へたれSS_第24回 へっぽこVSシリーズ第24弾「サイゾーVSミネルバ」(後編)
続・開幕

「イエーイ!」
「みんな、萌えてるかーい!?」

ごきっ

「阿部氏っ!」
「字が違うでしょ、字が。」
「・・・いまの、まともに急所直撃なんスけど・・・。」
「大丈夫。死なない程度に外しておいたつもりだから。」
「つもりって・・・。」

「はっ、漫才やってる場合じゃなかったわ。」

「えー、会場の皆様、長らくお待たせしました。」
「ただ今より、決勝トーナメントを開始しまーす!」

「・・・ド、ドクター、ぷりーづ。」


矢を打ち払う盾

「さぁー、まずは1つ目の対決。」

「槍の部門で圧倒的な強さを見せた・・・ミネルバ選手!」

ミネルバの名が出ると、会場から盛大な拍手が起こった。
さすがに決勝ともなると人気が出ているらしい。

「そして、弓の部門で安定した試合運びを見せた・・・ジョルジュ選手!」

ジョルジュの名で、再び大きい拍手が起こる。
こちらもミネルバに負けず劣らずといったところだ。

「さて、試合の前に両者の意気込みを聞いてみましょう。」

「・・・別に。誰が相手であろうと、全力で戦うだけだ。」
これはミネルバ。

「ふっ、一矢で仕留めてみせるさ。」
こちらはジョルジュだ。

「なるほど。どちらも気合十分ですね。」
「では、始めーっ!」

その合図と同時に、ミネルバの飛竜が上空に舞い上がる。

(ミネルバ殿・・・?)

サイゾーは正直なところ、ミネルバが飛竜と共に現れた時点で妙だと感じていた。
相手は一流の弓兵。飛竜に乗って戦うのは明らかに不利だ。
ミネルバほどの実力者なら、飛竜なしの方が有利と考えるのが自然だろう。
しかし、あえてそれをしなかったということは・・・。

「・・・何か奥の手があるってか?」

それはジョルジュの声。
確かに、少し頭の効く者なら相手に策があると取るのが普通だろう。

しかし、飛びあがった飛竜はその場を動かない。
その沈黙を破るにはジョルジュが動くしかなかった。

「ちぇっ、仕方ない。乗せられてあげますか。」

しばしの沈黙が破れ、ジョルジュが仕掛けた。
いくら真剣勝負と言ってもあくまで試合。飛竜を殺すわけにはいかない。
ならば、飛竜を封じるために狙う場所はひとつしかなかった。

「甘いな。」

飛竜の翼を狙って放たれた矢は、あっさりとミネルバの槍に弾かれる。
明らかに相手の狙いを予測しての行動だった。

「まだまだ。」

それでも執拗に翼を狙いつづけるジョルジュ。
矢を打つ間隔は徐々に短くなり、同時に矢を弾く間隔も短くなる。

しかし、急にジョルジュの手が止まる。

「なるほどね。これが、狙いだったわけか。」
「・・・気づいたか。では、こちらから仕掛けるとしよう。」

観客の中には意味が解らず首をかしげる者もいる。
しかし、サイゾーとリンダはもちろん解っていた。
ジョルジュの矢が、残り数本しか残っていないことに。

そして、ミネルバは飛竜とともに急降下攻撃を仕掛ける。
矢の残りは数本。既に勝負は決まったかに見えた。

だが・・・

「まだ、勝負は着いちゃいない。」

ジョルジュは、3本の矢を同時に引き絞るという行動に出た。
恐らく3本同時に放つことで、相手の目をかく乱させるつもりだろう。

そして、3本の矢は同時に放たれた。

キィーン
パシーン

一瞬で2本の矢が叩き落される。しかし、

(残りの1本は何処だ?)

一瞬、外した可能性が頭をよぎったが、ジョルジュがそんなヘマをするとは思えない。
だとすれば・・・

(上か!)

