へたれSS_第25回
へっぽこVSシリーズ第25弾「サイゾーVSシリウス」(前編)
砂漠
ガァー ガァー
唸るような声が砂漠に響き渡る。
それは、強暴な性格を持ったはぐれ飛竜。
このマーモトードの砂漠が『死の砂漠』と呼ばれる所以(ゆえん)である。
そして、そのはぐれ飛竜と向かい合うようにして、一人の男が立っていた。
男が持つのは一振りの剣のみ。
普通であれば絶望的な状況のはずだが、不思議とその男には余裕すら感じられる。
ガァー!
はぐれ飛竜の唸り声が大きくなり、男に襲いかかる。
だが、男は巨大な飛竜の攻撃をあっさりと交わし、涼しい顔をしている。
獲物であるはずの人間にあっさり避けられたせいか、再び唸り声を上げる。
次の瞬間には、その口から炎を噴き出した。
しかし、炎を吐いた時、男はすでに飛竜の視界から消えていた。
それが、このはぐれ飛竜にとって最後の記憶となった。
男がはぐれ飛竜の頭上に乗り、手に持った剣を眉間(みけん)に突き立てたのだ。
大きな振動音と大量の砂煙を巻き上げ、はぐれ飛竜は崩れ落ちる。
「やれやれ・・・これで何匹目なのやら。」
「これで5匹目ですね、サイゾーさん。」
「・・・冷静に返さないでもらえるか、ミロア殿。」
「ああ、すいません。つい・・・。」
サイゾーがマーモトードの砂漠に入ってから既に5日経つ。
最初の3日は、特に問題無く歩くことができた。
しかし、4日目に入った頃から、不思議なほどはぐれ飛竜に遭遇するようになったのだ。
「そのはぐれ飛竜について、どう思う?」
「さぁ・・・。しかし、そろそろ『テーベの塔』に近づいていますから、それと関係があるかもしれませんね。」
「確かにな・・・。」
サイゾーは、ここ2日のはぐれ飛竜遭遇を明らかに不自然だと感じていた。
ミネルバの話によれば、はぐれ飛竜の大半は英雄戦争において死滅したということだ。
しかもサイゾーは1人旅であり、大きな音や砂煙が発生することは皆無と言って良い。
それを考えれば、この遭遇率は異常である。
まるで、サイゾーを『テーベの塔』に近づかせまいとしているようにも思えた。
(大会の時に見た、あのはぐれ飛竜と関係があるという可能性、低くないかもしれん・・・)
そして次の日・・・
飛竜
「・・・どうやら、はぐれ飛竜と『テーベの塔』が関係あるのは間違い無いな。」
「でしょうね。」
今、サイゾーの目前にはどこまでもそびえ立つ塔がある。
これが『テーベの塔』であることはほぼ間違い無いだろう。
だが、塔が見えた時、サイゾーは思わぬ歓迎を受けた。
塔の中から3匹にも及ぶ飛竜が立ちはだかったのだ。
この時、サイゾーには2つの選択肢があった。
すなわち、塔を迂回して飛竜との戦いを回避するか。
それとも、飛竜を倒し強行突破を図るか。
サイゾーが選んだのは後者だった。
(3匹・・・さすがにきついな)
しばらく経っても動きの無いサイゾーに、痺れを切らした1匹の飛竜が襲いかかる。
それが戦いの合図となった。
すこし攻撃を交わしているうちに、この3匹がこれまでの飛竜とは違うことに気が付いた。
これまで倒してきた飛竜には理性が感じられず、攻撃も力任せだった。
ところが、この3匹はお互いの動きを利用したコンビネーションで攻撃してくるのだ。
そう、まるで誰かに訓練されているような・・・。
しかし、サイゾーも負けてはいない。
3匹の猛攻をかいくぐり、ついに1匹の頭上に載ることに成功した。
そして、その飛竜に剣を突きたてようとした時・・・
「まって!」
「!?」
「お願い! その子を殺さないで・・・。」
新たな乱入者があった。
それは、一見すると年端のいかない少女にしか見えない。
さすがのサイゾーも困惑していた。
そして、サイゾーの困惑に追い討ちをかける出来事が起こる。
さっきまで戦っていた3匹の飛竜が、突然ふつうの人間になってしまったのだ。
しかも、3匹とも子供の姿に。
(???)
