディに入った場合、ラディが不利になるだろう。

先に動いたのはラディだった。
持ち前の速さで一気に間合いを詰め、連続攻撃を仕掛ける。
重さはさほどでもないが、流れるように見事な動きだ。

しかし、しばらく防戦一方だったシーザーが、隙を突いて反撃に転じる。
最初の一撃でラディのバランスを崩し、立て直す暇を与えずに攻勢に出た。
こちらは動きがやや雑だが、剣の破壊力が高くラディは防戦を強いられていた。

そして、2人は再び間合いをとった。

「剣の腕は衰えちゃいないらしいな。」
「お互い様だね。」

「見せてやるよ、俺が編み出した必殺技を。」
「必殺技!?」

シーザーはラディの言葉に答えることなく動き出した。
剣を斜め下に構え、一気に間合いを詰める。

そして、ラディの間合いに入った時・・・

「こっちだ!」
「甘いぜ、ラディ。」
「えっ!?」

シーザーはラディの背後に回りこんでいた。


(ほう・・・これはお見事。)

シーザーがラディの間合いに入った時、シーザーは2重のフェイントを掛けた。
最初に右への甘いフェイント。そして、次に左へ素早いフェイント。
その結果、ラディは最初の甘いフェイントに油断して、次のフェイントを見破れなかったのだ。

これで勝負が決まったかに見えたが、この勝負は意外な結末を迎える。
シーザーがトドメの一撃を繰り出そうとしたそのとき・・・

「ラディー!!」
「えっ?」

会場に響かんばかりに女性の声が聞こえた。
そして、シーザーにとってはこれが命取りになった。

「そこまで! 勝者、ラディ。」

会場に大きな拍手が響く。
これまでの一方的な戦いとは大きく違う内容だったからだろう。

ラディがシーザーに歩み寄って言った。

「シーザー、大丈夫?」
「お前なぁ・・・今のは反則だろう。」
「って、僕に言われても・・・。」
「・・・奥さん、美人だな。」
「へへ・・・羨ましい?」
「羨ましいとも。」

なぜか、いきなり剣を持ってラディを追いまわすシーザー。
もちろん冗談だが。

その様子に会場では笑い声が響く。
そんな2人を、サイゾーは少し羨ましいと感じたのだった。


そして・・・サイゾーVSラディ

会場は、今日一番の熱気に包まれている。
これから剣の部門で決勝戦が行われるのだ。

1人は、シーザーとの一戦以降も安定した試合をこなしてきた剣士・・・ラディ。
もう1人は、ここまで圧倒的な強さを見せている風変わりな剣士・・・サイゾーだった。

どちらもパッと見にはそれほどの腕前には見えないが、その強さは折り紙付きであった。

なお、弓の部門ではジョルジュ、魔法の部門ではリンダ、そして槍の部門ではミネルバが既に優勝していた。
あとはこの部門の決勝、そして優勝者によるトーナメントを残すのみである。

「戦う前に、あなたの名前を教えていだたけますか?」
「そうだな。私は、サイゾーという。」
「サイゾーさんですか。私は・・・」
「いや、言わなくても知っている。ラディ殿。」
「・・・ああ、そうですね。」

ラディはシーザーと戦った時の会話を聞いたと思ったのだろう。
しかし、真相は少し違う。
この決勝戦の少し前、サイゾーはミネルバに忠告されたのだ。
曰く「ラディを甘く見るな」と。

「それでは、レディー・・・GO!」

審判の合図があがり、試合が始まった。

2人は一定の間合いを保ち、攻撃する機会を伺う。
特にラディは慎重だった。
シーザーとの一戦で全力を出していた自分に対し、サイゾーはここまで余力を残して勝っている。
手の内を見せていない分だけ、サイゾーが有利と感じているのだ。

そして、先に仕掛けたのはやはりサイゾーだった。
素早い連撃から隙を見ての強力な一撃、それを何度か繰り返す。
ラディも負けじと、隙を見ては反撃に転じようとする。
サイゾーは1度間合いを取りなおし、つぶやいた。

「・・・なるほど。暗黒戦争を乗り越えた腕は伊達ではない、ということか。」
「!? 何故、それを?」

サイゾーは視線をとある場所に向けた。その場所にいた人物は・・・

「王女と知り合いなんですか!? ・・・本当は何者なんです?」
「ただの旅の者さ。ミネルバ王女と知り合ったのも、偶然に過ぎない。」

会話はそれで終わってしまった。
しかし、ラディはそこから何かを感じ取ったのかもしれない。
力強くこう言った。

「小細工も手加減も無しです。次で決めましょう。」

サイゾーの返事を待たず、ラディは走った。
剣を斜め下に構えたそれは、まるで・・・

「おいおい、あれは俺の必殺技と同じじゃないか。」
観客席でシーザーがぼやく。

(・・・どういうことだ?)