ジョルジュが放った最後の1本は、今まさに落下しようとしていた。
ミネルバの乗る飛竜の翼めがけて。

その矢が飛竜に当たると確信したジョルジュは笑っていた。
だが、サイゾーはそこに不思議な光景を見た。
ミネルバもまた、ジョルジュに向かって笑っていたのだ。

カキーン

乾いた金属音とともに勝負はついた。
ジョルジュの持つ弓をミネルバが弾き飛ばしたのだ。

そして、3本目の矢は弾かれていた。
何故か飛竜に届くことなく。そして、ミネルバに弾かれることもなく。

「勝負あり! 勝者、ミネルバ!」

歓声が沸きあがる。
サイゾーやリンダも2人に拍手を送っていた。

その興奮がまだ冷めない間に、ジョルジュがミネルバに話しかけた。

「ミネルバさん、まさか・・・あれ・・・。」
「ああ。『アイオテの盾』だ。」
「マジっすか? マケドニアの家宝を持ち出すなんて。」
「さっき言ったはずだ。相手が誰であろうと全力で戦う、とな。」
「ちぇっ・・・かなわねぇなぁ。」

「だが、お前も大したものだったぞ。」
「そういう台詞は、負けた時に聞いても嬉しくないですって。」


2人の会話を聞きながら、サイゾーは横に向いて言った。

「さて、次は私たちの番だな。」
「全力で来ないと、怪我するからね。」


光の魔道士

「さぁ、続きましての対決は・・・」

「魔法の部門で敵なし・・・光の魔道士、リンダ選手!」

これまで以上の拍手が沸き起こる。
リンダの場合、その容姿の所為もあって、ファンが多いのだろう。

「そして、剣の部門で、独特の技を持って勝ち進んだ・・・謎の剣客、サイゾー選手!」

「・・・ちょっと待て。」
「はい?」
「その『謎の剣客』というのは何なんだ?」
「いや、上層部からの指令なんですよ。キャッチフレーズは『謎の剣客』って。」
「変な上層部だな。」
「私たちにとっても謎ですからね。」
「・・・まあいいか。続けてくれ。」

「さぁ、こちらも対戦前の意気込みを聞いてみましょう。」

「当然、完封勝利ってやつよね。」
「なかなか自身がありますね、リンダ選手。」

「・・・悪いが、リンダ殿では私には勝てないだろう。」
「えっ!?」
「おおっと。こちらも自身たっぷりだ。」

「それでは、始め!」

まずはお互いの間合いを確認しながら距離を取る。

「ふぅん、言ってくれるじゃないの。」
「リンダ殿はそう思うだろうな。だが、根拠はある。」
「だったら、それを見せてもらうわね。」

そのまま詠唱を始めるリンダ。

「ファイアー!」

まずは小手調べという感じで初歩の魔法を放つ。
しかし、初歩の魔法といっても術者の実力がそのまま反映される。
その威力は十分なものがあった。のだが・・・

「渇!」

気合のこもったサイゾーの叫びと共に炎はあっさりと霧散する。

「・・・なるほど。確かに根拠はありそうよね。」
「だったら、これでどうかしら?」

「サンダー!」
「ブリザー!」
「エル・ファイアー!」

リンダは徐々に魔法のレベルを上げていく。
それらは全て、サイゾーに届くことなく霧散していった。
しかし、『エル・ファイアー』が霧散した時に2人は気づいた。
かすかにひび割れるような音が聞こえたことに。

「・・・ふふーん、そろそろ限界かな?」
「この程度で勝ったと思うのは早いのではないか?」
「じゃあ、次にいってみますか。」

「・・・ボルガノン!」

複数の炎が地を這い、サイゾーを追う。
炎はサイゾーの真下まで来ると、そのまま吹きあがるようにして襲いかかった。

ピシッ ピシッ

炎が襲いかかると同時に、再びひび割れる音が聞こえてきた。

「まだ終わりじゃないわよ。」

・・・大気に眠りし雷気よ
いまこそ真の力を解放せし時
汝の力は破壊の象徴となりて
かの敵に一閃の光を放たん!