しかし、そんなサイゾーの困惑をよそに子供たちは会話を始めた。
「チキ! 勝手に塔から出てきちゃダメだよ。」
「だって、いきなり「侵入者だ!」って3人とも走っていっちゃうんだもん。」
「そうだよ。侵入者を倒すためにぼくらは出たのさ。」
「でも、侵入者とは限らないかも・・・。」
「チキ、まだそんなことを言うのかい?」
「そうよ。私たちの親がどんな死に方をしたのか知ってるくせに。」
会話の意味がわからず、ますます困惑していくサイゾー。
しかし、そこに予想もしない助け舟が現れた。
「・・・チキ? 外にだれかいるのかい?」
「あっ、マルスおにいちゃん!」
「!! マルス殿!?」
「あれ? サイゾーさんじゃないですか。どうしてこんな場所に?」
「???」
今度は3人の子供が困惑する番だった。
-事情説明中・・・-
「なるほど、大体の事情はわかった。」
「・・・すいません。早とちりしてしまって。」
「ふん、俺はまだ信用してないからな!」
「私もよ。そう簡単に信用できるもんですか!」
「あ、待てよ! デュラン! アーリアル!」
デュランとアーリアルと呼ばれた2人は、残りの1人が止めるのも聞かずに走り去った。
「どうか、気を悪くしないでくださいね。」
「いや・・・彼らの気持ちも良くわかる。貴公も、別に無理をしなくていいのだぞ?」
「私は人を見る目があるつもりです。あなたは悪い人ではない。きっと、デュランたちも解ってくれるでしょう。」
さて、事情を簡潔にまとめるとこうなる。
神竜族の王であるチキという少女が里帰りでこの塔を訪れていた。
ちなみにマルスはチキの付きそいらしい。
そこにサイゾーという訪問者が現れたため、事態がややこしくなった。
3人の飛竜が問答無用でサイゾーを襲ったのには理由がある。
以前は、この塔に迷い込んだ人間を襲ったりはせず、塔に招き入れていた。
この塔に辿り着く人間はほとんどの場合半死半生の状態だったからだ。
塔の住人である飛竜たちは、そんな人間たちに水や食料などを提供し、必要があれば道案内もした。
ところが、ある時に迷い込んだ人間が悲劇を起こす。
3人の親・・・生みの親ではなく育ての親だが・・・にあたる飛竜が、その人間の道案内に出たきり帰らなかったのだ。
そして数日後、砂漠でその飛竜が発見された。
死体となり、数本の牙が抜かれた状態で・・・。
サイゾーを侵略者として見た飛竜たちの考えは無理からぬものと言える。
おそらく、サイゾーが元気な状態でこの塔に現れたことも不信を買う原因になったのだろう。
その後は、サイゾーが見た通りだ。
(まあ、タイミングが悪すぎたということか。)
「それで、どうしますか?」
「氷竜神殿までの道なら、僕が案内できますが。」
「いや・・・少し考えさせてもらえるか。」
「? ええ、構いませんが・・・。」
残った飛竜の子供・・・アズマは、何故サイゾーが申し出を断ったのか不思議そうだった。
「とりあえず、今すぐ出発というわけではないでしょう? 今日はこの塔で休んでいって下さい。」
「そうだな。それについては異議も無い。」
「では、案内します。」
そして、サイゾーは塔の一室をあてがわれた。
どうやら人間用の部屋らしく、ベッドや机も備えられている。
最近まともに休んでいないサイゾーにはありがたい待遇だった。
「食料や水は大丈夫ですか?」
「ああ、そっちは大丈夫だ。気にしなくていい。」
「じゃあ、ゆっくり休んでくださいね。」
バタン、と音をたててアズマは去っていった。
部屋にはサイゾーだけが残る。
「どうしたら良いと思う? ミロア殿。」
「さすがに、今の状態で彼だけを連れていくのは危険ですね。」
「だろうな。出来ればこの問題を解決してから次に進みたいが・・・。」
「しかし、このまま留まるのはかえって不味いですよね。」
「・・・やはり、1人で氷竜神殿に行くのが正解だろうか。」
この後もしばらく2人で話し合ったが、結論は出ずじまい。
もやもやとした気持ちのまま、次の日を迎えた。
崩壊
翌日の朝、サイゾーは広間で食事を取っていた。
アズマの提案で、広間に集まって食事をしようということになったからだ。
横にはアズマ,マルス,そしてチキが一緒に食事を取っている。
ちなみに、食事はアズマが提供した。
「そうですか。すぐに出発するんですね。」
「ああ。」
「案内をどうするかは、決まりましたか?」
「うむ。アズマ殿の好意はありがたいが、やはり1人で旅を続けようと思う。」
「ですが・・・。」
サイゾーは黙って首を振る。
「大丈夫。ここまで1人で来れたのだ。必ず辿り着くさ。」
「・・・解りました。お気をつけて。」
ここで話は終わるはずだった。が、ここまで黙々と食事をしていたチキが突然切り出した。
「ねぇ、マルスお兄ちゃん。チキたちがついて行くのはどうかなぁ?」
「えっ!?」
「チキも久しぶりにおじいちゃんに会いたいし、一石二鳥だよ。」
「でも、氷竜神殿に行く予定はなかったから、約束の期限に間に合わなくなっちゃうよ。」
「だいじょーぶ! ガトー様に転移の魔法で送ってもらえばいいんだよ。」
「まったく・・・こういう時は賢いんだから。」
「じゃあ、いいよね!?」
「わかったよ。でも、本当に会うだけになるからね。」
「ワーイ。やっぱりマルスのお兄ちゃん、ダーイスキ!」
「・・・ということでいいですか? サイゾーさん。」
「うーむ・・・。」
サイゾーは返事に困った。
OKと言うのは簡単だが、それではアズマの道案内を断った手前、微妙なしこりが残りそうだ。
だが、目的地が同じである以上、断れば断ったで気まずくなる。
広間に新たな訪問者が現れたのは、そんなことを考えていた時だった。
バタン!