サイゾーはラディの真意を図りかねたが、このまま立ち止まるわけにもいかない。
ラディの動きを全身の感覚で見破ろうとする。

最初に右への甘いフェイント。
次に左へ素早いフェイント。
ここまでは先程のシーザーと同じ。ところが、

「なにっ!?」
再びシーザーが言葉を発した。今度は驚きの声。

ラディはもう一度右へ跳んだのだ。
その前に左へ飛んだ時以上のスピードを持って。
しかし・・・

「悪いな。」

サイゾーはラディの動きを見破っていた。
あるいは、サイゾーにとっては大したスピードでもなかったのかもしれない。
そして、決着はあっさりと着いた。

「勝者、サイゾー。」


小休止

部門別の決勝戦からその後の決勝トーナメントには、小1時間程度の休息がある。

それぞれの部門で優勝した4人+1人は、何故か仲良く会話をしていた。
とてもこの後に真剣勝負をするようには見えない。

「そういやラディの奴、負けたのに妙にスッキリした顔だったよな。」
「多分、何か吹っ切れたんじゃないの?」
「何かって?」
「あたしに聞かれても・・・。」
「ま、奴がまた剣を握ってるだけでも意外だったからな。」
「きっと、あの人なりにいろいろあったんだろうね。」

「しかし、お前さんも強いよなぁ。あのフェイントをあっさり見破るなんて。」
「別に簡単に見破った訳ではない。ミネルバ殿の助言があればこそ、だ。」

そう。
もしミネルバの助言が無ければ、あの時のサイゾーはシーザーと同じ技だと油断した可能性が高い。

「ラディは解放軍でも速さに定評があったからな。何か技を持っているはずだと思ったんだ。」
「で、どんぴしゃりか。」
「お姉様だったら、そのくらい当然よね。」

何故か誇らしげに胸を張るのはマリアだ。
もちろん、ミネルバにべったりである。

「さぁて、どう言う組み合わせになるかな。」
「私とジョルジュ、ってのは勘弁してほしいけどね。」
「おいおい、そりゃ問題発言だろ。」
「だって、いつも城でやりあってるんだもの。いまさら新鮮味がないのよ。」
「ま、そりゃそうだが・・・。」

しかし、サイゾーとしてはすぐにミネルバと戦ってみたいので、その方が好都合だったりする。
とは言え、ジョルジュやリンダと戦ってみたいのもまた事実だったので、特にこだわりは無かった。

と、かすかな呟きがサイゾーの耳に入ってきた。

「それに・・・あなたと本気で戦うのはやっぱり嫌だから、ね。」

呟きの主はリンダだった。

(そうか・・・なんだかんだ言ってもやっぱり仲がいいんだな。)

こんな時、サイゾーは不意にデューテのことを思い出す。
分かれてから既に2年を越える歳月が過ぎ、約束の3年はもうすぐだ。
しかし、デューテのことを思い出すたびにサイゾーは不安に襲われてしまう。
はたしてデューテは自分のことを覚えていてくれるのか、と。

「・・・サイゾーさん。」
「サイゾーさん!」

不意に頭の中に響いた声に驚く。
気が付けば、周りには誰も居なくなっていた。

「どうしたんです? もう時間ですよ。」
「いや、ちょっと考え事をしていたんだ。」
「大丈夫ですか?」
「戦いの最中に考え事をするほど愚かではないさ。」
「・・・そうですね。では、頑張ってください。」
「ああ。」

3年の歳月が2人にどういった変化をもたらすのか・・・。
それは、もうすこし先の話である。


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圧倒的な強さでもって剣の部門で優勝したサイゾー。
あとは決勝トーナメントを残すのみ。

果たしてサイゾーと対決するのはどちらなのか?
そして、ついに「仮面の騎士」の正体が判明する!(ってもうバレてるだろーけどね)

(ようやく)次回ミネルバとの直接対決!

『サイゾーVSミネルバ(後編)』に・・・

「月に変わって・・・いぢめますっ!」(「水夏」ネタ。セイラームゥンですな。)



<製作後記> 久しぶりにボケが入った気がします。(笑) でも、今回は(も?)イマイチ消化しきれてない感じですが。 ラディとシーザーの対決ではもうちょっとイロイロ描写したかったんですが、 思うように書けず、結局シンプルな勝負になってしまいました。 ラディとサイゾーも同じですね。 つーか、次回で無事終わるんだろうか・・・?(自爆) ここはひとつこれで締めましょう。 「マグラの神よ、我を救いたまえ!」 (ってSSと関係ないし・・・)

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