「トロン!」

呪文が完成し、一筋の光がサイゾーに襲いかかる。
まだ『ボルガノン』の炎は消えていない。
まさに魔法のダブルパンチというところか。

激しい閃光と爆音が響き、サイゾーの姿も見えなくなる。

「魔道士を甘く見ない方がよかったわね。」

誰もがリンダの勝ちだと思った。
しかし、視界が回復したリンダの目に飛び込んできたのは、予想もしなかった光景だったのだ。

「・・・どうした? これで終わりか?」

そこには、先程と全く変わらないサイゾーがいた。
周囲が無残に破壊されているにも関わらず、サイゾーは全くの無傷でそこに立っていた。

「う・・・うそ?」
「だから言っただろう。リンダ殿は私に勝てない、と。」
「・・・まだよ! まだ、もう一つ残ってるんだから!」

言うが早いか、リンダは詠唱に入る。

・・・万物に宿りし光の気よ
我が声に応え 眠りしその力を解放せよ
いまこそ汝の力は螺旋となり
かの敵を屈する絶対の光とならん!

「げっ、リンダの奴、あれを使うつもりかよ。」
「もう少し距離を取った方がよさそうだな。」

そして、リンダの詠唱は完成した。

「オーラ!」

光が螺旋を描き、リンダの頭上へと舞い上がる。
そして、そのままサイゾーへと襲いかかったのだが・・・。

「甘い。」
「!! 何をするつもり!?」
「自らの力で屈するがいい。」

サイゾーはリンダの懐に入り、そのままリンダを捕まえた。
そして、そこに光の螺旋が襲いかかる。

2人を光が包み、何も見えなくなる。
再び光が晴れた時、そこには・・・。


魔戦士の力

「大丈夫か?」
「・・・どういうこと?」
「もう勝負はついたはずだ。無駄に怪我をする必要はないだろう。」
「そっか・・・悔しいけど、完敗ね。」

光が晴れた時、サイゾーとリンダは無傷で倒れていた。
そして、サイゾーはリンダを庇うように・・・実際庇ったのだが・・・倒れていたのだ。
そして、2人とも無傷でいたという事がサイゾーにとって勝利の証だった。

「では、サイゾー選手の勝利でよろしいですね?」
「うわっ!」

見れば、すぐ横に審判が立っていた。
なかなかどうして、この審判もかなりの実力者らしい。

「ええ。それでOKよ。」
「では、リンダ選手の棄権により、サイゾー選手の勝利となります!」

しかし、審判の宣言に対して、観客は明らかに納得がいかない様子だ。
確かに、パッと見に押していたのはリンダなのだから、
周囲から見れば何故リンダが負けを認めたのか解りにくいかもしれない。

「いいのか? 観客は不満そうだが?」
これは、試合を終えて戻ってきた2人に対するミネルバの言葉だ。

「いいんじゃないの? 強い人にしか解らない世界もあるってことで。」
こちらはジョルジュ。

2人はさすがに解っているようだ。

「じゃあ、タネ明かししてもらえる?」
「ああ、いいだろう。」

というわけで、サイゾーがリンダとの試合について解説することになった。

「・・・別にそれほど難しいことをしたわけじゃない。」
「普通、魔力というものは攻撃のために使われるだろう?」
「そうね。魔道書を媒体にして魔力を放出するのが普通かしら。」
「私がやったことは、簡単に言えばその逆をやったということだ。」
「つまり、魔力を使ってリンダの魔法を防いだ、ってことか?」
「そうだ。もちろん、そう簡単に出来るわけではないが。」

「でも、そんな魔力使い方、この大陸ではだれも知らないわよ・・・。」
「そういえば、サイゾーは風貌もこの大陸とは違うな。」
「ああ、貴公らは知らなかったな。私は、バレンシア大陸の出身なんだ。」
「ほう。バレンシアでは、アカネイアと違う魔力の使い方があるのか。」
「先程も言ったが、この使い方は簡単に出来るものではない。」
「ハレンシアでは、これを会得した者に『魔戦士』の称号を与えている。」
「そして魔戦士は、聖騎士や賢者と並ぶ、最高位の称号になっているのだ。」

「へぇ。じゃあ、あんたも魔戦士の称号を持ってる訳だ。」
「いや、私は称号を持っていない。」
「どうして?」
「・・・いろいろあってな。私は称号の洗礼を受けていないのだ。」
「ふぅん。ま、いいじゃねえか。」
「そうね。別に称号を持ってるから強いって訳じゃないし。」
「そうだな。・・・では、決勝を楽しみにしているぞ。」
「ああ。」

その時、不意にサイゾーは昨夜の出来事を思い出していた。

(そう言えば、昨日の夜・・・)