勢いよく扉が開けられ、デュランとアーリアルが走ってくる。
その足は真っ直ぐサイゾーを目指していた。
「お前、やっぱり飛竜を殺しに来たんだな!」
「もうとぼけても無駄よ! ちゃんと証拠を見てきたんだから。」
開口一番、物騒なことを言う。
だが、対するサイゾーの返答はこうだった。
「・・・なるほど。私が倒してきた飛竜の死骸を見たという訳か。」
「!! やっぱり!」
「自分で認めるとは好都合だ。ここで決着を着けてやるぜ!」
「ちょ、ちょっと。2人とも落ちついてよ。」
事情が見えないアズマだが、なんとか2人を止めようとする。
が、2人は聞く耳を持たない。
(まあ、それはそうだろうな。)
サイゾーには2人の「証拠」が、飛竜の死骸だということは解っていた。
最初から自分を不信に思っていたのだ。もはや言葉で納得させるのは無理だろう。
「いいだろう。決着を着けようではないか。」
「サイゾーさん!?」
アズマとミロア、2人の声が重なる。
サイゾーはそれを無視して続けた。
「ここでは飛竜の姿に戻れまい。表に出るとしよう。」
「えらく落ちついてるね・・・僕たちをなめてるのか?」
「昨日と同じだと思ったら大間違いよ。」
サイゾーは2人の言葉に耳を貸さず、そのまま塔の外へと向かった。
覚悟
それは、何とも妙な光景と言えた。
剣を構えている男がいる。
それに向かい合って、手に赤く光る石を持っている2人の子供がいる。
2人の子供を必至に止めようとする子供がいる。
だたオロオロと泣いている少女がいる。
そして、その少女をなだめている青年がいる。
「サイゾーさん、本気ですか?」
「ミロア殿は黙っていてくれ。・・・大丈夫、殺したりはしないさ。」
「・・・何か考えがあるみたいですね。解りました。」
それきり、声が聞こえなくなった。
これでしばらくは話しかけないだろう。
「覚悟はいい?」
「遺言があるなら、聞いてあげるよ。」
「そんなものは必要無いさ。・・・死ぬのはお前らだからな。」
「えっ!?」
アズマは少なからず驚いた。
サイゾーの口から「死」という言葉が出るとは思ってもいなかったからだ。
デュランとアーリアルも別の意味で驚いていた。
この状況で、勝つのは自分だと言い切れる自信はなんなのだろう。
そして、3人とも共通して感じたことがある。
「・・・雰囲気が、変わった?」
「ふ、ふん。ただのこけおどしだよ。」
デュランとアーリアルは不気味だった。
凄まじい殺気を感じるのに、見た目は冷静そのもの。
これが先程の男と同一人物なのだろうか?
「覚悟ができたら、いつでも来い。」
サイゾーは剣を構え、戦闘体制をとる。
デュランとアーリアルも竜石をかかげ、飛竜へと姿を変える。
ここまで来れば、もう後には引けなかった。
ガァー!
先に仕掛けたのはデュラン。
いきなり唸り声をあげ、火のブレスをサイゾーに吹いた。
サイゾーは予想通りと言わんばかりにあっさりと避ける。
だが、避けた先にはアーリアルが待ち伏せていた。
腕を振り上げ、強烈な一撃を見舞おうとする。
しかし、これは失敗に終わった。
「うそっ!? なんて速い・・・。」
「・・・ふぅん。さすがに大口叩くだけあるね。」
デュランはアーリアルにだけ聞こえる声で言った。
「アーリアル。例の技で決めるよ。」
「・・・了解。」
「普通に攻撃しても無駄みたいだね。でも、これで終わりさ!」
「竜の力、思い知るがいいわ!」
2人は聞き覚えのある言葉を紡ぐ。
なんと、それは魔法の詠唱だった。
デュランとアーリアルの周囲に、無数の炎や雷が集まる。
人間であればこれだけの魔法を同時に詠唱することは不可能だが、竜の場合は魔力が違うのだろう。
「死になさい!」
生み出された魔法が次々とサイゾーを襲う。
だが、サイゾーはその場を動かない。
落ちついた表情のまま、デュランとアーリアルを見ていた。
「覚悟は決まったみたいだね!」
激しい爆発音が鳴り、まぶしい閃光が起こる。
そして、それらが終わった後には見るのも無残な穴が作られていた。
サイゾーの姿はどこにも無い。
「サイゾーさんっ!?」
「呼んでも無駄だよ。跡形も無く消え去ったんだから。」
「・・・それはどうかな。」
「えっ!?」
突然、死角からサイゾーが現れた。
予想もしない事態にデュランとアーリアルは焦る。
「言ったはずだ。死ぬのはお前らだと。」
電光石火のスピードで2人に詰め寄るサイゾー。
2人は焦りつつも攻撃するが、サイゾーの速さに全くついていけない。
そして、サイゾーはあっさりとデュランの頭上を取っていた。
「先に仕掛けたのはそちら。殺されても文句は言えまい。」
サイゾーがデュランの眉間に剣を落としていく・・・。
そんな光景を見ながら、デュランは理解した。
自分が本当の意味で『死』に直面したのはこれが初めてだと。
そして、覚悟が足りなかったのは自分の方だったと。
何故なら、この時の自分は『死』の恐怖におびえていたのだから・・・。
極度の緊張を強いられたデュランは、そのまま気を失う。
「やめてぇーっ!」
アーリアルの絶叫を最後に聞いたような気がした。
生命
デュランが気がついた時には、すでに人の姿をしていた。
恐らく気を失った時、自己防衛の本能が竜の力を封印したのだろう。
しかし、そんなことはデュランにとってどうでも良かった。
「・・・アーリアル?」
ふと、横に誰かが居ることに気がつく。
おそらく自分の看病をしてくれたのだろう。
静かに寝息をたてているアーリアルの姿があった。
デュランは、アーリアルを自分が寝ていた場所に寝かせてやった。
「サンキュー、アーリアル。」
扉の前で振り向きざまにそう言って、部屋を後にした。
目的の人物は、塔の一角で星を見上げている最中だった。
横には親友・・・いや、兄弟と言うべき人物の姿も確認できた。
「デュラン!? 体はもういいのかい?」
「ああ、大丈夫だと思う。・・・アズマ、悪いけど2人だけで話をさせてくれるか?」
「わかった。僕は部屋に戻るよ。」
アズマは全て解っているという顔で立ち去った。
いつもと全く変わらないアズマの態度が今はとても頼もしく感じられる。
「まずは、謝らないとな。・・・すまなかった。」
サイゾーに向かって頭を下げるデュラン。
サイゾーは反応を示さない。
「そして、あなたに聞きたいことがある。」
「・・・。」
サイゾーはデュランの話を聞いているはずだが、何も言わない。
デュランは続けた。
「何故、飛竜を殺したんだ?」
サイゾーはその言葉を聞き、軽く笑った。デュランの言葉に反応したのもこれが最初だ。
「・・・何がおかしい?」
「いや、聞かれた内容が意外だったからな。普通は、自分を殺さなかった理由を聞くものだ。」
「・・・確かにそれもある。でも、一番聞きたいのはそっちだ。」
「私が飛竜を殺したことが、それほど意外か?」
真っ直ぐにデュランを見据えるサイゾー。
すこし気圧されながらも、デュランは自分の思いをぶつけた。
「あなたは、竜を殺すためにここに来たわけじゃない。それはもう解ってる。」
「でも、だからこそあの飛竜を殺した理由が聞きたいんだ。」
「・・・デュラン殿、貴公は死にたいと思うことがあるか?」
「? ・・・質問の答えになっていないぞ。」
「では聞き方を変えよう。」
「例えば、貴公が理由も解らず他の竜に襲われた時、黙って殺されるか?」
「何を言ってるんだい。そんなことする訳が・・・あっ!!」