「ミネルバ殿、待ってくれ。」
「ん、どうした?」
「試合にはまだ時間があるだろう。ちょっと聞きたいことがある。」
「ここでいいか?」

リンダやジョルジュに話を聞かれても不都合はないハズだった。
しかし、何故かサイゾーはミネルバ以外の人間に聞かれたくないと感じていた。

「・・・いや、2人だけで話をさせてくれ。」
「わかった。」

そして、2人だけで通路に向かった。


仮面の騎士

「で、何が聞きたいんだ?」
「単刀直入に聞こう。『仮面の騎士』という言葉に心当たりはあるか?」
「!!」

『仮面の騎士』の名が出た時、ミネルバの顔には明らかな動揺が走った。
いや、それは動揺というよりも警戒と言った方がいいかもしれない。

「・・・あの男に何の用がある?」
「そうだな、どう言えば良いものか・・・。」

サイゾーは、サラの予言について話してみた。
結局のところ、サイゾーにとっての理由はそれ以上でもそれ以下でもない。

「真実が明らかになる、か。」
「それがどういう意味なのかは、私も知らない。自分にとって良いか悪いかも解らない。」
「それでも、サイゾーは真実を追うというのだな?」
「ああ。」

「しかし・・・今は教える訳にはいかない。」
「!? 何故だ?」
「実は、その騎士は英雄戦争でも最大のダブーでな、他言無用という盟約があるのだ。」
「しかし!」
「まあ待て。「今は」と言っただろう。」
「どういうことだ?」
「お前が真実を追い求めるのなら、力ずくで聞き出してみるんだな。」
「・・・つまり、次の試合に勝てば教えると?」
「そうだ。もちろん、負けるつもりはない。」
「いいだろう。その勝負、乗らせてもらおう。」

「決まりだな。では、次は試合で会おう。」

そう言い放つと、ミネルバは通路の奥へと歩いていった。


そして、話はようやく冒頭へと戻るのだ。


嵐の決勝戦

キィーン
カァーン

激しい金属音が鳴りつづける。
既に、決勝が始まってからかなりの時間が経っていた。

押しているのはミネルバの方だった。
ミネルバは飛竜を巧みに操り、槍の有利な間合いを取りつづける。
サイゾーも隙を見て懐に潜ろうとするが、ミネルバがやすやすと潜らせてくれるはずもない。
結果としてサイゾーは防戦を強いられていた。

しかし、ミネルバとて楽なわけではない。
一瞬でも気を抜けば、その隙をサイゾーが見逃すはずがないと判っているからだ。

苦しいのはどちらも同じ。
試合は徐々に煮詰まってきていた・・・。


サイゾーは防戦にまわりながら考えていた。

(ダメだ。やはり飛竜から降ろさない限りこちらが不利だ。)
(だが、どうやって・・・。)

その時、先程見たひとつの試合が脳裏をよぎった。

(!! まてよ・・・)
(よし、試してみる価値はありそうだ。)

サイゾーは次の作戦を決め、その準備に入った。

(あとは、仕掛けるタイミングだけだな。)

そして、思いがけない光景がサイゾーにチャンスをもたらす。
それは、誰もが予測し得ない出来事だったのだ。


「ガァー! ガァー!」

「!? なんだ?」
「あれは!?」

闘技場の上空を、数匹の飛竜が北へと飛んでいく。
そして、それらの飛竜には誰も乗っていなかった。

「はぐれ飛竜・・・。」

ミネルバは上空の飛竜に注意を惹かれ、決定的な隙が生まれる。
それは不幸にも、ミネルバの方が飛竜に詳しかった故の隙であったと言える。

ミネルバがサイゾーの動きに気づいたのは直後だった。

「!! しまった!」

サイゾーは素早くミネルバへと走る。

「くっ、させるか!」

即座に体制を立て直し、槍で打ち払う。
見事なまでの俊敏さで対応され、サイゾーは懐に潜れなかった。
しかし・・・

ヒュルル〜

頭上から何かが落ちてくる音が聞こえてくる。
しかも、その音はひとつではなかった。

「なにっ!? いつの間に?」
「もらった!」

2つの刃が交錯し、火花が散る。
そして・・・

「ガァー!」

ここまで一声も上げなかった飛竜が、甲高い鳴き声をあげる。
その右の翼には、1本のナイフが深々と刺さっていた。

「お見事。・・・あの状態から、私の剣と2本のナイフを弾くとは。」
「だが、ナイフは3本だったのだな。・・・私の読みが甘かったか。」

ミネルバは、サイゾーの剣を払いつつ、槍の長さを利用して後ろのナイフを2回弾いた。
だが、より技が深かったのはサイゾーだった。
サイゾーは、最初の2本を投げた後、さらに時間差でもう1本のナイフを投げていたのだ。
飛竜の右翼に刺さったのが3本目のナイフだったことは言うまでもない。

ミネルバはゆっくりと飛竜から降りた。
サイゾーは黙って剣を構える。ここからが本番だ。

しかし、そう思ったのは束の間。
ミネルバは飛竜から降りると、自らの槍を地面に突き立てた。

「!? ミネルバ殿?」
「試合はここまでだ。お前の勝ちだよ、サイゾー。」
「・・・何故?」
「私は飛竜を用いて互角だった。飛竜かなければ、対等には渡り合えまい。」

嘘だな、とサイゾーは感じた。
ミネルバの槍術はすでに芸術の域だ。
飛竜から降りた程度で、自分と渡り合えないとはとても思えない。
ミネルバには何か別の理由があるようだった。

「そうか・・・解った。」

「じゃあ、ミネルバ選手の棄権でよろしいですね?」
「ああ、そういうことだ。」

「それでは、ミネルバ選手の棄権により、勝者はサイゾー選手!」
「今年の大陸一は、サイゾー選手に決定いたしましたー!」

ワァー

今日一番の歓声が会場を包む。
だが、その中心にいるはずのサイゾーは浮かない顔だ。
正直、自分が勝ったとは思えないというのが本音である。

周囲の熱狂をよそに、サイゾーは静かに歩き出した。


アンリの道

控え室では、決勝の開始前と同じ顔ぶれが話していた。

「なぁ、あの技って俺の技のパクリだよな?」
「まぁ、そうだな。自分なりのアレンジはしてあるが。」

「でも、最初の2本はともかく、3本目はいつ投げたのか全然解らなかったわ。」
「ああ、俺も同じだ。3本目はいつの間に投げたんだ?」
「そいつは秘密だ。タネ明かしをしたら、技の意味がなくなる。」
「ちぇっ、ケチだなぁ。」

「さて、ミネルバ殿、約束通り話を聞かせてくれるか?」
「そうだな。ついて来い。」
「あれ、俺たちには秘密かい?」
「ああ、すまない。2人だけで話をさせてくれ。」
「りょーかい。」


そして、試合前と同じ場所で2人は話し始めた。

「さて、どこから話したものか。」
「とりあえず、話せなかった理由を聞かせて欲しい。」
「そうだな・・・。実は『仮面の騎士』の通り名をもつ人物は、表向き死んだことになっているんだ。」
「!? どういうことなんだ?」

ミネルバは詳しいことを話し始めた。

それによると、『仮面の騎士』の名はシリウス。
シリウスは先の英雄戦争で多くの武勲を上げた騎士として知られている。
しかし、シリウスにはもう一つの顔があった。
シリウスの正体は、暗黒戦争において黒騎士として知られたカミュだというのだ。

「いまいち話が見えないな・・・。」
「まああせるな。話を続けるぞ。」

英雄戦争が終焉した時、シリウス・・・つまりカミュの想い人であるニーナ姫が言ったのだ。
「私たち2人は、全てを捨てて普通の人間として暮らしていきたい」と。
しかし、ニーナ姫はアカネイアの王族で、この大陸全土の象徴とも言える人物。
周囲がそう簡単に納得するとはとても思えなかった。
だから、2人は表向き死んだことにして、新しい人生を作ってもらおうということになったのだ。

「このことは、英雄戦争に参加した人物の中でも、ごく一部しか知らない。」
「しかも知っている者の間で、他言無用という盟約まで存在する。」
「それで最初に聞いた時、露骨に警戒したわけか。」
「まあ、そういうことだな。予言とは意表をつかれたが。」