デュランは、頭から冷水を浴びたような気持ちになった。
育ての親から聞いたことがある。
理性を失った飛竜・・・はぐれ飛竜は、本能のままに人を襲うことも多いと。
つまりサイゾーは、飛竜を殺すために戦ったのではないのだ。
それは、自らの生命を守るために必要な行動だったのだ。
「解ったようだな。」
「すまない・・・。俺は・・・俺は本当に馬鹿だ。」
デュランは何度も何度もサイゾーに謝った。
そしてサイゾーは、そんなデュランをただ黙って見ていたのだった。
土産
翌日、サイゾーとチキ,マルスの3人は塔を後にした。
いろいろとあったが、結局は3人で神殿に向かうことに決まったのだ。
「そういえば、マルス殿はずっと傍観者に徹していたな。」
「あれ、意外でしたか?」
「ああ。貴公の性格なら、真っ先に止めに入ってもよさそうなものだが。」
「でも、あの時のデュランは何を言っても聞かなかった。・・・そうでしょう?」
「確かにそうだが。・・・マルス殿?」
マルスは不意に南の空を仰いだ。
そう、まるで誰かに思いを馳せるかのように。
サイゾーは、何故マルスが傍観者に徹していたのか解った気がする。
きっと、マルスは今回と同じような境遇に出会ったことがあるのだ。
どうするのが最善なのか、マルスは知っていたのだろう。
(マルス殿にも己の考え方があるのだ)
そして、サイゾーは懐にある石を取り出し、しばらく眺めた。
それはデュランが旅立ちの時に手渡したものだ。
-回想-
「こいつを受け取ってくれよ。」
「これは?」
「俺たちが作ったオリジナルアイテムで『転移石』ってんだ。」
「2個で1対になってて、一方からもう一方へ転移できる物なのよ。」
「あなたに渡したのは転移される側の石です。もし、僕たち竜の助けが必要な時は呼んで下さい。」
「・・・本当に、いいのか?」
この石は、どう考えてもデュランたちにとって大切なもののはずだった。
知り合って日の浅いサイゾーでもそれくらいは解る。
「いいって。また作ることもできるし、それに・・・あんたが教えてくれたからな。」
「目に見えるものだけが大切な訳じゃない、って。そうだろ?」
サイゾーはとても嬉しくなった。
デュランは、自分の言った言葉からさらに1歩進んで理解しているのだから。
竜は人間よりもはるかに優れた知性を持つと言われている。それは、紛れもない真実なのだ。
サイゾーは笑いながら3人に答えた。
「わかった。ありがたく受け取らせてもらう。」
「そうそう。それでいいのさ。」
「縁があったら、また会いましょ。」
「お元気で。」
-回想終わり-
(そういえば、呼び方を聞いていない。・・・まあ、いいか。使うつもりはないからな。)
本来、人間にとって竜の力は大きすぎる。
人間を超える力と対峙しない限り、この石を使うことはないはずだ。
そして、そんな状況が今後あるとはとても思えなかった。
「・・・お兄さん、どうしたの?」
チキが顔を覗き込んで聞いた。
「チキ殿か。なに、たいしたことじゃないさ。行くとしよう。」
「うん! 短い間だけど、よろしくねっ!」
元気いっぱいの声が、砂漠に響き渡った。
----------
テーベの塔で起こったトラブルを解決し、無事に砂漠を越えたサイゾー。
塔で出会ったチキ,マルスと共に、再び氷竜神殿を目指す。
フレイムバレルと氷の大地を越えた先にある神殿で彼を待つものは・・・。
そして、予言で語られた『真実』の意味とは!?
いよいよアカネイア編、クライマックス!(だったらいいな)<--をい(^^;
次回、『サイゾーVSシリウス(中編)』に・・・
マグラ神に続編はあるのか!?(もうこのネタ辞めろよ・・・)
<製作後記>
今回は書きなおしがイヨーに多かった・・・。
いつもは勢いで書いて、書き直しなんてまずしないのに。(それはそれで問題か?)
多分、内容としてはイマイチではないかと。
なお、今回は「FE封印の剣」のネタを拝借しました。
と言ってもキャラの名前に使っただけ。
アズマ :天雷の斧『アズマール』より
デュラン :烈火の剣『デュランダル』より
アーリアル:至高の光『アーリアル』より(っていうかまんま)
全部「FE封印の剣」に出てくる武器の名前です。
あと、アーリアルは女性なので。(でも、竜に性別があるのかは微妙だなぁ・・・)
ちなみに、最初にサイゾーに殺されそうになった飛竜はアズマです。
さて、次回はフレイムバレル&氷の大地をすっ飛ばしてイキナリ神殿から。(ぉ
ということでチキ&マルスは出番少ないですね。(爆)
その分シリウス&ニーナにがんばってもらわないと。
そろそろサイゾーSSもストーリーの核心が入ってきそう。