「しかし、ミネルバ殿は2人の居場所を知っているのか?」
「正確な位置は解らないが、大体の目星はついているな。2人は、『氷竜神殿』にいると思う。」
「氷竜神殿・・・。」

氷竜神殿。
それは、英雄戦争において最も過酷な場所として語られている。
数多くのはぐれ飛竜が飛び交うマーモトードの砂漠、
強暴な火竜が大量に生息するフレイムバレル、
そして数多の氷竜が群れをなす氷の大地、
この3つを越えなければ辿り着けない聖地である。
そして、この道程はかつての英雄の名を取ってこう呼ばれている。
すなわち、『アンリの道』と。

「ただ、今は竜がほとんど生息していないから、そこまで苦しいことにはならないだろう。」
「しかし、それでも十分過ぎるほど危険そうだな。」
「それでも、サイゾーは行くのだろう?」
「もちろん。」

「フッ、そう言うと思ったぞ。・・・これを持っていくといい。」

そう言って、ミネルバはサイゾーに一振りの剣を渡した。

「これは?」
「『ドラゴンキラー』と呼ばれる剣だ。もし竜と遭遇したら役に立つだろう。」
「かたじけない。ありがたく受け取らせてもらおう。」


北へ・・・

大会が終わりを告げた翌日・・・。

サイゾーは4人の人間に見送られながら街を発とうとしていた。

「飛竜の傷は大丈夫なのか?」
「まぁ、マケドニアまでは問題無く飛べるだろう。帰ったら養生させるさ。」
「そうか。大事でなくて安心した。」

「サイゾーは、この旅が終わったらどうするつもりだ?」
「別にあてはないが・・・そうだな、また大会に出るのもおもしろそうだ。」
「なるほど。それは楽しみだな。」

ミネルバとサイゾーの2人は顔を見合わせて笑った。
そして、一転して真剣な表情を作る。

「・・・気をつけろよ。あのはぐれ飛竜が向かったのはサイゾーと同じ方角だ。」
「ああ。用心するに越したことはないだろうな。」

先程の試合で見たはぐれ飛竜が、2人に微妙な不安感を与えているようだ。
そんな不安を払ったのはこの男の一言だった。

「おっと、忘れるところだった。兄さん、俺からの餞別だ。」

そう言って、ジェイクは何かをサイゾーに投げつけた。

「こいつは?」
「持ち主に幸運を運ぶと言われる『女神の像』だ。お守り代わりに持っておきな。」
「うむ、かたじけない。」

「3つの難所の中でもマーモトードの砂漠は特に厳しいから、気をつけてね。」
「あと、砂漠にはいろいろ落ちてるから足元に注意しておくといいぜ。」

そう言って助言をくれるのはリンダとジョルジュだ。

しばらく5人はたわいのない話で時を過ごす。
そして、旅立ちの時は来た。

「では、縁があればまた会おう。」
「今度はちゃんと決着をつけたいものだな。」
「俺は当分この街にいるから、近くに寄ったらまた訪ねてくれよ。」
「サイゾーさんの探し物、見つかるといいね。」
「あまり無茶すんなよ。」


それぞれの言葉を胸に、サイゾーは街を後にする。
次に目指すのは『氷竜神殿』。

伝説の英雄が歩んだ道のりを、彼もまただた1人きりで進もうとしていた・・・。


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ついに『仮面の騎士』の手掛かりを得て、新たな場所を目指すサイゾー。
果たして3つの難所で彼を待ち受けるのは・・・。

次回、アカネイア編も佳境に突入!

『サイゾーVSシリウス(前編)』に・・・「リザーブはどこにいった?」(byFE封印の剣)


<製作後記> うみゅ。 前回さぼった所為で長くなっちゃいました。(爆) まぁ、今回はそれなりにまとまっているんじゃないかと。 つーか、次回はマーモトードの砂漠(ゲームで言えば第2部11章)なんですが、 ネタが全く決まっていません。(^^; チキを出すべきか・・・。チェイニーはどうするのか・・・。 次は時間が掛かるかも。 イキナリ封印の剣のキャラを乱入させるとか・・・嘘です。 シリウスに会ってからの展開はほぼ決まっているんですがねぇ。 では、次回でまた会いませう。

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